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戦う聖女さま  作者: 有栖 多于佳


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エピソード38 瘴気祓い 後編

「では聖女さま。瘴気はどうしていけば宜しいのでしょうか」

マルシアが恐る恐る尋ねた。


「溜まる前に祓っていくことね。軽い瘴気に触れて直ぐ様魔物になるのではないでしょう?先ずは病になったり、そのせいで亡くなったり。

それが続いて苦しみ死への恐怖や生への執着が大きくなって濃くなっていく。

そこへ邪な念が重なって、恨み辛みも妬み嫉みも絡み合って、溜まって澱んで、そこに偶々生命力の高い生物が存在すると、それが魔物と言われる物へと()()していくのね。所謂、適応化ね」


メグミの説明に頷きながら複雑な顔をするクラリスとアーディルをマルシアが見て声をかけた。


「どうかなさったのですか?」


「いいえ、先程わたくし、聖女さまにこの世の問題を解決して欲しいと願ったけれど、この世の問題を異世界の聖女さまに願っている時点で、それが瘴気にならないか、と思って。結局、聖教会の卑しき者共と同じ他責思考、他人任せ、このままじゃ、いくら聖女さまに祓って貰っても結局いつかは瘴気に飲み込まれてしまうのではないか、とね」

クラリスが暗い顔をしてそう言えば、


「ええ。わたくしも国の再建なぞ、その国の者が行って然るべきこと。況してや聖女さまがスタンピートを起こした訳でもないのに、当然のように再建を願うなぞ、自分の性根の卑しさを思い知ったわ」

アーディルもそう言って悲しげに眉を下げた。


「で、あるならば、やはり過ぎた聖女の魔力は必要ないな。聖女の祝福を受けた血を尊び、と言うと良く聞こえるが、今までのように血脈主義を繰り返す要因となる。


時が過ぎればまた、同じように異世界から聖女を呼ぼうと考える者も出てくるだろうしな。お前たちは元来の魔力で各々暮らせ。その中で歩んでいくしか無い。


そのうち魔力の無い者が多勢となる時に、どう瘴気を祓うのか、何をエネルギー体として使うのか、それを探して暮らしていくしか無いのだから。お前たち、それで良いな」

ケイトが先程告げたことを、少しだけわかりやすく言い換えて聖巫女たちに諭した。


クラリスとアーディルは為政者として、聖女からの祝福を手放すことが国家運営上のマイナスになることを葛藤しながらも飲み込んで、了承の意を告げ、マルシアに至っては、

「私は元の平民に戻るし、島々の生活に必要な魔力は当面残るのなら問題ないです」

と、満面の笑みで答えた。


「元の魔力は残ると。まあ、私も異論は無い」

ペトラはこの大陸で一番の魔力の持ち主であり、元々教皇をも凌ぐ魔術師であったし、寧ろ魔力が無くなってしまっても良いと思ってたので、納得いった感じではないけれども、反対はしなかった。


「ねえ、ペトラ。あなた何度も魔力の無い世界をと希望しているけれど、それはどうして?この魔力偏重な世界はあなたにとってはとても有利な世界でしょ?」

メグミの質問に、ペトラはグワッと目を見開いて、


「魔力の多い少ないで人の扱いが変わるのは不平等。何かの努力で得られる物でもないのに、有ればあったで利用され、無ければ無いで蔑まれ。ただ運に自分の身を委ねるなんて我慢できない。魔力が、魔法が無ければみな実力で判断される世界になるんじゃないだろうか?」

捲し立てるようにメグミに質問で返した。


「それはどうかな?私の居た世界は魔力も魔法も無い世界だったけれど、やっぱり運に左右されることは多かったよ。どこの家に生まれるか、親ガチャなんて呼ばれたりね。


親だけじゃない、背が高い、顔が良い、力が強いとか人は各々違うから、平等不平等ってなんだろうね。


ただ、努力してそれを乗り越えることも出来るし、それは魔力が有っても無くてもじゃない?

運だってただ待ってるだけより、自ら掴みにいかなきゃ、運を逃すことだってあるんだし。


グスタフなんかは、魔力の無い辺境の村人だったのに、今は国王でしょ?逆に旧王家は断絶してしまったし。持っているスキルを生かすも殺すも本人次第。それに拘らない方が良くない?」

メグミの答えに、ペトラはグヌヌと唸りながらも、ウンと首肯した。


「さて最後にタバタ。あなたの願いは決まった?」

ちょっと離れた所で成りゆきを見守っていたタバタにメグミが声をかけた。


「その前に、メグ様。メグ様と初代様はこの後どうなるのですか?魂が一つになるとは?」

タバタは不安そうな翠の瞳をメグミに向けて尋ねた。


その問い掛けに他の聖巫女たちもハッとして二人に目を向けた。


「うーんとね。ここ、白いこの空間は、時間の流れから取り残された場所でね。どう言った理由かはわからないのだけど、ここに大きな裂け目があって、それが以前の瘴気の渓谷と呼ばれた場所でね、一方的にあなたたちの世界に瘴気、私の世界の悪気がね、流れ込んでいたの。


それによって、あなたたちの世界は汚泥の溜まった池のように濁って暮らせる場所も無くなってしまった。


それを私が召喚されてから少しずつ浄化して行って、瘴気の渓谷、裂け目をケイトが結界で囲って、この空間を創ったのよ。私の世界の瘴気は私の世界へ、こちらの世界の瘴気はこちらの世界へと、魔力の蓋をしたの。この空間が、魔力の蓋の部分ね。


今までは独りでここで佇んでいたケイトの魂に、私の魔力、意識かな、まあ魂をね、融合してこの場を一緒に守っていこうと。彼と永遠に」

メグミの目は、ほの暗く輝いて、それは背中がゾクリと寒くなるようなものだった。


「メグ様、良いように守るとか言ってますけど、それって魂の輪廻から外れた、地獄の罰のことですよ。それってメグ様も初代様も永遠に救われない」

タバタが少ない聖教の教えを思い出して、声を震わせて言った。


「おれは罪人(ケイト)だ。多くの者を見殺しにしてきたのだから」

「私だって咎人よ。自分のことばかりで、最期まで逃げてここまで来たのだから」

二人は肩を抱き寄せ、寄り添いながら、ハイライトの無い目でお互いを見つめていた。



「いや、いやいやいやいや、イヤー無いですよ!


メグ様、そう言うメリバとか全く求めて無いですから、誰も。

自己犠牲?献身?そう言うのに購って来たじゃないですか。


あなた『悩んだらランニング困ったらスクワット』の人でしょ?急になんかヤンデレエンドみたいなの止めてくださいよ」

タバタの叫び声が広い空間に響き渡る。


「私の願いを叶えて貰いますよ、メグ様。良いですか耳かっぽじって良~く聞いてくださいよ」


『私はもう一度私の人生をやり直したい!』


タバタの願いに、その場のみんなの視線が重なり、驚きの表情で固まった。


「わたしは、タバタメグミ16才。あなたが召喚されてやって来た時に切り離された半身、そうですよね?メグ様、いやメグミ」


タバタが腰に手を当ててフンスと鼻息荒くメグミに眼を飛ばした。


その顔つきは、JKギャル時代を彷彿とさせるものであった。




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