エピソード45 番外編 蓮華寺 雄也
屑男 蓮華寺 雄也→Yuya Renngeji→ya Ren→aRenとなっております。
良い男 勝呂ロベルト→ロロ
「遠くまで来てもらってごめんなさいね、こんなこと相談出来る専門家の知り合い優香ちゃんしか居なくて」
目の前で申し訳無さそうに眉を下げるのは、還暦までもう少しと言う実年齢からは考えられないほど若々しい儚げ美人、義姉の母である洋子さんだ。
「いいえ、大丈夫ですよ。ざっくりとした概要は兄から聞いてきたんですけど、ご本人から伺っても良いですか?」
私の兄は小学生の時から義姉のことが好きで好きで、執着檄重な一途な愛情を義姉に向けてきたのだが、その義姉家族は父親の不倫、しかも当時の義姉の担任教師と自宅で密会していたのを、その親に見つかって修羅場の末に離婚、数年後、その男がストーカーになり逮捕されて私の家の極近所に引っ越してきてから、家族ぐるみの付き合いをしてきた。
数年前に年下の男性と再婚して他県に引っ越したが、まだ私の母とは頻繁に連絡を取っている親しい友人だ。
私が弁護士になって働いているのを聞いて、連絡を貰ったのだった。
なぜか兄嫁の母となる洋子さんから先に非常に詳細な聞き取りを終えた兄が、私に依頼してきたのだが、一般人の癖に異常に細かく指示してきて、私より的確でちょっと解せない。
昔からスポーツ万能で勉強も出来て、妹の目から見てもムカつく位に整った顔立で、そりゃあモテモテだっただろうに、義姉一筋の暑苦しい兄は法律にも詳しいとかチートが過ぎる。
「あの、こちらの弁護士さんはね、私の娘婿の妹さんでね、親しい方だから、ありのままを話して大丈夫よ」
洋子さんが、隣で俯いて座っている若い女性に話しかけて、
「この子、私が働いている単位制の高校の教え子なの高橋遥さん、二十歳になったばかり」
次に私へと紹介をした。
話をまとめると、洋子さんの勤めている学校の理事長 蓮華寺 雄也は代々地元の名士らしく、その父親は現在その市の市長を4期も務めていると言う。
息子は絵に描いたような顔だけイケメンなバカボンで、昔から女性関係が派手で乱れていて、それを、息子を溺愛する母親が金と人脈を駆使して醜聞にならないように揉み消していたらしいのだが。
「ぶっちゃけ、なぜ、親よりも年上なオヤジにただで会ってやらなきゃならないのか、意味わかんない」
遥さんが目を吊り上げ口許を歪ませて言い捨てた。
彼女宛に出されたLINEの文章を読んで気が遠くなりそう。
『二十歳の誕生日おめでとう。遥が大人になるのをずっと待ってたよ。もう気持ちに蓋をする必要なんてないんだ、やっとお互いの本心を言い合えるね、君を朝まで何度も愛してあげるから、素直になっていいんだよ』
『誕生日にスウィートを予約したから、君はそのままでただ僕に愛されれば良いんだ、照れ無くてもいい。素直になっていいんだよ』
『お互い大人同士になったんだから、やっと大人の付き合いが出来るね。君の大人の扉を開けるのが僕であるのを嬉しく思うよ』
こんな一方的な文章が永遠かと思うほど連投されて、そのスウィートを予約したと言うホテルのアドレスも貼られていた。
「確認なんですけど、学校に通っている時、卒業後でもですが、彼と個人的なやり取りは、」
「止めてよぉー!キッショ。あんなナルオジなんて相手したこと無いし、だいたい、教師でも無いし、関係ないし。連絡先交換すらしてないのに、突然こんなの着て。ブロックしても別のから何度も何度も送られてきて、もう本当に気持ち悪い~」
私の確認の言葉に遥さんの慟哭のような否定が被さる。
「洋子さん、同様の話を聞いたことはありますか?」
私が確認すると、厳しい表情の洋子さんが、過去の教え子から聞き取りをした調査表を数十枚渡してきた。
「自身の罪を理解して反省して償いをして欲しいと思います」
遥さんのその意見に、洋子さんは大きく頷いたのだった。
学園の応接室で、当事者の理事長と校長である奥さん、学園の依頼した弁護士と向き合って話し合いが持たれた。
「教えていないLINEに性的な文章を何度も何度も送りつける行為、しかも卒業生の女性にです。その行為を即刻止めて下さい。その上で、彼女にも、同様な被害に遭われた過去の被害者にもキチンと謝罪して下さい。彼女たちはあなたの行いを不快に思っているんですよ」
その言葉に、下を向いて憮然としていた雄也が驚いて顔を上げた。
「えっ?」
然も不思議そうな呟きが小さく溢された。
「何を驚いているんですか?あなた、あなたの母親と同年齢のご婦人から性的匂わせの言葉をかけられて、嬉しいですか?喜びますか?」
私は、半目になりながら問いかけた。
かつては麗しの顔だったであろう片鱗は見て取れたその男は、寂しくなった登頂部をふんわりとした左右の髪でカバーし、腹回りのサイズが明らかに小さからろうと思われる細身のスーツを頑張って着ていた。
シワを寄せた顔を向けて、
「母と同年齢なんて後期高齢者ですよ、止めて下さいよ気色悪い」
そう宣った彼に、
「それが被害者の女性たちの気持ちそのままですよ。皆さん、送られてきたあの文章を見て気持ち悪いって口々におっしゃってますよ」
そう冷たく言い放った。
「あなた、黙って!わかりました。この人には学園から去って貰いますし、今後生徒に関わらせません。不愉快な思いをさせてしまった被害者の方々には学校として、それ相当の被害弁済をさせて頂きます。どうか穏便にお願いします」
まだ何か言おうとした理事長を厳しい言葉で制して、校長である奥さんはひたすら頭を下げた。
結局、この件は示談にして被害者へは謝罪と共に幾ばくかの慰謝料が支払われた。
当事者には口外禁止として内々に片付けたのだが、人の口に戸は建てられないの如く、地域の噂に上るようになり、父親の市長は次の選挙に落選の憂き目にあった。
学校も年々入学者が減少しているようだが、ここの卒業生で教師になった元ギャル先生が奮起して、別居した奥さん校長と供に学校の建て直しを図っているとか。
蓮華寺雄也は落選した父母の世話係として、実家に帰されたとか。
その後は人前に出る機会はほぼ無くなったと言う。
「まあまあだな」
後方腕組み上司面する兄に冷たい視線を投げつつ、
「お義姉さん、これのメンタルぼこぼこにヤっちゃて下さいよ」
そう言いつければ、
「そうねえ~」
と言うとグループLINEにカレンダーのスクショが載せられた。
初めてメールした記念日、初めてデートした記念日、初めて喧嘩した記念日、365日毎日何かの記念日が書かれているそれに、鳥肌ブルル
「ヤッベー、お兄ちゃんマジヤバいから。こっわ、こっわ」
本気の震えに二歩ほど後ろに下がったほど。
「や、メグ。止めろって、消せよ。それは、二人の」
焦る兄に、
「な、何、二人のメモリー的な?コワー。マジでお義姉さん、束縛酷かったら言ってください、いつでも訴えますよこれ」
私が、真顔で義姉に告げる。
「いいから、いいから、兎に角メグ、これ消してお願い」
「ふふ、消しましたけど」
笑いながら見せる画面には、
『何これー恵斗あんたヤバいよ。重すぎ』
『パパ、毎日ママとの思い出に浸ってんの!?コワ』
『恵斗、父さんと一度しっかり話そう、お前の情緒が心配だ』
家族からの怒涛の書き込みが!
「お義姉さん、こんなヤバい兄ですが末永くお願いします」
私はキリリと顔を引き締めて、きっちり90度の礼をして、その場を去るのだった。
大変大変、完結が遅くなった事をお詫び申し上げます。
すみませんでした。




