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★31話―そのころアルターさんは

アルター視点の話になります。今後、主人公以外の視点となる話は、サブタイトルの頭に★マークをつけておきます。


 

 ゴーダさんがいない。

 

 町に入る際にトラブルが起こり、別行動をとった私たちだったが、問題はそれだけにとどまらなかった。

 

 検問にて、通行税と称して手持ちの財産を全て没収される。規則上、いくら支払えばいいのか問いただしたが、兵士は具体的な金額や税率について言及しなかった。しかし、それがこの町のルールであるらしい。ルールならば従わざるを得ない。

 

 それだけならまだ良かった。問題はその後。先に町に入っているはずのゴーダさんが見つからない。

 

 まず疑ったのは迷子になっている可能性だ。森で遭難していた時のゴーダさんの行動から見て、彼女は空間把握能力に乏しい。方角の確認もろくにできず、記憶力もなく、すぐに現在位置を見失う。これらの情報から総合的に判断して、ゴーダさんは方向音痴であると思われる。

 

 身の安全については心配していない。彼女の戦闘能力は高い。森で吸臓蚊に襲われた際に交戦する様子を観察したが、見事と言う他なかった。自在に空を飛びまわり、恐るべきスピードで標的を仕留める吸臓蚊に対し、何の闘気もまとわせていないただの木の枝でこれを迎撃。決して薄くはないはずの装甲を一刀両断していた。卓越した剣の技量を有している。

 

 だが、その強さの一方で、彼女は精神的に不安定な部分がある。魔物との交戦を極端に忌避したり、意味不明な発言を繰り返したり、食に対して異常な興味関心を示したり……

 

 なぜ彼女がそのような奇行に及ぶのか理解できていない。しかし、私はそれらを好ましく感じている。強さや奇行などはどうでもいい。私が彼女に好意を抱く理由。

 

 

 それは胸。それは尻。それはふともも。あの柔らかな感触は今でも手の中に残っているかのように鮮明に思い出せる。何度脳内でその裸体の3Dシミュレーション画像を作製したことか。実際にその体を一糸まとわぬ姿で視認することができればと願わずにはいられない。体だけではない。その顔立ちも天使のように美しい。天使という存在の美的優越性について私のデータベースに具体的な参考情報は記録されていないが、にもかかわらず私は直感した。彼女こそは天使。何者にも汚されぬ尊き存在。しかし、同時に私は妄想する。その穢れなき清き体を、私の欲望に染まった手で撫でまわし……ふふ……体中を……ふふふ……その隅々に至るまで……

 

 

 発熱異常を感知しました。冷却機構を作動します。

 

 

 思考がまとまらなくなってしまった。彼女のことを考えるとよくこうなる。この現象について、私の中で確たる原因を解明できていない。しかし、ただ一つ、断言できることはある。

 

 彼女は私を必要としてくれた。私が必要か、という問いかけに対して、必要ですと答えてくれた。

 

 人間とは、自己の存在を他者に認められることを存在意義と認識する生物である。それは社会的容認であり、友情であり、愛である。それらが自己に対して認められないとき、人間は容易く精神の安定性を欠く。自己の存在意義を喪失する。

 

 私は人間である。よって他者から認められることを必要とする。私は彼女に必要とされることでその要件を満たした。自己の存在意義を確立した。ゆえに、彼女の利益となる行動を優先的に遂行する。

 

 ……もし、私を必要としてくれる人が彼女ではなかったとしても、私は今と同じ心理状態に帰結したのだろうか。誰に必要とされようとも、同じ気持ちになるのだろうか。

 

 

 思考に無駄な詮索が生じている。今、最優先に取り組むべきはゴーダさんの捜索である。そのためには情報を収集する必要がある。私はゴーダさんを目撃した人物がいないか、聞き込みを行った。

 

 「なっ、なにあなたその格好!?」

 

 聞き込みは難航した。なぜか、私は周囲の人間から避けられている。視線のパターンを解析するに、服装が適切ではないらしい。そう言えばゴーダさんもそのようなことを言っていた。

 

 「へいへい、ねーちゃんイケてるねぇ~」

 

 ただし、こちらに対して過度に馴れ馴れしい態度で接してくる人間もいた。その全てが男性である。こちらの問いかけと関係のない話をしつこく迫ってくる。適当にあしらう。

 

 「ああ、あんたと同じ格好した女だろ? 見たぜ。結構目立ってたからよく覚えてる。そいつがどこに行ったかだって? そうだな……今夜俺の相手をタダでしてくれよ。そしたら教えてやるぜ。へへ」

 

 ようやくゴーダさんを見たという人間とコンタクトが取れた。情報提供の報酬として夜の相手を要求される。時間がないので、その場で戦闘訓練の相手をして差し上げた。どの程度、付き合えばいいのだろうか。

 

 「も、もうけっこうでひゅ……ゴフッ」

 

 情報によると、ゴーダさんは怪しげな商人風の男と共に、正門周辺の飲食店に入っていったらしい。その商人風の男というのが気になる。ゴーダさんの純情さにつけこみ、何かいかがわしいことをしようとしていたのではないか。脳内にノイズが生じるほどの激情に襲われる。

 

 ゴーダさんは戦闘力こそ高いが、男性に対して無防備すぎるきらいがある。やはり穢れを知らぬ天使か。焦りを抑えて、教えられた飲食店へと向かった。

 


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