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幻影の旅路  作者: 白夜
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第1話


 速報です、本日午後7時、幽玄白夜による無差別殺人が行われ、3人の犠牲者が発生しました。

 これにより、幽玄白夜による被害者は百人を超えました。

 この事から警察は幽玄白夜を全国指名手配し、情報を募っています。

 幽玄白夜の情報には、、、

 「嘘つき」

 涙がカーペットに滲んでいく。


 

「もう!強いよぉ、全然勝てない〜」

 そう電話の奥でパタパタと足をばたつかせている音が聞こえる。

 通話しているのは、幼なじみの彩。

 小さい時からよく遊んでいたが、彩は県内の進学校へ、俺も一緒の高校を受験したが落ちてしまい、滑り止めの高校に通っている。

 その出来事をきっかけに疎遠になる、なんてことはなく今でも通話したりして遊んでいる。

 なんなら高校が近いからと、我が家の隣に引っ越してきた。

 確かに彩の元の家と比べたら近いけど、と思っていたら彩がここがいいと言って聞かないから親が折れたそうだ。

 なんで高校変わったのにむしろ仲良くなってんだよ。

 そう思いながら、格闘ゲームで彩を圧倒する。

 これで16連勝だ。

「そろそろキャラ変えようか。」

 そう言ってキャラ選択画面に変える。

「ねぇ、(はく)。ずっと一緒にいようね?」

 そう唐突に彩が言った。

 俺はその言葉に同意することはなく、誤魔化した。

「何言ってるんだよ、ほら次やるぞ。」

 その後の彩のうんという相槌は寂しいような悲しいような声に聞こえた。

 俺と彩は中学の時からずっと付き合ってると言われ続けている。

 中学生の時には付き合ってないの?と何度も言われた。

「はよ付き合えよ」

 そう話すのは彩ともよく一緒に遊んだ、夜明(やめい)

 彩の高校にも合格していたが、俺から彩を取りたくないと言って俺の高校に来た。

 彩はあんたのことなんか眼中に無いとあっかんべーしていた。

 夜明は冗談だが、それ以外は冗談では無い。

 その空気を察して、冗談やめろよと周りを静止させることを俺も彩も何度経験してきたか。

 その度に夜明が止めたりもしていた。

 まぁ、俺も別に彩の事は嫌いでは無い、むしろ好きな方だ。

 多分、彩も同じ気持ちなんだろう。

 だけど、俺は彩と一緒にはなれない。

 「ごめんな」

 そう小さく謝ると、彩には聞こえなかったようで、え?何?と聞き返してきた。

 なんでもない、とまた誤魔化してゲームを再開した。

 毎日のようにゲームしたり、寝るまで通話したり、第三者から見ると付き合ってると言われてもおかしくなかった。

 3年後、彩は高校を卒業した。

 俺は、高校を退学して家を出ることが無くなった。

 彩はずっと連絡してくれていたが、ずっと無視していた。

 退学した時は家に何度も訪ねてくれた。

 毎日のように連絡をしていた。

 それは夜明も一緒で、ずっと連絡をしてくれていた。

 夜明は彩と同じ大学に行ったらしく、彩は大学では何度も告白されたが、全部断っているとメッセージが来ていた。

 まぁ返信してないけど。


「本当にいいのか?白夜。彩ちゃん悲しんでるんじゃないか?」

 パソコンを動かしながらそう語りかけるのは兄の幻夜。

 全世界に繋がっているカメラを見ながら、大学に通う彩の姿。

「そんなん見るなんてストーカーかよ 」

 とカメラを切替える。

「白兄も素直じゃないね」

 妹の咲夜がにやけながらそう言った。

 はぁ、と溜息をつきながらパソコンを動かす。

「まぁ、お前の気持ちも分かるけどな。こういう冗談でも言ってないとやってらんねぇや」

 静寂に包まれた部屋でパソコンのカチカチという音だけが響く。

 さっきまでにやけていた咲夜の顔から笑顔は無くなっていた。

「白兄、本当にやるの?それをしたら白兄はもう会えないんだよ?」

「うっさい、余計なこと考えずに手を動かせ」

 ちょっと厳しく言いすぎたな。

「ごめん、別にいいよ。こういう人生だからしょうがないだろ」

「しょうがないって、それ以外の方法はないの、、、だって白兄は一番優しい人なのに。なんで白兄が死なないといけないの」

 ダンと大きい音を立てて、幻夜が立ち上がった。

「疲れた、飯食おうぜ」

 咲夜も頷いて、部屋を出ていった。

 ふたりが出ていったことを確認して、カメラを切替える。

「そりゃ、会いたいに決まってんだろ」

 そう言葉を零した。

 カメラをまた切替えて、二人を追った。

「はい、幻夜は麻婆豆腐ね。咲ちゃんはハヤシライスで、白夜はラーメンね」

 料理を作ってるのは長女の冥夜。

「ただいま」「ただいまー」「ただいま」

 3人の帰ってきた声が聞こえた。

「失礼致します。極夜様、煉夜様、靂夜様がお帰りになられました。」

 メイド長の氷雨が入室して、弟達の帰りを伝えた。

「つっかれたー、先にお風呂入るね」

 妹の煉夜がお風呂に向かった。

「煉姉、私も入りたいから待ってー」

「えー、私も入るー、煉ちゃんも食べてから入りな」

 しょうがないなぁと席に着いた。

 煉夜は俺の隣に座った。

「白兄、進捗どうなん?」

 と今日の進捗度を聞く。

「進行は2%、少し話しすぎたな。あとは俺がやっとくからみんなゆっくりしてていいよ。」

「白夜、お前は寝てろ。最近働きすぎだ。極夜、靂夜手伝え。」

 幻夜は俺の身体を労わってか、交代しようとした。

「いやいいよ、だったら4人で」

「寝てろ」

 過去にない幻夜の威圧感だった。

 俺は言葉を飲み込み、同意した。

「白兄が倒れたらこのことも全て無に帰すのは自分がいちばんわかってるでしょ。ちゃんと体調管理してよ」

 双子の弟の極夜がスーツを脱ぎながら、そういった。

 まぁ、双子と言っても全然似てないんだけど。

 ラーメンのスープまで飲み終えた。

「ご馳走様、風呂上がったら教えて」

 自分の部屋に戻る。

「はぁ、また悪い癖が出たな。ゆっくり本でも読むか」

 本棚から一冊を手に取り、机に座った時携帯が震えた。

 画面には彩の文字。

 無視して、しおりを挟んでいた部分から読み始めた。

 ほとんどのページに丸い染みがあった。

 ぽたぽたと新しい染みができていく。

 

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