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戦う聖女さま  作者: 有栖 多于佳


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エピソード44 番外編 田端 漣

この物語では、屑男の名はアレンに統一してあります。

田端 漣、タバタ レン、TABATAREN、AREN(アレン)、となっております。

(やっぱり、そうくるよなー)


自身の法律事務所にノーアポで訪ねてきた人物の名を聞いて、グッと眉間にシワが寄った。


「先生、どうしますか?アポイントが無いとお断りしましょうか」

パートの事務員さんが気を回してくれるが、どうせしなければならない話だと腹を括り、


「いや、一回で片付けてしまおう。応接間へお通しして。あ、お茶は出さなくていいから」

そう指示を出し、ゆっくりと書類を用意したのだった。


「はあ?メグミの親なんだから、俺が相続人だろう」

男は、バンっと大きな音を立てテーブルを両手で叩いた。


「暴力的な恫喝は許されませんよ、ここはカメラで録画されていますので、非常識な振る舞いをされるようでしたら、直ぐに警察へ連絡しますから」

俺は、半目で見下ろしながら冷たい声で言い捨てた。


やって来たのは、諸悪の根元、メグミの父親 田端 漣だった。


メグミへの殺人未遂で実刑収監された母洋子とその直後離婚し、浮気相手と再婚したが、周囲の厳しい目に耐えられずに再婚相手が蒸発してしまい、ローンの残った家を売って次女と実家に帰った。


だが、自身の両親との折り合いが悪く、結局は次女を置いたまま、東京へと上京して以後音信不通となったと言う。

次女は刑期を終えた母が迎えに来て、そこで父方との付き合いは途絶えた。


メグミは亡くなる前に、自分の就活にかかる費用を払い終え、残った金はほぼ、児童福祉施設、養護施設へと寄付し、遺産をほとんど残さなかった。

天涯孤独と自称した通り、誰にも知らせずにひっそりと最期を迎え、半年が過ぎてから亡くなった旨の知らせを顧問弁護士である俺の名前で出した。


メグミの死を知って、遺産を望むのは父親だけだろう、そうメグミが言っていた通りの展開に、『屑野郎が!』と胸中で罵詈雑言が止まらない。


「死後、相続に振り回されるのは不憫だと故人は考えておられたので、病気がわかった早々に、遺産を寄付されました。故に、管理として預かり残った金額は1万7千円ほどとなります。これをあなたと生母と妹、確か異母妹も居ますよね?」


不倫相手の元担任との間に二人、逃げた東京で内縁の妻に一人、いずれも女児が居たのを、受任した後に調べて知っていたのだ。


知られていると思ってなかったのか、罰の悪い顔をして、

「妹は関係無いだろう!」

とか騒いでいるが、父親の子であれば、異母姉の相続者になるだろうと、呆れた顔を隠すこと無く向けた。


「だから、2833円ですね。相続放棄をすればこの限りではありませんが。因みに、他の方からは連絡がまだ来ていないので、もし受け取り希望であってももう一度ご足労頂きますが」


(東京からここまで来る交通費を考えたら赤字だよね~)

と侮る目を向けることも忘れない。


「な!そ!そんな金額じゃ交通費にもなんねーよ。あんたが知らせを寄越したから来たんじゃねーか、大して金が無いなら知らせてくれなくて良かったわ!」

口の端に泡を溜めて苛立ちをぶつけてきた。


「だから、先ずはお電話を下さいって書いてあったはずですが」

あんた、バカぁ~!?と言語外に匂わせると、それはわかったのか、雑な態度で立ち上がりバンバンドンとドアを乱暴に開け閉めして帰っていった。


「先生、お疲れさまでした。結局どうなるんですかね」

事務員さんがドアから外にバサーと塩を撒いてお清めした後、お茶を運びつつ聞いてきた。


「年末に残額を足長育英会にでも寄付して終了だろう」

ふうぅと面白くない顔をしながら、言葉を返したのだった。



「へえ、前回の私には妹が四人も居たんだね」

部活終わりの帰り道をメグちゃんと歩きながら、メグちゃん亡き後の話を久しぶりにした。


「ああ。今回も何人かは居るんじゃない?結局、高校教師も辞めちゃって、地元からどこかへと出てったんだろう?」


「うん、最近、会ったんだよ」

メグちゃんが実に嫌そうに顔を歪ませながら返事をした。


「え?ま、マジで?なんで?」

不倫相手、しかも長女の小学校の担任教師を家族の居ない間に家に呼んで情事に耽り、その醜態を両方の親に見られると言う、超絶黒歴史を負った人がなんで3年も経って娘に会ったのか、信じられない気持ちで焦って聞くと、


「お母さんがまだ自分のこと好きだと思っているみたいでさ、突然夜遅くにやって来て、

『そろそろ俺に会いたくなったんじゃないか?素直になれよ。俺はお前を許すよ』

とか玄関先で言っちゃって~!!

『バカなの死ぬの?イヤ、死ねよ!』と心底思った訳ですよ」

地を這うような低い声で、答えた。


俺は目ん玉が飛び出すくらい大きく見開いて、ヤバいヤバいと繰り返しつつ、


「え、え、え、え、なんだそれ、キッショ!キッショ!ヤバ過ぎ怖過ぎ縄文杉でしょ!」

と、返した。


「私は知らなかったんだけど、お母さんにしつこくLINEで復縁匂わせロミオメールが着ていて、余りに頻度が高いし、内容がどんどんエスカレートしてたみたいで、お母さんが警察に相談して、ミュート奨励されたんでそうしてたら、焦れて突撃してきたっぽいよ。


直ぐに警察に電話して任意同行されてったんだけどね。取り調べでヤバさに気付いた警察が付きまといに該当するとかで、お母さんが被害届出して、次に同じことしたら逮捕だよって言われたって」


「ああ、だから東京へと逃げた訳か」

俺はメグちゃんの話から結論を推察した、けど、


「いや、バカわさー休まない訳よ。保釈された足で、うちのアパートにやって来て


『洋子、お前俺を警察に売るとか、何様だ!俺のお情けで付き合ってやった恩を仇で返しやがって!』


って、怒鳴ってドアをドンドンと叩いて脅したので、通報してやって来た警察官に逮捕されて、留置所へ入れられたのよ。

あの恐怖ったら無いわ~。咲希なんか震えちゃって可哀想にトラウマになったらどうすんのよ!って聞き取りのお巡りさんに泣きながら訴えといたよ」


メグちゃんの生物学上の遺伝情報源は、俺の想像の斜め上空を飛行していた。


「それいつのこと?」


「一昨日かな?それで高校クビみたいで、都会に逃げたっぽいよ。所在地を警察に知らせなきゃならないみたいで、警官からお母さんが聞いたんだって」


「マジ、ヤバかったな、大丈夫?知らなくてごめん。俺、話だけで心臓バクバク言ってる」

よく考えたら今日はあの悪夢の日、中二の二学期最終2日前だったことに気がついて、身体が震えた。


「良いよ、ちょっと結論出てから伝えたくてさ。でね、あのおっさんのキショLINEとか恵斗君のママに相談してたみたいで、私たち、恵斗君ちの裏の賃貸マンションに引っ越すことになったからさ、これからもっと近くなるよ、やったね☆!」

メグちゃんは、そんなこと気にも止めてないのか、強がりか、笑顔を向けてそう言った。


「これからは、俺が直ぐに助けに行くから、強がらなくて良いよ」


「心配ありがとう。でも、大丈夫。色々考えた結果、やっぱり物理って必要だって思い返して、ボクシング習うことにしたんだ!目指せ一歩よ!これからジムに行くから、じゃあね~」


メグちゃんは俺の申し入れを軽く往なして、颯爽と走り去って行ったのだった。




ちなみに、良い男の名は、ア=ラーイ→新井、ケイト=バルベリト→恵斗 馬場本と苦しいこじつけをおこなってみたりしております。

グスタフはもういっそ清々しいほどそのまま、グスタフとしてしまいました。


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