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戦う聖女さま  作者: 有栖 多于佳


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エピソード18 婚約破棄を告げられた伯爵聖令嬢 その2

耳鳴りが更に酷くなり、ペトラは眉を潜めて、手で耳を塞いだ。


「その姿、とても国母に相応しいとは言えない。やはり、出自を問わずには居られぬ振るまいだな。ペトラ、君は確かに聖巫女ではあるが、この国の王太子妃、未来の王妃にはとても相応しいとは言えない。


その点、やはり代々公爵家で淑女教育を受けてきた生粋の令嬢であるダニエラであれば、聖教国や他国の王族との外交的付き合いも国内貴族たちとの社交も任せられる。


であるから、君との婚約はここに破棄して、新たにダニエラ公爵令嬢と再婚約を宣言する」


未来の国王としての堂々たる宣言である、周りの貴族たちも訳知り顔で拍手をしているのは、既に公爵家が根回しをしているからなのだろう。


ペトラは自身が望んだ訳でも無い婚約を、一方的に公衆の面前で破棄されたことは面白い話では無いが、同じ王宮に住みながらも自分とは一切交流を持たず、幼なじみのダニエラとは仲良く過ごしていると言う噂を何年も聞いてきたので、いつか婚約解消されるだろうと予想していたので、悲しむ気持ちも起きなかった。


ただ、何時までも治まらない耳鳴りで酷く気分が悪くなったので、目を細めて片方の唇を上げたひきつった笑顔を見せ、

「そうですか、では私はこれでお役目御免と言うことで。これにて御前失礼」

と言うと、魔法で突風を起こして、それに乗って、正に風のように過ぎ去ったのだった。


その最大出力の魔法はまるで竜巻被害にあったように壁や屋根を夜空高く巻き上げて、王宮の広間は大惨事になり、そこにいた王族貴族の悲鳴や絶叫が響き渡ったのだが、ペトラはそ知らぬこと。


ペトロは風に乗り、強い魔力を感じた場所へと向かった。


近場では、高台にある王宮から下った市街地を抜けた目と鼻の先にあるレカリーヌ河口にある船着き場から数えられない程多くの瘴気の塊、魔物の気配を感じ取り、急いだ。


港に停泊中の聖教国の動力船から、毒蛇やら毒蜂やら毒百足やら不気味な昆虫の魔物が、次から次へと這い出てきて港で作業していた人足たちを捕獲し喰い散らかしていた。


一目散に逃げる人、人、人、その津波のように迫りくる人と追う魔物たちが下町へ、平民街へ、貴族街へと凄い早さで襲いかかり、誰かが退治をしようと点けた火も家々を焼いて大火事となり、大惨事となっていた。


ペトラは一人、人と魔物の流れに逆らって、結界魔法で魔物で次々に捕獲して、ある程度まとまったら火にくべて燃やして屠って歩いた。

何時間も喰われそうな人を助けながら捕縛と焼却を繰り返したが、それでも数が多すぎて、全部を捕えることは出来なかった。


ペトラの目を掻い潜って逃げた魔物たちはどんどん高台へと進んで、先ほど壁と屋根を失くした無防備な王宮だった場所に押し入った。


自分のことは棚にあげて、ペトラの暴挙に憤慨していた王太子アシュレや王族、貴族たちは、乱入してきた初めて対面した魔物に悲鳴をあげて逃げ惑うだけで、魔法で対処することも出来なかったから多くの人が喰われた。


「ペトラはどこだ!?聖巫女に魔物を駆除させろ!王族を避難させろ!」

国王が近衛に大声で指示を出し、誘導されて王族の秘密通路へと自分達だけ入って逃げた。

街でも王宮でも多くの王国民が魔物に喰われて死んでいるのに、魔力を誇る王族は何も手を打たない姿をそこにいた多くの者が目撃した。


そこに、今度は熱風の竜巻に乗って戻ってきたペトラが、その熱風の渦を虫取り網の様に左右に振って、蛇や蜂や百足の姿をした魔物を捕獲して焼却して回り、一人で奮闘していた。


その内、魔法の使える貴族や騎士たちがそれぞれ散らばって、剣や槍で刺し殺したり、水攻め火攻めで殺したりと魔物を倒す要領を得て、自主的にペトラの援護をして歩いた。


夜が明ける頃、王都を襲った魔物の群れを殲滅し、光の魔法で傷ついた人々を癒して回り、多くの被害を出しながらも一応の終息を見た。


ぼろぼろなドレスに煤まみれの令嬢とは思えぬ姿ながら、ピンクブロンドの髪を風に靡かせ、空色の瞳を朝日に輝かせたペトラは美しかった。

そこにいた者たちは、確かにペトロに聖女の姿を重ね見て、自然と膝を突いて謝意を告げたのだった。


その時と同じ頃、王宮の秘密通路から逃げ出したイースランド王家の者たちは、地下水路に置いてあった動力船でレカリーヌ河を遡って、聖教国へと国を見捨てて逃げ延びたのだった。


その日から、イースランド王国はあちらこちらで魔物が出現し続けた。

指揮を取る筈の王族は居なくなり、ペトラに勝ると婚約者に夜会で指名されたダニエラ公爵令嬢も自宅の屋敷に籠ったまま。


戦闘服を着て、広い草原を馬に乗り駆け回って魔物を倒すのは、ペトラ率いる自警団たちだった。


耳鳴りは相変わらず続いていたペトラは、風に乗り、一番魔力の強く感じる場所を目指して進んだ。


東へ東へと進むと、見かけた村の全てが魔物に荒らされていて、どこもかしこも酷い有り様で、踏まれ喰われた人の亡骸が山と積まれていた。

それを痛ましい目で見ながらも先を進み、向かった先は、イースランド東の端にある断崖絶壁に建っている神殿だった。


禍々しい瘴気の渦が蜷局を巻いている様に見えた。


その中へ入って行こうとするペトラは突然手を引かれた。


「危ないかもしれないだろう、一人で勝手に進むな」

2メーターもあろうかと言うほどの大柄な茶色い髪と瞳の男が焦って怒鳴った。


「ええ、この底は危ないわね、だからグスタフはここで待っていて」

バシっと掴まれていた手を払って、ペトラが軽く言い捨てた。


「バカ野郎、危険な場所に女だけ行かせる男がいるか!俺が先に行くからペトラは俺の後ろに隠れていろ」

背の小さなペトロの目線に合わせて身を縮めてそう言い聞かせたが、ペトラは如何にも癒そうに眉を潜めて


「無理だよ、グスタフじゃ対処できないはず。この神殿の扉を開けた瞬間から魔物が飛び出してくるよ」

ため息混じりでそう言い返した。


このグスタフと言う男、あの王都を魔物が襲った晩、港で荷積みをしていた人足で、毒蜂の群れに囲まれて刺されて死にかけている所をペトラに助けられ、治癒されたことに恩義を感じて、勝手にペトロの魔物退治に参加するようになったのだ。


同じような男たちが、貴族の男や騎士や船乗りや農夫や猟師やと集まって、ペトラ自警団となったので、普段は馬で魔物退治に駆け回っていたのだが、今回は遠くまで急ぎ向かいたい状況だったので魔法で風に乗って一人で魔力探知をしながら向かおうと、そっと抜け出した所を待ち受けたこの男に捕獲され背負われたので、しょうがなく背負った男と共に風に乗ってやって来たのだ。


「いいか、俺が扉を開けるから、その瞬間あの魔法の網で飛び出してきた魔物を捕まえてくれ、いくぞ、せーの」

グスタフが一方的に作戦を告げ掛け声をかけた。


やはり、多くの魔物が飛び出してきた、それも王都に出た魔物の比では無い種類の、バトルラビットだの大猪だのシルバーウルフだのと言った、大型魔獣が数十頭も。

それを魔力の網で飛び出さないように捕まえといて、グスタフが長い槍で端から脳天を刺して屠っていった。

魔物の群れを撃ち終え、ペトラが魔法を止めるとグスタフが扉の中を慎重に確認してから二人で地下へと続く階段を下りて行った。


階段の踊り場毎に魔物に殺された神官が倒れていた。

最下層まであと数十歩と言う所まで来ると、あのキーンと言う金属音にも似た悲鳴が響いていた。


「え、この鳴き声!なぜこんな神殿の地下に!?」

神殿地下の大広間の床一面に描かれた大きな魔方陣の真ん中には、大きな十字架に魔力の鎖で磔にされたコカトリス、雄鶏に竜の羽と蛇の尾を持つ大魔獣が、毒素を吐き散らしながら鳴き叫んでいた。


魔方陣の周りには上位神官服を纏った男たちがコカトリスの毒素に殺られて、焼け爛れた姿で倒れていた。


ペトラを背に庇うグスタフと自分に結界魔法をかけて、大魔獣の前に進んだ。

この悲鳴に共鳴して、コカトリスを磔にした十字架の根本に山盛られた魔石は黒紫に変色した物から魔物が生まれているのを見た。

それは、産卵された卵が孵って雛が生まれるようであった。

魔方陣はコカトリスの悲鳴に共鳴するように淡く光り、魔石に魔力を送っているようだった。


「おい、不味いぞ。あの大量な魔石が全て魔物に変わるのなら流石に俺たちの手に負えない」

グスタフの背中が緊張で張りつめているのが見て取れた。


「大丈夫」

ペトラは最大値の魔力を、魔方陣に叩き込み、それをぶっ壊した。

バリン、バリンと大きな厚いガラスが割れるような音がして、魔方陣の光が消えると、コカトリスを縛っていた鎖が解け、十字架も崩壊した。


ギャオーン!

大きな咆哮をあげて、コカトリスは光の粒になって消えていった。


「なんだありゃ!?どうなってんだ」

グスタフが魔石の山を手に取りながら、コカトリスが居た場所を探った。


ペトロも魔石を手に取って、その魔力を探り、そして

「ここは聖教会が魔物から魔力を搾り取ってた、言わば魔力工場、魔力発電所と言ったところかしら」

そう答えた。


「何だって!じゃあ、今回の魔物の大量発生は教会の仕業なのか」

グスタフが怖い顔でペトラに聞いた。


「教会の不手際と、イースランド王家も関わって居るのでしょうね、だからこそ、いち早く国を捨てて逃げ出したのでしょう」

ペトラは唾棄するように言い捨てた。


その後、コカトリスが倒されたと聞いて、戻ってきた王族を捕えて、序に王太子の婚約者ダニエラとその生家一族も、イースランド王国に住んでいる教会関係者も全員、自警団を掌握し新生イースランド王国軍と名のった、所謂クーデター軍によって捕縛され、白日の下にさらされたのだった。


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