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幻影の旅路  作者: 白夜
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第2話


 白と連絡が取れなくなって、5年が経った。

 夜明はきっと昔に戻れると励ましてくれるけど、もう私じゃ白の心を治せない。

 何か私にできたのかな、私が白と同じ学校に行っていればこうならなかったのかな。

 毎日連絡しているけど返信は来ない。

 もうだめなのかな。

「あら、彩ちゃんおかえりなさい。ごめんね、うちの子ずっと引きこもっちゃって。彩ちゃんとは大違い」

 そう話しかけてくれたのは白のお母さん、小さい時からおばさんと呼んでてよくお菓子を貰ったり、ご飯を一緒に食べたり。

 笑いながら話しているけど、おばさんの目は悲しく見えた。

 元々親子仲は悪くなく、むしろ良い方だった。

 それのせいでからかわれてたりしたけど、白は自分が馬鹿にされることよりもおばさんやおじさんを馬鹿にされることの方に怒っていた。

 1度白が相手を殴って、先生から呼び出しをされた時があった。

 その時もおばさんに対しての暴言だった。

「ん?彩〜おばさーん」

 そう手を振って、駆け寄ってきたのは夜明。

「まだ白出てこなそう?って毎回聞いてるな」

 夜明の家は両親が医者でお金持ちだった。

 それ目当てに擦り寄ってくるような人達ばっかりだった。

 けど、白が1番最初に話したのはその時流行していたゲームだった。

 夜明は表面上の付き合いに飽き飽きしていたが、白とは仲良くなれると、そう思って今でも心配している。

 私も正直お金持ちなんてどうでもいいし、3人で歩いてる時に夜明がボケて、白がつっこんで、私が笑ってる。

 それが日常だった。

 この道も3人で歩いていたなと思い出にふけっていると、涙が一筋頬を伝ってアスファルトを黒く染みさせた。

「大丈夫!?」

 すぐにおばさんが心配してくれて、ハンカチを貸してくれた。

「ごめんね、うちの子が彩ちゃん達を苦しめてるのよね。もう、忘れてくれていいのよ。彩ちゃんと夜明くんが縛られることないし」

「おばさん、それなんの冗談?さすがに笑えない。白はまた隣に立って、一緒に笑えるよ」

 夜明は普段ボケているが、その眼差しは怒りの感情が滲んでいた。

「ごめんね、でも少し本音が混ざっているのも本当よ。彩ちゃんは可愛いし、夜明くんもご実家が立派でしょ、うちの子に構うよりもって。冗談で言った訳じゃなく、私たちにとっても息子や娘みたいに思っているのよ」

 「おばさん、ごめんね。でも白の事は諦めたくない。きっと白ならまた立ち上がってくれる」

 その時私はふと白の部屋を見ると、カーテンの間から人影が見ていた。

 私はきっと白が見てくれてる、また戻ってこようとしてると思った。

「おばさん、白の部屋に行っていいかな?」

 おばさんは静かに頷いて、スリッパをふたつ出してくれた。

 階段を挙がって、白の部屋をノックした。

「白、見ててくれたんだよね?また一緒に頑張ろ?」

 そしてドアノブに触れた。

 普段だったら鍵が閉まってて、回してもドアが開くことは無い。

 だけど、その時はカギが閉められていなかった。

 ドアノブを回して、手前に引くとドアが開いた。

 私たちはすぐに白の部屋に入ろうとした。

 ドアを開けて部屋の中を見ると、首を吊っている白の姿があった。

 私は取り乱して白の身体に触ろうとした。

「触らないで!」

 夜明の声にビクッとして、私は止まる。

「もう死んでから一日以上経ってる。救急車と警察を呼ぼう」

 すぐにおばさんに夜明は説明した。

 おばさんは涙を流しながら顔を覆う。

 その連絡を受けて白のお父さんも仕事からすぐに帰ってきた。

 警察と救急隊から死亡していると告げられ、事情聴取を受ける。

 私はただ放心していた。

 そんな私の隣にずっと夜明は座ってくれていた。

 そんな時、警察の人が私たちの肩を叩いた。

「彩さんと夜明さんでお間違いないですか?白さんの机の中にこのようなものがあったので」

 そう言って私たちに二通の手紙を差し出す。

 すぐに私たちは封を開けて、その手紙を読む。

 二人共に書いてることはほとんど一緒で、ずっと心配してくれたことへの感謝、私たちの幸せを願っていることが綴られていた。

 私の手紙には丸い染みがいくつもできて、夜明の手紙はすぐにしわくちゃになる。

「くそ、なんで。なんで白が」

 夜明は悔しさで、私は悲しさでただうなだれることしか出来なかった。

「ごめんね、2人共。沢山沢山支えてくれたのに。ごめんね、ごめんね」

 そうおばさんはずっと謝るだけで、私達もそんなことないと慰める。

 私たちの両親にもそのことは伝えて、翌日に葬儀が行われることが決まり、私たちは大学を休んだ。

 線香の香りに、周りの嗚咽。

 私は夜の間に涙が涸れるほど泣いて、今は悲しくても涙が出ない。

 夜明も白の両親と私のメンタルケアをずっとしてくれた。

「夜明はすごいね、私なんてただ泣くことしかしてないのに」

「俺は昨日泣き尽くした。俺よりもおじさんおばさんや彩の方が悲しいだろ」

 葬儀、火葬が終わって帰ろうとした時、2人の男性が私達に話しかけてきた。

「彩さんと夜明ですね、自分はよく白さんとオンラインでゲームしていて、時々会ったりしていたのです。お母様とも面識があったので連絡した時に、白が自殺したと聞き、今回の葬式に参列させてもらいました。お二人に白さんからの遺言を伝えます」

 『いつか現れる白は白ではない。きっと世界を照らす光となる。ずっと見守ってる』

「この言葉の真意は分かりません。ですが、その話をしたのはついこの前で、連絡したのも虫の知らせと言うやつでしょう、これだけは伝えないとと思いました。失礼します」

 その言葉にずっと泣いていなかった夜明も涙を流す。

「そんな言葉俺たちに直接伝えろよ、、、最期にお前の笑顔見たかったよ」

 また私達は白という友人を、恋をしている人を失ったことを悲しみ、泣いた。


「これで良かったのか?白夜。自分から伝えた方が良かったろうに」

 人の顔をしたマスクを剥ぎ、話す2人。

「いいよ極夜。見れただけでも嬉しかった。わがまま言ってごめん」

「そんな塩らしい白兄も珍しいし、当分これでいじれるな」

 ニシシと極夜は笑う。




「これから、日本を攻める。異論は無いな」

 それに頷く各国の首脳。


「我々はどうしたらいいのだ」

「分かりません、しかし幽玄家と名乗るものが協力したいと願い出ています。一縷の望みにかけてみませんか」

「君は娘さんがとても悲しいんでいるのだろう、直ぐに帰りなさい、この件は我々で話しておく」

 

 

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