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■2-6 @放課後の教室

六限目終了から数十秒のタイムラグの後、校舎にチャイムが鳴り響く。

「はー。やっと一日終わった。三時までが長い長い」

椅子の上で大袈裟に身体を反らしてみる。

「久しぶりに授業フルタイムで受けましたからね」

北条もそれに同調するが、

「フルタイムじゃないですって、二人とも一限目いなかったじゃないですか」

タダミナに痛いところを突っ込まれてしまった。

これには北条も苦笑い。


「まぁ。そういうなよ。俺たちの中では、遅れてきて帰らなかっただけ殊勲賞ものなんだから」

「ちょとー。一緒にしないでくださいよぉ」

なぜか北条は不満気だった。

「え?そこって引っかかるトコロ?同じ遅刻した同志じゃないか。ってゆーか、俺の方が早くに遅刻したし」

「何の自慢ですか、それ!」

北条に肩をはたかれた。

「あはは。それじゃあ北条さんに小早川さん、また明日、お会いしましょう」

タダミナはこれからバスケ部での活動がある。

「おうよ。じゃあな」

「頑張ってね!二年のホープ!」

礼義正しくお辞儀をしてタダミナは退室していった。

やはり体育会系はいい。

因みに新田は授業終了と同時に教室を飛び出していった。

新しく入った部活にはかなり厳しい先輩がいるらしい。


「放課後って、もっとワイワイしてたと思ってたんだが、ずいぶん人が減ったな」

「みんな部活とか忙しいんですよ、新歓の時期ですしね」

教室に残っているのは三分の一程度である。さらに俺たちのように席に残っているのは数える程だ。

「北条はどっか入らないの?」

「入らないです。なんかそんなバイタリティーないです。だから部活入ってる人はそれだけで尊敬です。」

北条は机の上のバッグに顔をうずめたグッタリ状態で応じる。

「去年はどっか入ってた?」

「帰宅部です」

さらに深くバッグに顔を埋めていく北条。

「そういう小早川さんは、どっかに所属していたんですか?」

「してたよ。部じゃなくて同好会だったけれど。キックボクシング同好会」

「きっくぼくしんぐ?」

「そう。その名の通り、ボクシングにキックを足したコンバットスポーツ」

「こんばっとすぽーつ?」

北条がばっと顔を上げた。


「そうそう。簡単に言えば格闘技だね」

「え?えーと・・・じゃ簡単に言わないと何ですか?」

「なんだよその質問。つまりは、あれだ。マーシャルアーツってことだ」

「ますます良く分からないんですけど。専門用語はナシでお願いします」

注文が多い。

「まあ、ケンカだね。ルールのあるケンカみたいなもの」

「へええええ。小早川さんってケンカするんですね」

「うん。でも君が思ってるほどバイオレンスじゃあないよ」


「蹴るんですか?」

「うん、蹴るよ」

「殴ったりします?」

「基本的には、殴るね」

「格闘技?」

「イエス」


北条は再びバッグに顔を伏せて、そしてすぐまた顔を上げた。長い金髪が暴れる。

「いやいや、バイオレンス極まりないでしょう、それ。人が集まらないのも分かりますよ」

「そっかなー、アメフトとか野球の方が怖いし、危ないと思うけど」

「で、小早川さんはそのバイオレンス同好会には戻らないんですか?」


「キックボクシング同好会な」

俺は一度言葉を切って、一息つく。

「なんとその同好会、俺のいない間に無くなっていた」

「あれま」

「もともと俺ともう一人の同級生が一年の頃に作った同好会だったから、校内の立場としては弱小も弱小だったんだけれども」

「いやいや、それで先輩居なくなったら一人だけの同好会になっちゃうじゃないですか。悲しいほどに存続は無理ですよ、それ」


「君に悲しまれても困るんだが。俺が二年になった時に新人が二人入ったんだけどねぇ。どうやら、駄目だったみたい。アイツらももう3年生。時が経つのは早いもんだ」

「へー。その後輩さんと会ったりしてるんですか?」

「なんで?」

「え。疑問形で返されても・・・」

「なんかこう、恥ずかしいっていうかさ、心の準備ができていないていうか」

「ええ?なんでいきなり乙女系男子になってるんですか」

これは良くない流れだ。バッサリと断ちましょう。


「いいんだよ、俺のことは。それより君はどっかの部に心動かされたりしないわけ」

「今も昔も変わりません。一貫して帰宅部です」

「なーんだ、つまらない青春だな」

「つ・・・つまらないって何ですか!言っておきますけどね私だって人並みにバレーや演劇に情熱を捧げたいっていう気持ちはあったんですよ」

荒ぶる北条。

「じゃあ、捧げてくれよ、その情熱をどっかに」

「それがそうもいかないんです。だから困っているんです」


「うん?」

「小早川さん。今疲れていますか?」

「そーだね。だいぶ疲れてるよ。5限と6限は特にヤバかった」

「でしょう?かく言う私も同じです。私たちって1日のバイタリティを授業だけで使ってしまう派なんですよ!」


「2年前は毎日放課後に練習していたけど・・・」

「昔の話です。もう歳ってことですよ。疲れが抜けなくなっているんです」

「分かるような、失礼極まりないような」

まあいいと言わんばかりに話を切り替える。

「それじゃあさ、もっとユルい同好会に入ってみれば?新田だって二年生になってから部活変えてるし」

「うーん。新田君は凄い行動力というか、決断力というか。フツー入れませんよ」

「グループだのなんだのが、もう構成されちゃってるから?」

「その通りです!乙女系女子の私にはちょー-っとハードルが高いですね」

「自分で言っても虚しいだけだけど」


「ああ!そうだ!」

人の話を聞かない子だ。

「なに?どんなしょーもないこと思いついたの?」

「ちょっ・・・何ですかそのテンションの低さは!」

「いや、ある程度予想がついたから」

「え?」

「アレだろ。自分たちで部を作ろうってことだろう」

「お・・・大当たり!さすが小早川さん!伊達に二十歳直前で高校生活送ってないです」

なんだこの舐めた称賛は。

「そりゃ分かるよ。その部には入部条件があるわけだ。それは俺や北条のようにブランクを持つ生徒であること。名付けて・・・」

「「留年部」」

テンションの高い声と低い声が絶妙なハーモニーを織りなした。


「・・・」

「・・・」

教室内に残るグループの楽しそうな声が良く聞こえてくる。

一方で2人の間では数秒、会話が止まった。

「北条さぁ」

沈黙を破る俺。

「はい」

「やっぱり帰宅部が一番だよな」

「ですよね」

「帰るか」

「はい、帰りましょう」

北条はスクールバッグを持って立ち上がった。

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