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11 さくらの覚悟とまふゆの涙 

 町中では、さくらと來華、まふゆ、ナツ、戦闘モードのコアちゃんが、邪悪な顔つきのヴァンパイアに変貌した大勢の住民に囲まれていた。住民はどんどん周囲に集まっており、その数はすでに数万人に達していた。

 さくらが住民たちに警戒しながら、來華たちに言った。

「どうする? この人たちを傷つけることはできないよ!」

 來華がさくらたちに言った。

「闘わずにこの場を離れた方がいいんじゃ!」

 ナツが冷や汗を流しながら、冷静な声で言った。

「いや、合理的に考えて、こいつらをこのままにしておいたら、この状況が町の周囲にも広がって対処不能になるぞ。客観的に考えて、数日でこの国は終わりを迎える」

 重苦しい沈黙がその場を支配したが、まふゆが沈黙を破って口を開いた。

「あたしの冷凍の術なら、傷つけずにこいつらの動きを止められるよ。こんな大勢を止めるのは無理かもしれないけど、今はそれをやるしかない! できるだけたくさんの住民の動きを止めて、もみじさんと合流して抜本的な対策を考えよう」

 さくらが緊張の表情に笑顔を浮かべて力強く言った。

「じゃあ、みんなでまふゆさんを援護しよう!」


 その時、ヴァンパイアになった河童(かわわらわ)が住民たちに向かって叫んだ。

「あいつらの生き血を飲み尽くすぞーっ! 早い者勝ちだーっ!」

 ヴァンパイアと化した何万人という住民たちが、口々に雄叫びを上げながら、一斉にさくらたちの方に向かって駆け出した。


 ヴァンパイアになった住民たちが迫る先で、コアちゃんが「ぎゃはははーっ!」と高笑いをしながら、突然空に飛び立った。その右腕にはさくら、左腕にはまふゆを抱きかかえ、背中には來華がしがみついていた。

 住民たちは足を止めて、地上二十メートルで滞空するコアちゃんを見上げたが、ヴァンパイアになった美来が、近くにあった大型バイクのハンドルを掴むと、コアちゃんに向かって軽々と放り投げ、大型バイクは高さ十五メートルに達すると勢いを失って落下し、轟音を立てて道路に激突した。

 その様子を見たヴァンパイアになった河童(かわわらわ)とじーさんは、両掌をコアちゃんに向け、河童(かわわらわ)が薄笑いを浮かべた。

「空に逃げたって、さっきみたいに水の噴射で叩き落してやるぜ!」


「古より時節の移ろいを司る青朱白玄之尊しょうすはくげんのみことよ! その御力(みちから)を宿し給え! 灼熱之槍!」

 一人地上に残って身を低くしていたナツは、灼熱之槍を出現させると、朱い炎に包まれた穂先を横に振って、河童(かわわらわ)とじーさんの両前腕を狙った。

「おっと、危ねぇ!」

 河童(かわわらわ)とじーさんは後ろに大きく下がって灼熱之槍をかわし、その三メートル先でナツが灼熱之槍を構えた。

「お前らには、まふゆの邪魔はさせない! 俺がお前たちの相手をしてやる!」

 じーさんは邪悪な笑みを浮かべてナツに言った。

「そいつは嬉しいねぇ。俺は、手に入れたばかりのこの魔物の体の能力を試してみたかったんだ。お前をいたぶり抜いて試すことにするよ。ついでにお前の生き血を一滴残らず飲み干してやる。俺は腹ペコなんだ」

 ナツの背後に大勢いるヴァンパイアになった住民たちが、ナツの存在に気づき、ナツに近づこうとした。

「お前たちは手を出すなーっ!」

 河童(かわわらわ)が、ヴァンパイアになった住民たちを恫喝し、じーさんが続けて言った。

「こいつは俺たちの獲物だ。お前たちは最下級の眷属だ。俺たちの命令に従え」

 ナツの背後のヴァンパイアたちは、不服そうな表情を浮かべながら、飛び去っていくコアちゃんに目を向けた。


「古より時節の移ろいを司りし青朱(しょうす)白玄之尊(はくげんのみこと)よ! その御力(みちから)を宿し給え! 凍結之玄光!」 

 まふゆはコアちゃんに抱えられながら、右手の人差し指と中指の先から玄色の光線を連続して放ち、地表で自分たちを見上げる住民たちを次々と凍らせていった。

 來華が遠くを見つめて叫んだ。

「さくら、あっちじゃ。商店街を歩いてこっちに来る奴らが、一番大人数で集まってるんじゃ! 今は一人でも多くの住民を凍らせるんじゃ!」

「コアちゃん、住民の流れに沿って、商店街に向かって!」

「ぎゃはははーっ! コアちゃん様に任せろーっ!」

 さくらの命令を受けたコアちゃんは商店街に向かって飛び、まふゆは下にいるヴァンパイアと化した群衆を次々と凍らせていった。


 コアちゃんが離れていく様子を見上げていた住民たちは一斉にニヤリと笑うと、空を見上げて叫び声を上げた。

「ぎゃああああああああああああああああああああっ!」

 すると、住民たちの背中から黒い液体のようなものが服を突き破って二本噴き出し、それは黒いコウモリの翼に変わった。子どもや赤ちゃんの背中からも、コウモリの翼が生えていた。

「あいつらの生き血は俺のものだあああああああああああっ!」

 ヴァンパイアと化した若い男性が、叫びながら背中の翼を羽ばたかせて空に飛び上がると、カラスのようなスピードでコアちゃんを追った。

「あいつらの生き血は、あたしのものよおおおおおおおおおおっ!」

「俺にも、あいつらの生き血をよこせえええええええええええええっ!」

 ヴァンパイアと化した数万人の住民が、叫び声を上げながら次々と飛び立ち、コアちゃんを追っていった。


「まずい! あいつら飛べるのか?」

 ナツが灼熱之槍を構えたまま、翼の羽ばたく音を響かせながら上空を覆い尽くす空飛ぶヴァンパイアの大群を愕然として見つめていた。

「どこ見てるんだーっ?」

 ヴァンパイアと化した河童(かわわらわ)の右前蹴りがナツの腹部に命中し、ナツは呻き声を上げて五メートル吹き飛んで着地した。その直後、ヴァンパイアと化したじーさんが両掌から放出した強烈な放水がナツに命中し、ナツは叫び声を上げて三十メートル吹き飛び、背中から地面に叩きつけられた。

「死ねぇええええええええええええええええっ!」

 仰向けのナツに向かって河童(かわわらわ)が飛びかかった。その左右の手には短刀の形になった水の塊を握っており、ナツの両目を狙って振り下ろした。

「くっ!」

 ナツは灼熱之槍の柄で水の短刀を受けると、河童(かわわらわ)の腹を蹴り上げた。河童(かわわらわ)は巴投げのような形で吹き飛ばされたが、ナツの頭の先三メートルの位置で着地して水の短刀をナツに投げつけ、ナツは地面を転がってそれらを避けると、すぐに立ち上がって灼熱之槍を構えた。水の短刀はアスファルトに深々と突き刺さった直後、元の水の状態に戻って水溜りをつくった。

 ナツの背後から直径一メートルの丸い水の塊が飛んできて、ナツの背中に激突し、ナツは悲鳴を上げながら二十メートル吹き飛んだ。その背後には、ヴァンパイアと化したじーさんが両掌をナツに向けて立っており、邪悪な笑みを浮かべながら呟いた。

「この体、水を固体のような塊にする魔力を持ってるぜ」

 ヴァンパイアと化した河童(かわわらわ)は、薄笑いを浮かべながら両掌を天に向けた。

「せっかくだから、もっと凄い武器をつくってやるぜ」

 立ち上がって灼熱之槍を構えたナツは、目を見開いて愕然とした。

 ナツの視線の先では、ヴァンパイアと化した河童(かわわらわ)が水でできた巨大過ぎる刀の柄を両手で掴んでおり、その刃の長さは十メートルあった。

「さあ、こいつでお前の首を刎ねてやるぜ。切断面から噴き出る生き血を体中に浴びながら飲んでやるぜ」

 ナツの表情に不安と緊張が走り、頬には冷や汗が流れた。

『こいつら、フィジカルも魔力も相当強い。客観的に考えて、俺が生き残れる可能性は極めて低い……』


「さっきから何の音じゃ?」

 空飛ぶコアちゃんの背中につかまっていた來華は、背後に聞こえるとんでもない数の翼の羽ばたき音を不審に思い、振り返った瞬間に目を見張った。

 コアちゃんの背後では、数万人のヴァンパイアと化した住民たちが背中に生えた翼で飛んでおり、來華たちの方に迫っていた。

「さくら、まふゆ! とんでもない数の魔物になった住民たちが、空を飛んで追ってくるんじゃ!」

「何っ?」

 まふゆとさくらも、背後に迫るヴァンパイアと化した住民の巨大な壁のような大群を目にし、表情が凍りついた。

「さくら、どうやら後ろだけじゃないようだぜ!」

 さくらたちは、緊張した表情のコアちゃんが見つめる進行方向を見た瞬間、再び表情が凍りついた。 

 前方からも、コウモリの翼を生やしたヴァンパイアの大群が、次々と地面から飛び立ってこちらに向かっており、真下の道路を歩いていた住民たちも、叫び声を上げてコウモリの翼を出現させ、翼を羽ばたかせ始めていた。

「コアちゃん、真上に上昇して、あの人たちから距離を取って!」

 さくらの命令を受けたコアちゃんは、もの凄いスピードで垂直に上昇を始め、やがて地上七千メートル近い高さに浮かぶひつじ雲と呼ばれる高積雲に接近した。


 その時、白い雲の中から巨大なダンプカーが突然姿を現すと、もの凄いスピードで落下してきて、上昇するコアちゃんに迫った。

「避けられねぇええええええええええええええええーっ!」

 コアちゃんは巨大なダンプカーに衝突する寸前に、左右の腕で抱えていたまふゆとさくらを両横に投げ飛ばしたが、その直後にダンプカーに激突した。

「コアちゃん、ライちゃん!」

 空中を落下するさくらが、ダンプカーに潰されるように落下するコアちゃんと、激突の瞬間にコアちゃんと一緒に衝撃を受けて落下していく來華に向かって叫んだ。しかし、コアちゃんと來華には意識がなく、全く反応がなかった。


 まふゆは、コアちゃんを押し潰すように落下していく巨大なダンプカーを呆然として見つめた。

「な、何でこんなものが雲の中から……? はっ! 凄い呪いの力だ!」

 まふゆは何かに気づいて上を見上げ、目に映った存在に愕然とした。

「また会ったわねぇ。あなたのことを八つ裂きにして食べたいけど、今は食べる体がなくて、残念だわぁ」

 まふゆの上方に浮かび、同じスピードで降下していたのは、身長三メートルの異形の悪霊だった。その体はやせ細って首が長く、全身の皮膚は蛍光色の黄緑色の上にショッキングピンクの模様が入った鮮やかなキリン柄で、瞳のない目の色はショッキングイエロー、額から一本だけ生えているサイのような形の角の色はショッキングパープル、ショッキングオレンジの長くて鋭い爪が生えた十二本の腕が胴体のあちこちから生えていた。

 まふゆは目を見開き、冷や汗を流して叫んだ。

「旋鬼! お、お前、悪霊に堕ちたのか?」

 悪霊と化した旋鬼は、ニヤリと笑って言った。

「当たり前よぉ。あたしの魂はあなたたちへの恨みと憎しみで、呪いの力に支配されて悪霊になったのよぉ。あたしだけじゃないわぁ。地下王国があった場所には、あの時あなたたちのせいで命を失った鬼たちが、悪霊になって蠢いてるのよぉ」

 まふゆはあることに気づき、旋鬼に向かって叫んだ。

「呪いの力でポルターガイスト現象を起こして、あたしたちを狙っていたのはお前だったのかーっ?」

 旋鬼はニヤリと笑った。

「そうよぉ。今までは身につけた呪いの力を試すために本気じゃなかったけど、今は本気で殺してあげるわぁ! でも、凄いでしょぉ? 呪いの力であの大きな金属の塊を雲の上まで運ぶこともできるのよぉ!」


「古より月を司りし月光(つきみつ)照之命(てらすのみこと)よ! その御力(みちから)を宿し給え! 天女之羽衣!」

 離魂之術で肉体を離れていたさくらの魂がそう叫ぶと、周囲が暗くなって上空に満月が輝き、さくらの魂は長い領巾(ひれ)をなびかせた天女の姿に変わった。

「まふゆさああああああああああああん!」

 さくらは叫びながら、まふゆの真下に右側の領巾(ひれ)を長く伸ばし、まふゆは領巾(ひれ)の上に左足と右膝をついて着地した。

 旋鬼は気を失って落下している來華のそばまで飛んで行くと、來華と一緒にその位置で滞空し、さくらも領巾(ひれ)の先のまふゆとともに落下をやめて、空中で静止した。

 旋鬼は楽しそうに笑いながら口を開いた。

「本当に呪いの力ってのは、凄いものなのよぉ。こうやって触れることなく、この魔物の嬢ちゃんの体を空中で静止させることができるんだからねぇ。あたしの今の目的がわかるかい? あたしはこの魔物の嬢ちゃんの体と魔力を貰うのさ。あたしはこの新しい体を使って生き返るのよぉ!」

「そんな!」

 さくらとまふゆは、旋鬼の言葉を聞いて愕然とした。


 その時、下の方から大勢の叫ぶ声と翼の羽ばたき音が微かに聞こえてきた。さくらとまふゆが下に目を向けると、五千メートル下では、空飛ぶヴァンパイアと化した数万人の人々が口々に叫び声を上げながら密集し、巨大な雲のような大群になってこちらに向かって上昇していた。

「人間だあああああああっ! 生き血を吸わせろおおおおおおおおおおっ!」

「あの人間どもの生き血は、俺のもんだああああああああああああああっ!」

「一人こっちに落ちてくるぞーっ! 生き血を全部飲み干してやるーっ!」

 天女姿のさくらの魂から半径三百メートルの空間は、内部が満月の輝く夜空になっており、魂が抜けたさくらの体はすでに夜空の空間を突き抜けて、ヴァンパイアの大群に向かってもの凄いスピードで青空を落下しており、さくらはどんどん視界から遠ざかっていく自分の体を見た瞬間、目を見張って叫び声を上げた。

「あたしの体が!」

「さくらーっ! 早くお前の体を助けるんだーっ! 急げーっ!」

 まふゆはさくらに向かって叫んだが、さくらはヴァンパイアと化した住民の大群に向かって落ちていく自分の体を焦燥感と戦いながら見つめ続け、やがて何かを決意した力強い表情で顔を上げると、まふゆに真っ直ぐな眼差しを向けた。

「まふゆさん! あたしの体よりもライちゃんを助けて!」

「な、何言ってんだよーっ? さくら、体を失ったら死ぬんだぞーっ!」

 まふゆはさくらの言葉に驚愕して叫んだ。

 さくらは悲しみと寂しさと強い決意が入り混じった表情で、まふゆを真っ直ぐ見つめた。

「わかってるよ……。あたしが体と命と人生を失うことになることくらい、わかってる……。でも……、ライちゃんを犠牲にして生き残ったら、あたしは絶対に一生後悔する! あたしは後悔することがない道を選んで、全力を尽くしたいの! あたしのおとーさんとおかーさんは、あたしのせいでいなくなった! あんなに後悔するようなことは、絶対に二度としたくない!」

 さくらはキラキラと煌めく涙を溢しながら叫び、その目には揺るぐことがない強い決意が満ちていた。


 さくらを見つめるまふゆの目に涙が滲み、まふゆは俯いて体を震わせた。

 やがてまふゆは顔を上げ、涙を散らして旋鬼の方を振り向くと、決意を固めた力強い瞳を向けた。

「古より時節の移ろいを司りし青朱(しょうす)白玄之尊(はくげんのみこと)よ! その御力(みちから)を宿し給え! 凍結之玄光ーっ!」 

 まふゆの右の人差し指と中指から発射された玄色の光線が、旋鬼の腹部に命中したが、光線は薄ら笑いを浮かべている旋鬼の体を通り抜けた。

「無駄よぉ! 今のあたしの体は物質じゃなくて魂なんだから、凍ったりしないのよぉ! あの時、あなたが温羅(おんら)様の魂を凍らせた忌々しい術を見たけど、あの術は地面がないと遣えないんじゃないのぉ? 打つ手がないわねぇ! ふふふ……」

 旋鬼はまふゆを嘲笑し、さくらはその隙に來華に向かって左の領巾(ひれ)を伸ばして來華の体に巻きつけようとした。

「おおっと! この魔物の嬢ちゃんは渡さないわよぉ! さっさとこの体をいただくことにするわぁ!」

 悪霊と化した旋鬼は、触れることなく來華の体を二メートル浮上させて領巾(ひれ)から遠ざけると、冷笑を浮かべながら來華の体に吸い込まれるように入っていき、さくらとまふゆは呆然としてその光景を見つめた。


 來華の両目が突然開くと、その全身が鳴り響く雷鳴とともに雷の塊に包まれ、その雷が消えた時、來華の容貌は大きく変わっていた。逆立つ髪は、蛍光色の黄緑色とショッキングピンクのツートンになり、つり上がった目の中の瞳はショッキングイエロー、耳は鬼族特有のキリンのような長く尖った形に変わっていた。

「最高の気分よぉ! あたしの魂に満ちている呪いの力と、この体に漲っている魔力が入り混じっていくわぁ! 早速この力を試そうかしらぁ?」

 旋鬼が支配する來華が、両掌をそれぞれさくらとまふゆに向けた。

「強力で、多様な現象を引き起こす魔力と、魂にまで作用して影響を与える呪いの力を合わせて使うわよぉ!」

 旋鬼が支配する來華の掌から黒い咒靈力(じゅれいりょく)と雷が同時に発生し、つむじ風のように回転しながらさくらとまふゆを目がけて伸びていった。さくらは、まふゆが片膝立ちをしている領巾(ひれ)とともに下降してそれを避けた。

「呪いの力って、塊にすると魂を殴れるって知ってたかしらぁ?」

 いつの間にか、旋鬼が支配する來華がさくらの背後で冷笑を浮かべており、その両手は黒い咒靈力(じゅれいりょく)の塊で覆われていた。旋鬼が支配する來華が、ハッとして振り向いたさくらの左顎を咒靈力(じゅれいりょく)で覆われた右の拳で殴り、さくらは悲鳴を上げて落下し、まふゆも領巾(ひれ)から放り出されて悲鳴を上げながら墜落していった。

「きゃああああああああああああああああああああっ!」

「うわああああああああああああああああああああっ!」

 旋鬼が支配する來華は、見る見る落下していくさくらとまふゆを見下ろしながら、凶悪そうな表情を浮かべて笑った。

「あたしに殺されるのと、地面に激突して体中がぐちゃぐちゃになって飛び散るのと、どっちが先かしらねぇ。でも、どっちにしても、最後にはこの手で魂を消滅させてあげるわぁ。ふふふ……」

 旋鬼が支配する來華は、領巾(ひれ)をなびかせて落ちていくさくらの魂を追って、空を飛んで降下していった。


 その頃、魂を失ったさくらの体は、ヴァンパイアと化して背中の翼で上昇する何万人という町の住民たちに向かって落下していた。

「あの女の生き血は俺がもらうぞーっ!」

「誰が渡すかーっ! あの女の生き血は、体が干からびるまで俺が全部飲み尽くすんだーっ!」

「それなら、あの女の体をバラバラにしてみんなで分けようぜーっ!」

「それなら、心臓は俺によこせーっ!」

「俺は脳みそが欲しいぞーっ!」

 ヴァンパイアたちは邪悪な顔で口々に叫びながら、我先にとさくらの体に向かって群がっていき、次々とさくらの体に向かって手を伸ばしていった。

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