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逃走劇 2


 上と左右からの挟撃。

 更には後方から迫る竜族達。

 避難民達の恐怖は限界に達し、理性が崩壊する。

 全体の進行速度は遅く、駆け足程度。

 そのため後方の避難民達は我先にと、左右に広がって前方へ向かう。

 竜燈草のおかげで、全体の周辺には竜族達が近寄れない。

 だが左右に出た避難民達の数が増えれば増えるほど、煙の範囲外へ、はじき出される人が増える。

 必然。

 竜族達の餌食になる。

 左右に広がり、走っている避難民達は左右に展開した竜族達に殺され始めていた。


「くそっ! 戻れ! 外へ行くな!」


 俺の叫びは剣戟や慟哭、戦闘の音や爆発音で掻き消える。

 何を言っても届かない。

 本隊の後方部分には隙間ができ、移動速度は上がっているが、大した好転ではない。

 それに老人と子供の体力も限界だ。

 脱落者が続出し、俺達は助けることもできず、ただ走るしかない。

 十万以上もいるのだ。

 目の前の人達を助けても、他の場所で死ぬ人間が出る。

 それに俺達が脱落者たちを助けてしまえば、逃げている避難民達を見捨てることになる。

 だから、俺達は指をくわえてみることしかできない。

 俺達の役目は本隊を守ること。

 そこから出てしまった人間は見捨てなければならない。

 上空の飛竜達の数が増える。

 弓兵達も何とか応戦しているが、矢が足りないかもしれない。

 数少ない魔術師たちは竜燈草の煙が流れる方向を操作するために必要だ。

 まだ竜燈草があるため、敵は近づけないようだが、なくなれば俺達は一巻の終わりだ。


 十万の国民。 

 それが縦に伸びれば、数キロ程度の距離になる。

 それ全体を覆う煙なんて、早々作れはしない。

 あともう少しでラスクに着く。

 だがそのたった三十分程度の距離でさえ博打だった。

 俺は気配を感じ、後方に振り返る。

 大型竜達が見えた。

 それだけなら問題なかった。

 奴らは巨大で強力だが、近づかなければ問題なかったからだ。

 だが、そいつは今まで見たことがある下級大型竜とは姿形が違っていた。 

 なぜなら、背中に翼があったからだ。

 それが。

 飛んだ。

 巨体が飛び立ち、俺達の方向に来ている。

 冗談だろ。

 あんなものが落ちてきたら、終わりだ。

 落下の風圧で、竜燈草の煙や兵士ごと殺されてしまう。

 いや別の攻撃手段があるかもしれない。

 どっちにして、飛竜達よりも厄介なことは間違いない。

 巨体の癖に、飛翔速度が尋常ではない。

 それが遥か上空に上ると、滑空してきた。


「落ちてくるぞ!」


 咄嗟に叫んだが、対処のしようがない。

 みんな必死で、余裕がない。 

 墜落。

 大型飛竜兵が大隊に迫る。

 俺は反射的に走った。

 墜落地点は数百メートル前。

 間に合う。

 走りながら、ステータスを開く。


 ・生命力 :100/100

 ・体力  :100/100

 ・筋力  :19 →25

 ・俊敏性 :17 →22

 ・精神力 :40 →50

 ・知力  :27 →30

 ・カリスマ:1 →20

 ・カルマ :107→130

・魂   :10 →10


 ●スキルLV:2

 ●スキルポイント:11【24】


 ここに来るまでの戦闘でかなりステータスは上がっている。

 それにスキルレベルも上がっているしスキルポイントも増えている。

 走りながら即座に確認すると、俺はポイントを割り振った。


   ▽パッシブスキル

    ・筋力上昇1【派生:筋力上昇2】 ■■

     …筋力が10上昇する。

     ★筋力上昇2【派生:筋力上昇3】■■■

      …筋力が15上昇する。

      ★筋力上昇3【派生:なし】□□□□□□

       …筋力が30上昇する。


   ▽アクティブスキル

    ・不撓不屈1【派生:不撓不屈2】 ■

     …5秒だけダメージを10%軽減する。再使用30秒。

     ★不撓不屈2【派生:不撓不屈3】 ■■■■

      …10秒だけダメージを30%軽減する。再使用30秒。

      ★不撓不屈3【派生:なし】 □□□□□□

       …20秒だけダメージを60%軽減する。再使用30秒。

    ・スロースターター【派生:スピードスター】 ■

     …5秒だけ俊敏性を10%上昇させる。再使用120秒。

     ★スピードスター【派生:ハイスピードスター】 ■■■■

      …10秒だけ俊敏性を20%上昇させる。再使用120秒。

      ★ハイスピードスター【派生:なし】 □□□□□□

       …15秒だけ俊敏性を30%上昇させる。再使用120秒。


 筋力上昇2と不撓不屈2、それとスピードスターを習得。

 これでポイントを全部使ってしまったことになる。

 習得するとスピードスターを使った。

 上位派生のスキルの場合、下位版は使えなくなる。

 必然、スロースターターと不撓不屈1は使用不可能だ。

 スキル使用によって、移動速度が二割増しになる。

 早い。

 だが、間に合うかはギリギリか。

 人の間を縫って、俺は地を蹴る。

 風を肌で感じつつ、必死で足を漕いだ。

 すぐそこだ。

 落ちてくる。

 避難民達が逃げようとするが、間に合うはずがない。

 上空数百メートル。

 墜落速度を考えると数秒の距離。

 俺は飛んだ。

 脳が加速する。

 

 ●改良

  ▼竜魂

   ・小竜魂:354

   ・中竜魂:127

   ・大竜魂:2

   ・極大竜魂:0

   ・魔竜魂:20

   ・大魔竜魂:0

   ・???

  ▼改型

   ・物理型【攻撃力:B 防御力:B 速度:E 特殊:膂力大上昇】

    …剣の重量を増やし、威力を向上させる。硬度も高くなるのでまず壊れない。

     ただし非常に重いため扱いが難しく、速度は著しく下がる。

     また、他の型に比べて特殊な能力がない。ただ力は上がる。

     ▽必要竜魂【中竜魂:30】


 即座にドラゴンイーターを物理型へ変形させる。

 やや薄かった刀身が一瞬で厚みを増す。

 鉄塊。

 重みが増す。

 だがだからこそどんな衝撃に耐えることができる縦の役割を担う。

 風圧を感じる。

 一瞬の内に、大型の飛竜は地上間近へと迫っていた。

 俺は大剣をかざした。

 迫る大型竜の身体ごと剣で防いだのだ。

 空中での衝撃。

 重力に負けて、俺は落ちる……ことはなかった。

 不撓不屈2と昇断剣を同時に発動。

 ダメージ軽減に伴い衝撃も分散された。

 空中で昇る剣が放たれ、それは重力を無視して、上へ上へと大剣を持ち上げる。


「がああああああああああああ!」


 今までの戦いによるステータス上昇、筋力上昇、ドラゴンイーターの性質変化、そして様々なスキル。

 総動員しての防御と攻撃。

 結果。

 弾いた。

 体躯が、十数メートルはありそうな大型竜の墜落を俺は防いだのだ。

 しかしそれはただ墜落を防いだだけ。

 巨大な物体が落下するのは避けられない。

 少し離れた場所に大型竜が落下した。

 俺は地面に着地すると叫んだ。


「みんな逃げろ! 早く!」


 無事だった人達は慌てて走り出した。

 相手は……まだピンピンしている。

 あれだけの衝撃だったのに、ほぼ無傷のようだ。

 近くで見る大型竜は建物のようだった。

 ごてごてとしており、生物というよりは鉄の機械。

 鎧を纏った生物のように見えた。

 口腔は巨大で牙がずらっと並んでいる。

 尻尾は太く、うねっている。

 以前、ネコネ族の集落で戦った大型竜は、たしか下級。

 ではこいつは。

 中級? それとも上級?

 どちらにしても厄介そうな相手だった。

 俺は思い出したように、懐から竜燈草の毒薬を取り出して、ドラゴンイーターに塗った。


「効いてくれよ……」


 毒々しい見た目になった鉄塊を携え、俺は地を蹴る。

 まだ動かない大型竜に向かい、俺は剣を振り下ろす。


「なっ!?」


 ドラゴンイーターが弾かれた。

 どれだけ硬い身体をしているのか。

 物理型の大剣だ。

 俺が持っている最大の強度と攻撃力を持っている剣なのに。

 奴には効かないのか。

 しかも、竜燈草の煙が充満しているのに、微動だにしていない。

 いや、そうでもないか。

 緩慢に動き、俺を睨んでいる。

 動きが鈍くなっているのは、多分竜燈草のおかげだ。

 こいつを放置してもいいが、煙がなくなって、また同じような攻撃を仕掛けてくる可能性もある。

 そうなったら被害は甚大だろう。

 ここで倒したいところだが。


「……やってみるか」


 一か八か。

 相手は動かない。

 ただの岩みたいなものだ。

 ならば、動きを大きくした攻撃も避けないだろう。

 俺は距離をとって、剣を振りかぶり、再び大型竜に向かって跳躍した。

 俺はそのまま前方へ宙返りした。

 二度ほど回転し、慣性力を増やす。

 必然、強引に俺の身体は前方へ激しく回転を始める。

 まだ大型竜に届いていない。

 距離は保ったまま。

 だが二度の回転による慣性で、風車のように回る。

 回転力が増す中、俺はトリガーを引き、自らの身体を更に回転させる。

 ブーストで更に加速した俺の身体と大剣は、ぐるぐると回転しつつ、大型竜の身体に吸い込まれる。

 けたたましいほどの金属音。

 鼓膜が壊れると思うほどの音量。

 それが辺りに響くと同時に、俺の身体は止まり、空中にぶら下がっていた。

 大剣が奴の身体に刺さっている。

 刀身の半分近くまで埋まっており、表面にはヒビが生まれていた。

 それが徐々に広がり身体全体を覆うと、外皮が破壊された。

 同時に血飛沫が舞い、叫び声と共に、大型竜は絶命した。

 外皮は硬かったけど、中身はそうでもないらしい。

 痙攣している大型竜を置いて、俺は辺りを見回す。

 俺の戦いを見ていた避難民達の数が多かった。

 まるで野次馬だ。


「何をしてるんだ! 急げ、さっさと先に行け!」


 我に返ったように走り出した避難民達。

 何とか倒せてよかった。

 安堵のため息を漏らしていると、莉依ちゃん達の姿が見えた。


   ●□●□


 後方から莉依ちゃん達がやってきた。

 思った以上に、早めに倒せたらしい。


「ク、クサカベさん大丈夫ですか!?」

「ああ。莉依ちゃん達は?」


 見ると、みんな無事のようだ。

 だが状況は悪化しつつある。

 こいつを倒しても、上空の飛竜達の攻撃は苛烈化しているし、左右に広がる避難民達は命を落としている。

 この惨状を早く終わらせるために、早くレイラシャに行かなくては。

 だが、もしこのままレイラシャに到着してもどうにかなるのだろうか。

 むしろ、敵の大群を連れた俺達を拒絶する可能性の方が高い。

 どうなるか、予想がつかない。

 希望は薄い。

 それでも走るしかない。


「行こう。もうすぐでレイラシャだ」


 走り始めると、みんなも俺に並んだ。

 あと十数分で到着するはずだ。

 しかしそれは先頭が到着する時間。

 後方の俺達が到着するにはまだ時間がかかる。

 見える。

 森に隠れていたレイラシャの都市、ラスクが。

 丘の上にある都市。

 周辺には兵士達が整列している。

 かなりの数だ。

 だが、精々が五万程度。

 竜族に比べると少ない。

 彼等は動く様子がない。

 俺達を助けるつもりはないのか。

 くそっ! ここまで来て、見捨てるつもりか!

 俺達の協力がないのなら、レイラシャだけで戦うことになる。

 それは不利だと、彼等もわかっているはずなのに。

 だが、もうどうしようもない。

 行くしかない。ラスクに。

 俺達は必死に走った。

 走って走って、たった十数分の距離が永遠にも感じられる。

 そしてたった数分の永遠は、最悪の言葉で打ち切られる。


「りゅ、竜燈草が切れた! う、嘘だろ! なくなっちまった!」


 兵士達が次々に叫ぶ。

 最後の竜燈草を巻いた松明を手に、彼等は泣きそうな顔をしている。

 事前に準備できた竜燈草の数は多くなかった。

 それを松明のように使い、何とかここまで来た。

 一ヶ月の間、今日まで敵と会わなかったのはただの偶然で、途中で遭遇したら俺達は全滅していた。

 たった数十分なのに、竜燈草は足りなかったのだ。

 最悪だ。


「くっ、ここまで来て、諦められるか!」


 だが、どうする。

 どうすればいい。

 俺達も前方へ向かうか?

 そうすればもしかしたらレイラシャの兵達が助けてくれるかもしれない。

 それでは中央から後方の人達を見捨てることになる。

 だが十万以上の国民がいるのに、全員を助けられるはずがない。

 それがわかっているから、ここまで見捨ててきたんだ。

 脱落した人達を、見捨ててきたんだ。

 でも、それは竜燈草という手段があり、本隊を守るという名目があった。 

 追いつめられ、竜燈草がなくなりかけている今、本隊が狙われる。

 行くしかない。


「ニース、ディーネ、結城さん!

 三人はこのまま継続して走って、竜燈草が切れたら、周辺の人達を守りつつ戦ってくれ!

 莉依ちゃんは兵士の怪我人を優先して治療しつつ、レイラシャへ移動してくれ!」

「クサカベくんはどうするの!?」

「俺は……注意を引く」


 結城さんの叫びに俺は端的に答える。

 すると、莉依ちゃんが俺の腕を掴んだ。


「だ、ダメです……クサカベさん、また無茶を」

「しないといけない時だ。ここで少しでも敵の気を引ければ、みんなを助けることができる」

「で、でも、それは囮です!」

「そうさ。そうじゃないと意味がない。わかるだろ、みんなが危険な状況なんだ。

 できることをしないと、本当に全滅するかもしれない。

 それに、犠牲になるつもりじゃない。もうレイラシャは見えてるんだ。何とかなるはずだ」


 ならないかもしれない。

 でもやるしかないんだ。

 俺は莉依ちゃんの頭を撫でると、即座に振り返り、後方へ走った。


「クサカベさん!」


 仲間達の叫びを振り切って、後方へ向かおうとした。

 その瞬間、

 空から何かが降ってきた。

 無数の矢。

 それが竜族達に降り注ぐ。

 同時に、ほとんどの竜燈草の煙がなくなっていく。

 地を揺らすほどの気勢が発せられた。

 それは前方、ラスクから昇る、兵士達の声だった。

 彼等は一斉に、俺達のところまで向かっている。

 いや、すでにかなりの兵士達が、俺達の前方部隊付近まで辿りついていた。

 見えなかった。森に隠れていたのか。

 都市近くにいたのは弓兵だったらしい。

 彼等はこの長距離をものともせず矢を放っていた。

 左右の竜兵達の数が減っていく。

 竜族達の大群はほぼ後方にいる。

 上空の飛竜の数は多いが、せいぜいが数百。

 つまり、前方からの援軍があれば、俺達の進行を妨げる者はほとんどない。

 だが、俺達が逃げ切れても、後方の大量の竜族が押し寄せれば、ラスクは終わりだ。

 一時的な延命に過ぎないはず。

 しかし、それは俺が囮になっても同じこと。

 どうする。

 時間稼ぎのために一人で戦っても意味がなくなってきた。


「クサカベさん! 援軍のおかげで被害は抑えられるはずです!

 と、とにかくラスクまで行きましょう!

 戦うにしても、ここよりはマシなはずです!」

「……わかった。じゃあ、俺達は左右の竜族達を倒そう。それでいいか?」

「は、はい!」


 莉依ちゃんが安堵の表情を浮かべる。

 確かに、俺は自分を犠牲にして、無茶をしている。

 その自覚はある。

 でも、それはただの役割にすぎない。

 格好をつけているわけじゃない。

 必要だと思うからしているだけだ。

 だから必要がないなら、別の手段を選ぶ。

 俺達は左右に散開して、兵士達と協力して、挟撃してくる竜族達を倒した。

 そして、レイラシャの兵士達と合流。

 彼等は当然ながら攻城兵器を持っている。

 襲い掛かる竜族達に向かって巨大な矢や石を放っていた。

 驚くべき点はそこではなかった。

 矢は火矢であり、石は熱したもので、着弾と共にもくもくと煙を発していたのだ。

 あれは、竜燈草だ。

 つまりレイラシャ軍も俺達と同じように、竜燈草の有用さに気づき、対策を練っていた。


「後方の竜族達が混乱してるぞ!」


 ニースの叫び通り、竜族達の大隊には竜燈草の煙が充満しており、まともに動けなくなっていた。

 俺達はあくまで防衛にしか使えなかったが、巨大な攻城兵器があれば、遠くの竜族達にも届く。

 それに、広がった多数の軍隊に着弾させるのは簡単だ。

 それだけならば、まだ竜族達の数は減らないし、進行を止められなかっただろう。

 だが、レイラシャ軍の攻撃はそれにとどまらない。

 都市近くには等間隔で竜燈草が盛られており、そこにいた兵士達が次々に着火していったのだ。

 ここまで周到だとは思わなかった。

 中央付近の避難民達がラスクに到着した。

 レイラシャ軍は都市の防衛だけでなく、俺達の移動場所を確保していたようだ。

 前方の人達は周辺の開けた場所へ誘導されたらしい。 

 森の中を走る俺達に振り返らず、レイラシャ軍は戦線へと向かっていく。

 彼等の武器には竜燈草の毒薬が塗られていた。

 かなりの量だ。やはり事前に準備していたらしい。

 後方にいた俺達もレイラシャの都市であるラスクに到着。

 だがまだ竜族達は周辺にいる。

 丘から見える地上の様子に、誰もが息を飲んだ。

 そこら中、竜族がいる。

 三十、いや五十万くらいはいるかもしれない。

 丘の上にあるラスク付近だから、遠くまで見えてしまった。

 総力戦を仕掛けているのか。

 無数のレイラシャ兵達とすれ違い、ラスク近くの広場へ到着する。

 ようやく止まることができた俺達は、息を弾ませながら周囲の様子を探る。

 かなり人数が減ってしまったはずだ。

 道中、脱落した人達の数はどれくらいだったのか。

 しかし数千を超えると、数を変えるのは困難だ。

 上空から見れば別だろうが、正確に減った人数まではわからない。

 十万程度の人間がここにいるとして、相当な広さがあるようだ。

 丘の上に建つラスクは城塞都市で、防壁に覆われている、一般的な構造だ。

 その周辺は開けた土地。つまり俺達がいる場所だ。

 伐採し切り開いたのだろう。

 その証拠に、ある程度の距離をとって鬱蒼とした森が広がっている。

 とにかく、ラスクに到着した。

 まだ安全ではないが、それでも目的は達成できたのだ。

 一ヶ月、長かったし、これからも辛い日々が続くだろう。

 それでも一瞬だけ、俺は気を抜き、その場に座り込んだ。

 誰もが同じように、座り込んでいる。


「何とか、着いたな」

「え、ええ、でもまだ安心はできませんね」

「ああ。そうだな。でもちょっとは休むにゃ……じゃなくて、休むぞ」


 ニースがにゃって言ったが、誰も気づかない。

 それだけ疲れていたのだろう。

 一先ず、少しでいい。

 ほんの数秒でいいから、休ませてもらいたかった。


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『マジック・メイカー -異世界魔法の作り方-』

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