暗黒龍一族の村をお散歩
泊まっていけ小童。そう言われて主人公は断れなかったのです。というわけで1週間ほどスローライフ生活開始。今週いっぱいは筆を進めて連日投稿頑張ります。
ポチャンッ。水音が弾ける。水面に波紋は広がり、徐々に広がっていく。サラサラと涼しげな風がおれの髪を優しく通りぬける。
「ああ・・・。平和ですねえ。」
「この地には危険なんてないのじゃ。我らが強すぎて我らに害なす存在から逃げて行ってくれるんじゃよ。フォッホッホホ!!!!!!!!」
長老さん。。。あなたその強さでこんなに脆弱な存在のおれにも気兼ねなく接してくれるなんて、なんてできたお方なのだろう。ああ・・・。おれも暗黒龍になりたかったよ。
「いいか小童。心が揺れておるのう。ほら・・・。魚が近づいてきた。落ち着いて魚影の動きを予測して。いまじゃ!」
「え???」
「ええい。なぜ飛び込んで魚を捉えて来ないのじゃ?」
釣り糸たらしているのに湖に飛び込んで生け捕りチャレンジしないとダメなの? え? おれなんか勘違いしてた? 釣りってなんだっけ?
「ふむ・・・。仕方ない。ここは見本を見せてやろう。フンッ」
長老が殺気を放つと先ほどの魚の内蔵が弾けプカプカと水面まで浮いてきた。ズルいぜ長老さま。
「逃げれると思うてか。フンッ。お主も執念が足りぬぞ小童。仕留めると決めた獲物は死んでも食らいつけ。」
「精進致します。長老さま。」
惑星に転生っていうか憑依したおれ、昨日は邪龍一族とお茶会をし、今日は澄んだ青空のもと長老さま(ご隠居さま)と一緒に湖にでのんびり釣りをしています。いや・・・。なんでだよっておれも思うよ!? でも誘われて断ったら惑星破壊するかもしれないじゃん。(特に根拠はないけど)おれの異世界憑依物語はまだ始まったばかりなのだ。
いっときの我慢でおれの明日からの星生を不意にしてたまるかってんだヒャッハー! ま、まずいこれがカリスマ性からの影響力なのだろうか。おれもどうやら脳筋の素質があったようである。解せぬ。
デストピア世界のみんなには悪いがな、おれは惑星の事情でしばらく暗黒龍一族の里で1週間ほど滞在することになった。名も顔も知らぬひとたちよ。いつか・・・。必ず生きて(?)ここを脱出し助けにいくからな(?)待っていてくれ。
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龍一族の里で安宿に素泊まりし、おれは勝手に里を抜け出し暗黒龍一族に癇癪を起こされては敵わないので意識体だけシン・オリンピアへと向かわせた。
流石にチートすぎるとは思うが、クレームは受け付けていない。身体にいくつもの怒らせたら即死ボタンがおれの油断を虎視眈々と狙っているのである。こんな身体今のところデメリットしかないのでは?
さすが憑依体と言うべきだろうか。物理的な制限もなくおれはなぜか身体が覚えているようだ。まわりの星々の輝きがまるで線のように感じる。よくSF映画などでのお馴染みのワープ飛行のようでもあるが。システムの自動音声によると厳密には違うらしい。なにがどんだけ違うのか長々とした雑学を語ろうとする奴をミュートで黙らせ、おれは先を急いだのだった。
思ったより近かったのか。それともおれの移動速度が早すぎたのか。なんとかたどり着いた。遠目にでも分かる空間ごと歪んでいるようなその惑星の名は【シン・オリンピア】。
いくつもの銀河のブラックホールが凝縮されその周りは光さえも通さないような空間にぽっくりと空いた穴のような場所であった。
「初めての来館ですね。ようこそ【シン・オリンピア】へ。ここには神々のありとあらゆる知識が集う場所。ああ。そうそう、あなたは自分の惑星の情報を見聞きしにきたようで。ここでは個人情報の為お話することは出来かねますが。5分未来の私からたった今連絡が入りました。書庫707777番アルファ列の上からの3断目にあなたの求める答えはありますね。ええ。ではごゆっくり。」
礼をいいおれは漆黒の暗闇へと足を下ろした。なんせおれの体内にはいつでも気分で星を破壊できる猛者どもが安らかな眠りについているのだからな。なんとしても彼らの情報が知りたい。虎穴に入らずんば虎子を得ず。その大昔の格言に従ってみるのも悪くないだろう。なんせ悪役令嬢みたいな縦ロール少女がヒャッハー!している世界だ。死力を尽くして彼らと向き合う必要があると本能が叫んでいるのだ。
ええっとぉ・・・。方向音痴なおれにとって館内は優しい世界ではなさそうだ。目を凝らしてみれば地面は自動で前に進んでいくし、いくら無重力空間とはいえ上に左に人がたち(正確には神及びそれに準ずる存在)が各々の方向へとんで行っているのだ。まずい。これは大変まずいのだ。勝手に焦っているとミュートにしていた、システムがおれにバイブで到着を知らせる。
ごめんよ。君は素晴らしい。だがしばしの間ミュートで頼む。お礼を心の中で何度も反芻しながらおれは自動ドアをくぐりぬけた。
目の前をまるでドリルのようなサイド金髪ドリルのたぶんドリルの女神がおれの横を歩いていった。(ん?2回繰り返していってしまったかもな。だがドリルなんだ)
なんて見事なドリルなんだと関心しながら空中を浮遊し、とうとうお目当ての本を掴みとった。途端に情報が頭に流れこんできて胸焼けをした。
システムくん!? 説明頼む。
【了。この本は目視せずに自動で情報を読みとることができます。自動読機能を使用しますかYes/No?】
もちろんNoだ。脳内に入ってくる情報と処理速度が不慣れなせいで追いついていなかったからな。忘れずにもちろんシステムはミュートに。なんかすまぬ。読書せねば爆死するかもなので。
どこまでも続いてそうな本棚を平行に歩いていっておれは読書スペースを探した。どこかでゆっくり座って精読したいのだ。
突然目の前がひらけた。ここは? なんかガーデンのようで小春日和の王宮のお茶会が少人数で開かれてそうな場所である。気づけば地面は図書館では七色に光輝くマットだったのに今では大理石である。靴底の感触がスベスベである。ここを管理している管理者はさぞかしキレイ好きであるらしい。
目の前に座る男神は着物姿で鎌倉武士のような出で立ちである。寡黙な雰囲気と後ろからの後光からさっするにさぞかし立派な神なのだろう。その横で読書するのはすっごく気が引けるのだが、背に腹は代えられないのだ。おれには多分あと68時間くらいしか残されていないのだ。(魔法使ってズルして時間を何倍にも伸ばしての限界値)その時間でこの1072ページにもわたる大作から必要な情報を精査し心のメモに控えておれの星へともどらなければならないのだ。なかなかに無理ゲーである。
そっと大理石のテーブルに本をおく。おれの存在に気づいた男神が目礼をしてきた。きりっとしたイケメンである。おれも失礼がないように目礼をかえしておいた。おれのことは気にせず優雅(?)な読書を続けてほしい。
さっと身構えページをめくる。血走った目を行頭の一文に焦点を集め凝視した。
【惑星】ギブ・アース。(おれの名前である)最果ての銀河の一群所属。神々に牙をむく可能性がある問題児の戦闘種族が多数生息。神々の生息地【ユラピオン】からもっとも遠い位置に設置済み。
はっはははは!惑星の住民がそんなことするわけが・・・。いや、あったな。大ありだな。あいつら強すぎるし、なんなら銀河いくつか壊してそうな、そうでなくても破壊し尽くせる面子がそろっているではないか。まさに堂々たるメンバーである。
そりゃあ神々に恐れられて宇宙のすみっコぐらしになるわけですよ。納得しかできないよ。
他にはなんか【惑星:ギブアース】の生い立ち(生誕から現在まで)とか古の王国とか世界中の歴史が書いてあった。
特に注視するべきこのページはなかなかにおれの精神を破壊する力があるようだ。
度々宇宙からの侵略をうけ、全て万倍返しにし破壊尽くしてきた、と。惑星の住民とんでもないことやらかして!まったく!怖いから文句いう未来なんて訪れないけど!
戦闘種族怖えええ。おれが憑依する前にもしかしておれの身体【惑星:ギブアース】は破壊と再生を繰り返してきたのではないか。きっとそうだ。
ほらーーーーー!やっぱりな!おれ今まで3回は爆発を経験していると!やはり期待を裏切らないな惑星の住民は!頼むから星壊さないで。環境破壊反対ったら反対!
おれは更なる心労を抱えて帰路についた。180名の問題児の趣味趣向を頭にいれこれからは全力で媚びるのもやぶさかでない。ああ。もう2度と超新星爆発をさせてはいかんのだ。
読んでくれてありがとう♪
 




