歌声邂逅!
【前回のあらすじ】
一方的に戦線布告した月の民は、すぐさま『鳥かご墜とし』作戦による地球侵攻を開始した。
地球と月を往来する軌道エレベーター…事実上の巨大宇宙船である通称『鳥かご』を世界各地の都市に落下させ壊滅状態にした後、続け様に機動兵器による占領を実施した月側に対し、当初なんら対抗手段を持たなかった地球側は大ピンチに陥る。
しかし、市民を中心とするレジスタンスの反撃により次々と鹵獲された月の兵器群を解析した地球側は、短期間でそれに対抗し得る新兵器を続々開発し、衛星軌道上に配備。
『鳥かご墜とし』の成功率はガタ落ちし、戦局は宇宙空間における機動兵器同士の闘いに移行、膠着状態となった。
その中には昔とった杵柄とばかり、刑殺から軍へと出向したかつてのエースパイロット・熊田我雄の姿もあった。
月側の最新鋭人型機動兵器・俗称『白い奴』に苦しめられる地球側。
しかしそこに突然乱入してきたのは、体長十メートルもの巨大宇宙鮫…言うまでもなく鰐口靖利だった。
こうして熊田と靖利は感動?の再会を果たす。
『白い奴』に難なくトドメを刺した靖利は、熊田との次の逢瀬を約束して姿を消す。
そして密かに地球上の小笠原近海に現れ、自分や鮫洲が乗る次元潜航艦の必要物資を採取しつつ、別れたままの御丹摩署の面々に思いを馳せるのだった。
一方、『白い奴』の爆発寸前に脱出カプセルが射出されるのを確認した熊田は、それに搭乗する敵パイロットの救助に向かう。
戦闘空域の遥か彼方でようやくパイロットを救い出した熊田は、その素顔を見て驚愕する。
何故ならそれは、軍がクーデターを起こすまで月側の代表を務めていた彼に瓜二つの顔立ちだったのだから…。
◇
「俺は、戦う!」「俺は、戦うっ!」「俺は、戦うッ!!」
勇ましいBGMに乗って銃を携え、三者三様な決めポーズを披露するのは、鰐口靖利の実兄達で結成されたアイドルグループ『SMブラザーズ』の面々。
「あたしもたたかう〜っ♩」
そこへポテポテ駆けてくる、ダブダブの軍服を引きずって水鉄砲を持った小柄な幼女。
これまた、かつて靖利が所属していたアイドルユニット『ポリッシュ・ポリシー』略して『ポリポリ』の最年少メンバー・音成小鞠だ。
『ハッハッハ!』
微笑ましい光景に皆が笑みをこぼしたところで、画面にデカデカと表示される
《Let's join US!!》
の文字。最近ではすっかりお馴染みとなった兵士募集CMだ。
…チャンネルを変えれば、また別のCMが。
放課後の西陽が射す教室で戯れる、二人の女生徒。
一方の背が高い黒髪美人は、やはり靖利の実母である鰐口靖美。
もう一方の小柄なふわふわヘアーの美少女は、先程のCMに出演していた小鞠の母親・音成真里子だ。
JKコスなんぞを披露しているが、実は二人とも人妻アイドルグループ『授乳戦隊タレナイン』のメンバーで、とっくにエエ年こいた子持ちの成人女性である。なので多少淫靡な雰囲気でも無問題!
机に寝そべり何かを期待するような恍惚とした表情の真里子に、靖美がそっと唇を寄せて…
かと思えば、寸前でスッと顔を引っ込めてしまう。
「あン…お姉さま、もっとぉ…♩」
我慢も限界な様子の真里子が妖艶におねだりしたところで、
『贅沢は、ダーメッダーメッ!!』
突如絶叫が響き渡り、残りのタレナインメンバー七人が教室に飛び込んできた!
すると直前までアラララ…な雰囲気だった靖美と真里子も飛び起きて、何事もなかったようにメンバーの輪に加わる。
お決まりの魔女のサバトのような思わせぶりなダンスで画面に釘付けにさせてから、おもむろにデカデカと表示されるのは、
《欲しがりません勝つまでは☆
〜地球連合婦人会〜》
戦時下での節制を呼びかける政府広告だった。
もはや何をどう欲しがらないのか皆目意味不明なのはいつものことだが。
さらにチャンネルをザップしていくと…
戦時下だというのに一風変わった教育番組のような映像に目がとまる。
シンプルなピンク色の背景には、こんな文字が。
《セブンくんとのお約束》
その手前にひょっこり顔を出したのは、タイトル通り『ポリポリ』唯一の"男の娘"メンバー・セブン。
「みんなは月の民って見たことある?
見た目は弱そうだけど、実はとーっても丈夫で強いんだ!
良い子のみんなは見かけても決して近づかないようにして、すぐに近くの大人を呼んでこようネ♩」
力説する彼の傍らには月の民のイラストが表示されている。想定視聴者層の子供への影響を考慮して、かなり漫画タッチにデフォルメされてはいるが、それでも連中の獰猛さは存分に伝わってくる。
てな次第で、主に若年層に月の民への注意を促す公共広告だった。
もっとも現在では『鳥かご墜とし』の成功率が劇的に低下したため、地上に降下する連中の数もめっきり減ったが、いざ出くわせばヒグマ並みに危険なのは言うまでもない。
…と、ここで背景の色が注意色の黄色に変わり、
《保護者の皆様へ》
とタイトルが切り替われば、セブンと入れ替わりに出てきたのは同じく『ポリポリ』メンバーの少女型HWM・七尾ボンバイエ。
どうやら背景色はそれぞれのコスチュームカラーに合わせてあるらしい。
この二人は背丈や見た目年齢がだいたい同じためか、ワンセットで扱われることが多い。
実際にはセブンは年齢不詳、ボン子にいたっては稼働時間が数世紀…以下略。
「皆さぁ〜ん? 月の民の生命力はとぉーっても強くってぇ〜」
セブンと同様なセリフを口にするボン子からカメラが引くと…その隣には猿ぐつわを噛まされ、車椅子に縛りつけられた本物の月の民が。
しかも、戦闘で負傷したのか拷問で切断されたのかは不明だが、包帯が巻かれた四肢の先が無い。
「…こんなふうに、ちょっとやそっとの怪我では死にましぇ〜ん♩
お口だけでも残しておくとぉ、隙をついて噛みつかれることだってありますぅ〜。
怖いですね〜コワイですね〜♩」
そりゃ敵だって生き延びるために必死だからな。両手両足討たれたら這ってでも口に咥えた竹槍で鬼畜米英を以下略。
「そこでぇ〜、このように距離を稼げる得物でぇ〜」
ボン子がどこからともなく取り出した釘刺しバットを構えると、さっきのセブンもサブマシンガンを携えて戻ってきた。
もう嫌な予感しかしない。
「頭を狙ってぇ〜…打つべし! 打つべしっ! 打つべしぃーっ!!ですぅ〜☆」
バキャッ! ボキャッ! ズドゴォッ!!
パララララララッ!
ほらやっぱり! 月の民の頭部をバットで楽しげにメッタ打ちにするボン子の隣で、セブンもマシンガンを乱射して上体を蜂の巣にしている。
「フンもごごぉおぉ〜〜〜〜〜〜っっ!?」
もちろん悶絶する月の民だが、並みの人間なら一撃でお陀仏なところを耐え凌いでいるのはさすがだ。
え? 捕虜とか無いのかって?
いやだって、先に無差別攻撃に踏み切ったのは月の民のほうだし、自業自得でしょ?
一応、画面下には「この月の民は戦地で大勢の市民を殺害」云々、「処刑相当」カンヌンと申し訳テロップが流れてるけど、だから刑殺官の彼らが処理にあたってるんだし、しょせんルールなんざ無いに等しい戦争なんだから仕方ないよネ♩
キュピィーン! スパッ…ドサッ。
「…と、こんな感じでぇ、最後に目からビームとか出せれば言うことナシ!ですねぇ〜☆」
オメー以外出せるかンなモン。
ビームで斬り飛ばした月の民の生首を誇らしげに掲げて、返り血を浴びつつもやり遂げた笑顔を浮かべるボン子の姿に被せて、またもやデカ文字が。
《お子様の命を守れるのは大人のあなただけ。》
《守ろう地球 滅ぼそう月の民》
もはや何のプロパガンダだか不明な内容だったが、戦時下にはままある事ではある。
この期に及んで理性を保てる者など皆無なことは、過去の大震災やパンデミックで散々経験したではないか。
◇
「…いやハヤ、どこもかしこも戦争一色だねェイ?」
どこを観ても変わり映えしない放送内容に、すっかりチャンネル操作を諦めた百地署長がテレビリモコンを放り投げてぼやけば、
「てゆーか、なんか知り合いしか出てないよーな気が…」
と葉潤が苦笑い、
「こんな時期にマトモな番組なんて制作できっこないですからね〜。
鹿取社長がお手頃価格で片っ端から出演依頼を引き受けてるから、こーなっちゃうのも仕方ないですよ…」
と留未が頬杖ついて溜息もつく。
ここはお馴染み御丹摩署の刑事部屋。
戦争中だろうと何だろうと、刑殺の仕事が無くなることはない。
とはいえ、どのみち遅かれ早かれ死ぬのに、今さら処刑なんて必要なのか?…などという悲観的な意見も多々聞かれるようになり。
存在意義が揺らぎ始めた彼らとしては、肩身の狭い思いをしている最中である。
「う〜ム、実に世知辛いねェイ…」
渋り顔の署長が気分転換を図ろうとコーヒーメーカーのところへ行き、注ぎボタンを押せば…
「…ン〜? なんだか異様に薄いねェイ?」
カップの底が透けて見えるほど淡い色合いに首を捻ると、
《それは番茶です。》
ニャオが若干申し訳なさげに説明する。
《コーヒー等の嗜好品は先週より配給制になり、在庫が切れましたので…》
「…ホントに世知辛いねェイ…」
注がれた番茶を仕方なくチビチビ啜りつつ、署長はすごすご座席へと戻っていく。
実年齢一千才とは思えないほど若々しかった彼も、ここ最近で急に老け込んだ印象だ。
「…いつになったら終わるんでしょうね…この戦争…?」
留未が誰にともなくポツリと呟く。
無意味な質問だということは百も承知だが、つい弱音が口を突いてしまう。
だがこれはそこいらの小国同士の小競り合いなどではなく、地球と月の全面戦争だ。どっかの大国がヤメロと言って直ちに治まるものではない。
「解ってると思うけど…そゆことは僕ら以外の前では言わないようにね。でないと…」
と忠告した葉潤が窓の外を指差せば、
『セーンソゥ、ハーンタイ! セーンソゥ、ハーンタイッ!』
『今すぐ停戦を!』のプラカードを掲げた数人の市民団体が、シュプレヒコールを上げながら街中を練り歩く声がここまで聞こえてくる。
こんな状況下で、なんとも肝の据わった連中だが…声高に叫べば誰かが聞いてくれる時代は終わった。
他の市民はその様子を遠巻きに眺めるだけで、近づこうともしない。
…巻き添えになるのはゴメンだから。
「貴様らァーッ!?」「ちょっとこっち来いッ!」
そら見たことか。すぐさますっ飛んできた腕章を付けた兵士達が、抵抗する団体を強引に引きずって路地裏へと入っていく。
直後…ターン! タターン!
乾いた銃声が何発か鳴り響き、ややあって兵士達が通りに戻ってきた。
が、団体は一人も帰ってこない。
「他に『平和的解決』を望む者はいるかッ!?」
銃を構えた兵士が大声で問いかけると、市民達は何事もなかったように足早に散っていく。
「…世知辛いですねぇ〜?」
その様子を窓越しに眺めていた留未が、先程の署長のコメントを繰り返すと、全員揃って深ぁ〜い溜息。
刑殺としても、あのように横暴な行為を野放しにしておくのは心苦しい限りだが…
アレは憲兵。腕章が目印だ。軍隊における刑殺官相当の職務を担った兵士達だ。
そして有事には、彼らの権限は刑殺を上回る。
その彼らが、ああいった手合いを有害と見做したならば、刑殺は口を挟めないのだ。
「…この場にヤッちゃんがいたら、絶対見逃さないだろーけどね…」
「…ですよねぇ〜?」
ふと靖利のことを口にした葉潤に、留未も同意してクスッと微笑む。
彼女が鮫洲のもとへと去って以来、御丹摩署界隈ではその名を口にするのは何となく憚られていた。
だが、生存確認を兼ねてたまに顔を見せる熊田が、戦場で靖利と出会ったことを報告したのを皮切りに、世界中の戦闘宙域で巨大鮫の目撃例が噂されるようになった。
その行動から、彼女の中身が以前とまるで変わっていないことを悟った署員達は、再びその話題に花を咲かせるようになったのだ。
まぁ心配っちゃ心配だが、あの靖利がそうそう負けるとも思えないし。
「…おかげでこっちも、こんな時でも商売上々よ〜ん。鰐口ブランド様々だわね♩」
鼻歌混じりにフラリと刑事部屋に現れたのは、署員以上に出席率が良い鹿取社長だった。
彼女いわく、靖利の評判は以前通り遜色ないどころか、戦場での噂が流れるにつれますます高まっているという。
「…んで? 今日は何しにいらっしゃったんですか? どーせそんな噂話をしにきた訳じゃないでしょ?」
そろそろ社長の行動パターンが読めてきた留未が嫌々問い詰めれば、彼女はにんまり笑って、
「もちろん。てゆーか、その噂話に便乗しちゃおーかなってね♩」
「ホラやっぱりろくでもなかった…。
今度はいったい何をさせる気なんですか?」
すると社長はその反応を待ってました!とばかりに留未の鼻先に人差し指を突きつけて、
「You達も宇宙に行っちゃいなYo☆」
「だーからその口調は今どきモロアウト…
…へ?」
◇
「何考えてんだお前は!? 戦争ナメてんのかっ!?」
鹿取社長の提案を聞きつけて、最前線からトンボ返りしてきた熊田が怒鳴りつけるも、
「だーから細心の注意を払うっつってんでしょ?」
対する鹿取社長は涼しい顔で、目の前のテーブルに広げられた図面を指でトントン叩く。
それに記されているのは…超大型機動兵器。
『鳥かご』ほど大きくはないが、全長三百メートルは優に超えている。
その巨体にミサイルや機銃、レーザー兵器にシールドバリアなどあらゆる武装を搭載し、もはや戦艦の様相を呈している。
が、これで"戦闘用ではない"という。
「フザケんなっ、こんな図体で敵の前に出たらいいマトじゃねーか!?
ンな危なっかしいモンに小鞠を乗せられるかッ!!」
「だから小鞠ちゃん以外も全員乗るじゃん♩」
「なおさら悪いわッ!!」
「非戦闘員は攻撃対象外なんでしょ?」
「ンなもん建前だけだ。つーかこんだけの武器をワンサカ搭載しといて、誰が信じるよ!?」
「だーかーらぁ、ほらココ! ステージとスクリーンになってるでしょ? ココでみんなで歌い踊れば一目瞭然じゃない♩」
察しのいい人はもうお解りだろうが、要するに社長はこの巨大エンタメ兵器で靖利の真似事をしようというのだ。
コレで最前線まで乗り付け、月の民の眼前で地球のエンターテイメントをしこたま見せつけて戦意を削ごうという…。
どこぞの超時空な歌謡ロボアニメぐらいでしか見かけない、脳味噌の塩梅が疑われるほどの奇策だ。
「…あ〜も〜話にならんッ!!
だいたいこんなモン、何処のどいつが用意するってんだ!?」
激しい偏頭痛に苛まれる熊田に、しかし社長は得意満面に、
「ところがギッチョン、軍のお偉いさんが割とヤル気なのよ〜♩」
訊けば、世界中の最前線に靖利が乱入したとき、その歌を聞いた月の民にかなりの動揺が見られることから、これはイケる!と踏んだらしい。
…実際には、前述の伝説の歌謡戦争アニメのようなプロトカルチャー的動揺とは根本的に違うのだが。
まぁ戦時中には様々なトンデモ兵器が企画されるのは今に始まったことじゃないし、そもそも軍人さんの専門分野は頭脳労働じゃないから致し方ナシ。
「題して! 『月の民歌まみれ』作戦んん〜ドンドンパフパフ〜〜☆」
ダサッ!? チョコま◯れじゃあるまいし。軍でももう少しカッコイイ作戦名を考えるだろうに。
「…マジか…アホなのは鮫女だけにしてくれよ…」
ドッと疲れてへたり込む熊田に、鹿取社長は最後の一押しとばかりに、
「それにぃ…みんなで楽しそうに騒いでれば、その鮫女ちゃんもつられて出てきて釣り上げられちゃうかもヨ♩」
「天の岩戸かよ。あ〜でもあのアホ鮫ならマジに釣れそうだな…」
熊田は疲労困パイのため正常な判断力を失っていた。
「けど俺はこんな大型は操縦できねぇぞ?」
その回答をゴーサインと受け取った社長は、なぜだか得意気に鼻を鳴らす。
「ちょうど打ってつけの子がいるじゃない?」
結局人まかせなのになぜ得意気?
だがそれを聞いて、熊田は怪訝な顔をした。
「…アイツを使う気か?」
◇
鹿取社長御指名の『打ってつけの子』は、御丹摩署最奥の特別室…とは名ばかりの事実上の『隔離室』にて、小鞠やセブン、ボン子達と楽しげに遊んでいる最中だった。
「…!!」
熊田が遥か廊下の向こうに差し掛かったのを人並み外れた勘で察知すると、ドアの前に飛んで行って彼の到着を待ち侘びる。
「♩♩♩☆☆☆@@@」
そしてドアを開けた熊田が顔を覗かせるや、大歓迎で抱きついてきた。
「おお、だいぶヤンチャになってきたな♩」
普通ならヤンチャになるほうが困ったものだが、彼…いや、彼女の場合は真逆だ。
何故ならこの子は先日、熊田が『白い奴』の脱出カプセルから救出した"あの子"だからだ。
最初のうちは緊張と未知への恐怖でガッチガチに固まっていたのが、ずいぶんこなれてきたのを見るとこっちまで嬉しくなる。
そして熊田は彼女がいちばん最初に触れ合った地球人であり、自分のために色々と骨を折ってくれたことから信頼できる人物だと思われたらしく、えらく懐かれてしまった。
「あーまたかぐやちゃんにパパ盗られちゃった。でも許したげる♩」
本来なら性別不明な月の民ではあるが、『かぐや』なる女性名も授けられており、さらには後述する身体的特徴から"彼女"と呼ばせて頂こう。
彼女がここまで打ち解けられたのは、ちんまい分際で姉貴風を吹かす小鞠の功績でもある。
かぐやが署に移送されてきた当初から一番興味を示したのが小鞠で、厳重に戸締まりされていたはずの隔離室にいつの間にか入り込んで、一緒に遊んでいた時には騒然となったものだ。
「だってかぐやちゃん、とぉーってもキレイなんだもん♩」
だがそのおかげで、彼女には一切の敵意がなく、また逃亡の意志もないことが明らかとなった。
それでもいまだに隔離室に置かれているのは、むしろ彼女の身の安全のためである。
そして靖利がいなくなって以来塞ぎ込んでいた小鞠も、すっかり元の調子を取り戻した。
…あの日、脱出カプセルから彼女を救出した後、熊田はしばし考え込んだ。
この子をこのまま軍に引き渡して良いものか?と。
あの白い機体を駆って、これまでに数多くの仲間を屠ってきた仇でもあるし…何故だか月の前代表にそっくりな顔をしていることからも、是非ともそうすべきであることは理解できる。
しかし…線の細さに惑わされて最初は気づかなかったが、よくよく見ればまだ顔立ちも幼く、地球人なら中学生相当の若さに見える。
ということは、あの前代表とは明らかに別人な訳で…。
子供に甘い熊田としては、彼女がこれから酷い目に遭わされることが解っていながら軍に委ねる…などという選択肢は毛頭選べなかった。
「熊田機より本隊へ。敵の脱出カプセルの回収は失敗、大気圏で燃え尽きた。
こっちも本隊復帰は困難につき、一足先に帰還させてもらうぞ。以上」
しれっと大嘘を送信した後はとっとと地球に降下し、とある地点に着陸要請を行った。
それは七尾家の敷地内。ここなら部外者は立ち入らないから彼女を匿うには最適だし、御丹摩署へのアクセスも容易だ。
事情を聞いたボン子は二つ返事でOKし、すぐさま署に協力を仰いだ。
あれよあれよという間に事態は動き…結局は評議長の許可を取った上で、軍には秘密裏に署内でこの子の身柄を預かる運びとなった次第だ。
政治家や刑殺関係者周辺には、軍の横暴ぶりを嫌う者が決して少なくはないからね…。
そしてイキナリ問題が浮上。
《まずは彼女に名前を付けてください。呼称が無いのは不便極まります。》
匿われて以来、彼女は何一つ話そうとはせず、身元が判るようなモノも何一つ所持してはいなかったため、氏名すら不明だった。
そこで、とりあえず適当な呼び名を与えようということになったが、
「そんなもん『月子』でいいだろ。解りやすいし」
と主張する熊田に、
「センスないですねぇ〜。せめてルナちゃんとかぁ〜…」
などと自分の名前を棚に上げたボン子が、単純ではあるものの割と良さげな例をあげて反論したが、
《両方却下です。安直すぎて身元がバレる恐れがあります。》
とニャオがごもっともな見解を示したため、ネーミングセンスが最悪な面々は大いに困惑することに。
…その時ふと、熊田の膝の上に陣取った小鞠が、件の彼女に読み聞かせていた絵本が皆の目に留まった。
『かぐや姫』
これだ!と満場一致で決定した。
小鞠も自分が持っていた本から名前が決定したので、自分が命名したようなものだと鼻高々。
それにしても…かぐやはここへ来てからというもの、ひどく怯える一方で、小鞠の相手をする以外は何一つ話そうともしない。
先祖が同じ獣人と月の民の公用語は共通しているため、まさか言葉を知らない訳でもあるまいに…
《…いえ。おそらくはその「まさか」です。》
彼女を解析したニャオは、意外な結果を報告した。
《彼女には戦闘に関する知識以外、何も備わっていません。言語教育も受けていないものと思われます。》
どうしてそんな事に?
クローン培養で仲間を増やす月の民は、里親希望者の要望通りの性格や素質を備えた子供を生成し、これまた要望通りの年齢に達するまで短期間で成長させる技術を持っている。
この成長期間中に言語や社会常識など、日常生活に必要な知識も自動的にインプリンティングされるため、このような欠落が発生することはあり得ないはずなのだが…?
《それはおそらく…彼女が『支配種』だからです。》
ニャオが彼女のDNAをスキャンしたところ、他の月の民とは如実に違う点が見つかった。すなわち、
《彼女達は、月の民の中では唯一無二の繁殖能力の持ち主です。》
通常の月の民には性別も生殖器官もないため、クローンにより子孫を残してきたのが月の社会の特色だ。
それは彼らが厳しい月面の環境下で生き抜くため、あの宇宙甲虫の遺伝子を取り込んで体質を大きく変化させたことに起因する。
甲虫は蟻や蜂と同様、女王虫を中心とした群体生物として独自の社会構造を築く。
一般的な甲虫…つまり『働き蟻』には繁殖能力がないぶん、唯一仲間を増やせる『女王蟻』と、それが産む子供達の世話に一生を費やす。
この特性が月の民にも色濃く受け継がれており、女王蟻のDNAを持つ『支配種』が社会の頂点に立ち、『働き蟻』である一般市民を束ねることで今日まで体制を維持してきたのだ。
ところが…
《先日のクーデターにより軍に拘束されたのは『支配種』ばかりだったことが、捕虜達から得られた証言で判明しています。》
つまりこれは月の社会構造のみならず、人種差別までもを含んだ大改革だったのだ。
だいたい軍人なんてものは、どこの国でも煙たがられがちだ。日本の自衛隊が良い例ではないか。大災害などいざという場合には散々お世話になるにもかかわらず。
かつて平安時代の武士達も、支配層である貴族からは野蛮な連中と疎んじられ続けてきた。
それを改めさせ、以降、昭和時代の戦前に至るまで続く軍事国家の礎を築いたのが時の平清盛だった訳で…
どうやら月の民にも、その偉業にあやかろうとする輩がいたようだ。
結局のところ支配欲なんて誰にでもあり、国盗りゲームが日常茶飯事な脳筋の軍人どもはその傾向がとりわけ顕著なのだ。
その脳筋どもの単純明快な発想では、支配種のみが持つ繁殖能力はクローン技術で代用が利くし、ならば彼らはもう必要ないのでは…と考えても不思議はない。
《おそらく、前代表も今頃は…。》
「…他人のことを言えた義理じゃねーけどよ。マジに血も涙もねぇ連中だな」
かくしてこれまで自分達の上役だった『支配種』をすべて粛清した月の民だが…
一方で、まだ育成中だった幼き者達は廃棄処分を免れた。
彼女達のもう一つの特徴でもある『第六感の異常発達』が、機動兵器のパイロットとして有効と評価されたからだ。
宇宙甲虫の女王は、無数の奴隷虫を使役するために、ある種の共感覚…いわゆるテレパシーのような能力を有し、半ば強制的に手下どもを自分の手足のように操っているらしい。
月の民にはそこまで強い特性は受け継がれなかったが、『共感覚』は『第六感』として支配種のみに備わっている。さもなくば支配種が実際に支配層に就くことは出来なかっただろう。
そこで、月側の最新鋭機である『白い奴』のパイロットに支配種を抜擢し、戦闘技術のみが刷り込まれた右も左も解らない彼女達を最前線に放り出して、いいようにこき使っているのだ。
あの機体が真っ暗な宇宙空間であえて目立ちまくりな純白に塗装されているのも、敵の攻撃を惹きつけて僚機への被害を軽減する『弾除け』役を担っているからだ。
◇
「…聞いてるだけで虫酸が走るぜ。月の連中が今までお偉いさんにどんだけ痛い目に遭わされてきたか、知ったこっちゃねーけどよ」
と熊田が苛立ってみせれば、
「やっかみ半分なんじゃないの? 全ての支配種が我が物顔でふんぞり返ってる訳じゃないだろうし。
少なくとも前代表は、大衆のために骨身を削ってでも職務に邁進してる感じだったけど」
と葉潤が今さらながら前代表を擁護し、
「それに、クーデターなんて起こしたところで、国民の暮らしはますます困窮するだけで、豊かになった国なんて只の一つも無いことは過去の例からも明らかですしね」
と留未が博識ぶりを披露。事実、政変後に先進国の助けもなく自力で発展を遂げた国は皆無と言っていい。
「だいたいよぉ…何も知らずに生まれてきたコイツらには、何の落ち度も無ぇだろが…っ!」
かぐや達への非人道的な仕打ちに、熊田が思わず声を詰まらせるが、
《人間の認識など所詮そんなものです。
現に我々も、いま戦争中の月の民を好戦的な冷酷人種だと一緒くたに評価していますが、もちろん全員がそうとは限りませんし。》
ニャオにこう言われてしまえば、誰も二の句が継げなくなる。
捕虜達の証言によれば、開戦前後には月面社会でも激しい反戦運動や地球を擁護する意見が乱れ飛んだという。
月の民だって様々だ。中には以前に知り合った占い師の老婆のように、地球に憧れ続けた挙句に念願叶って帰化した友好的な者だっている。
そんな彼らのパーソナリティを無視して、一括りに『敵性民族』と侮蔑すべきではない。
しかしそうした活動家は軍に次々拘束された挙句、現在はいずれも消息不明なのだとか。
元々が中央政権体制寄りの国家は、有事には個人の勝手な発言を許さない強権政治に陥りやすい。
そんな行為自体がますます国内外の批判を強めることに、日頃から周囲にイエスマンしか置かない権力者は最後まで気づかない。
詰まるところ、人間は常に色眼鏡でしか物を見られない生き物なのだ。
「…んで? 話が激しく脱線こいちまってるけどよ。
ずっとそんな苦労してきて、此処でようやく平穏無事な生活にありつけたかぐやに…お前はまた、戦場で戦えって言うのかよ…っ!?」
ブチ切れ寸前な熊田の罵声に、しかし鹿取社長はいたって涼しい顔で、
「何も一人で、とは言ってないわよ。
今度は、みんなで一緒に戦うの!
…戦うってのも変よね? ただ歌って踊るだけなんだし♩」
「ン〜なTikT◯kで世界が変えられりゃ誰も苦労しねーんだよ。お前まであのアホ鮫のお仲間だったとはな…」
こりゃ話し合うだけムダだわ…と熊田は頭を抱え込む。
「私だって、こんなので戦争が止められるなんて思ってないわよ。
…でも、アイデアとしては悪くないって思うのよね」
まぁ確かに、ただ啀み合うだけでは互いに憎悪が増すばかりで、解決など出来っこない。だからといって…。
「聞いたところじゃ月面社会って、エンタメ関係が非常に脆弱らしいじゃない?
ならつけ入る隙はあるわ」
戦時中には大抵の場合、軍部の指導によって敵国のあらゆる文化や言語に自国民が触れ合うことが頭ごなしに禁止される。
太平洋戦争では米国がバラ撒いた大空襲警告や原爆投下予告のビラまでもが軍によって徹底的に回収された末に、イタズラに多くの犠牲者を出すに至った。
敵のお情けに頼ったら負けだという脳筋軍人どもの考え方が国民にまで強要された挙句、ろくでもない結果を招くのが戦争ってヤツだ。
それだけに、終戦後に解禁されたジャズなどの音楽やアメリカ映画に、娯楽に飢えていた日本国民は飛びつき、目新しい文化にすっかり魅了されていった。
…といえば聞こえは良いが、事実上の『洗脳教育』だ。
たとえどれほどの犠牲や飢餓などの肉体的苦痛に耐え抜けられたとて、精神面からジワジワ来る『新文化』の波状攻撃にはいったいどれだけ耐え凌げるかな? クックックッ…。
「…つまり、戦場という常に敵から目が離せない状況下で直接、大勢で歌い踊ってみせることであっちの戦意を削ぎつつ、こっちの文化を切羽詰まった連中の脳裏に強制的に擦り込むことにさえ成功できれは…」
「敵の内部に文化革命を巻き起こして、内側から瓦解させることが可能…ってワケか?」
なんか熊田もいつの間にか鹿取社長の巧みな話術にすっかり洗脳されてる気がする。
てゆーか、いつもオチャラケてる感じの社長だけど、割りかし戦略家だったのねん…怖っ!
「そこで、現場での運転手かつ護衛役を、現時点で最強のパイロットちゃんに頼もうかなって思ってね♩
あ、もう本人の承諾は貰ってるから」
さすがは鹿取社長、手が早…じゃなくて、手回しがいい。
「てゆーか…かぐやは一応、俺達の敵だったんだが…それを信用しろっていうのか?」
熊田としても彼女を信用したいのは山々だが…戦場での過信は即、死に繋がる。
「それは本人に直接訊いてみたほうがいいんじゃない?」
と社長が勧めるので熊田は、さっきからピッタリくっついて離れないかぐやに向き合い、
「解っちゃいるだろうが、危険だぞ?
それに…かつてのお前の仲間と戦うことになるんだ。
それでも、お前は…」
「ワタシ、やり…たい。」
熊田がすべて言い切らないうちに、かぐやは覚えたてのたどたどしい言葉と共に、力強く頷いてみせた。
「ここのひとたち…とっても…やさしい。
ワタシ…はじめて…うれしい…おもった。
だから…おんがえ…し…したい。」
生まれてこの方、彼女を目障りな異物のように扱い続けてきた月の連中と、敵味方を超えて一人の人間として接してくれた地球の獣人達。
どっちにつくべきかは考えるまでもなかった。
そしてかぐやは生まれ変わった。
言語はおろか日常生活に必要なほとんどの知識が備わってなかった彼女だが、その吸収速度は凄まじく、あっという間に日常会話がこなせるようになった。
それは彼女の才能や努力ももちろんだが、それ以上に…
「パパの…やくに…たち…たい。」
ただ、その一心だったのだ。
「くぅっ、泣かせるわねぇ〜!」
またもや涙をちょちょ切らせる鹿取社長。
実に胸熱なシーンではある……が。
「…パパ!?」
今日初めてそう呼ばれた熊田はうろたえる。
どうやらいつも一緒に遊んでいる小鞠の影響で、余計なことまで憶えてしまったらしい。
「…だ…め?」
「い、いや…ダメじゃねーが…」
彼の微妙な反応をみて不安になったのか、上目遣いに尋ねるかぐやを、誰が拒絶できようか?
「美少女な娘さんがどんどん増えるね〜熊田ッチ♩ 結婚もまだなのに」
「う、うっせうっせ、お前だってそうだろがよ!?」
ニマニマからかってくる葉潤に、子供みたいにムキになって言い返す熊さんが、いつになくカワイイ♩
「ったくよォッ! こうなりゃ俺もついてくぞ。全員まとめて守ってやらぁっ!」
「元々そのつもりだったけど、腕利きの護衛役がいて頼もしいわ♩」
幼馴染の動かし方をよくわきまえている社長にまんまとハメられて、熊田の同行ケテーイ!
「みんなバンガッてね〜♩」
一人だけ専門外だからと気楽に見送りを決めていた葉潤だったが、
「何言ってんのハウちゃん? あんたも来るのよ護衛役で」
最近ますます馴れ馴れしくなってきた社長によって、安息の日々は打ち砕かれた。
「へっ!? い、いやいやいやっ、僕ぁヒコーキはおろか自転車にすら乗れないんだけど!?」
思いのほかポンコツだったハウちゃん乙。
「ジョブジョブ。軍の機動兵器シミュレーターに乗せてもらったけど、テレビゲームみたいで面白かったわよん。
ハウちゃんならすぐ慣れるって♩」
運動神経が壊滅的な奴はなんでかゲームが上手い。これ常識。
「っていやいやイヤイヤ!?」
たしかに護衛の数は多いに越した事はないが、なんでまたド素人に?
「ステージ船を操縦してるのがお月様からの子だってバレちゃってもいいの?」
さすがにそこは他の兵士には秘密だったか。
たしかにバレたら自軍敵軍問わず大騒ぎだろう。
「そりゃ、事情はお察ししますけど…ねぇ?」
すがるような目で見つめる葉潤に対し、熊田は…
「諦めな。最初から『棺桶』に乗ってりゃ、葬式の手間が省けていいじゃねーか?」
地球側の機動兵器を『棺桶』と称した血も涙もない熊田に、葉潤は絞られた雑巾のような表情を浮かべた。
「ま、本番までにはそれなりに戦えるように鍛えてやっからよ♩」
「…お手柔らかにお願いします。」
ムダな抵抗を諦めた葉潤に、留未もガッツポーズで、
「大丈夫ですよぉ、あたしもいますから♩」
「…何の保証にも慰めにもなってないけどね」
「ンだとぉゴルァッ!?」
◇
戦時中の生産力の向上は凄まじい。
予算も労働時間も度外視で、全市民が一丸となってひたすら兵器開発に従事するからだ。
開戦当初こそかなりの痛手を被った地球だが、それでもまだ月面など足下にも及ばないほど潤沢な資源と労働力がある。
いざという時の民衆の結束力というものを月側は見誤っていた。というより、縦割社会の共産国家にはどう足掻いても到達できまい。
足りない科学技術力は数と根性で補えばいい。
火力よりも防御力よりも、必要なのは士気の高さだ。
鹿取社長の発案に軍部がGOサインを出した超巨大機動ライブステージ兵器は急ピッチで建造が進み、同クラスの戦艦なら通常数年はかかるところを、わずか半年弱という驚くべき短期間で完成に漕ぎつけた。
それから間もなく。
地球衛星軌道上の最前線区域は、敵味方問わず大混乱の様相を呈していた。
「何だべありゃ…!?」《デカい…デカすぎる…っ!》「宇宙戦艦…いや、まさか機動兵器か!?」《よもや地球にこれだけのモノを開発する能力があったとは…!》
自軍の一般兵士にすら完全に秘密裏に準備が進められていた件のステージ船『じおぽりす丸』の威容に、誰もが色めき立った。
全体的には、それまでの地球側機動兵器同様にウニのような形状。
だがその大きさは直径三百メートルにも及び、どこぞのSF映画に出てきた一撃で他の惑星を破壊可能なほどの人工惑星さながらだ。
その中央には巨大なシャッターが取り付けられており、明らかに何かが繰り出しそうな気配が濃厚。
《う、撃ちますか?》《待て、どんな攻撃を仕掛けてくるか判らん…まずは様子見だ。『鳥かご』も現場待機だ》
良く言えば勇猛果敢、悪く言えば猪突猛進な月側の隊長までもが手出しをためらう異様さだ。
と、そこでじおぽりすの中央シャッターが音も無く開き始める。
《…ぅ…わぁあ〜〜〜〜っっ!?》
恐れをなした新米兵士が、思わずシャッター目掛けて突撃する。
《バカ者ッ、待てと言っているっ!?》
敵隊長が慌てて制止を促すが、血気盛んな若人の耳には届かない。
殺られる前に殺れ!の精神は誠に天晴れだが、敵の見せ場を邪魔する無粋な輩の行き着く先は常に同じだ。
ピシュンッ!《ぁがッ!?》キュボォーン!
それ見たことか。不意に巨大船の物陰から狙い撃たれて、新米機はなす術なく爆散した。
「なるほど、こりゃ確かにゲームだね♩」
物陰に潜んだ碧い機動兵器のパイロットが鼻を鳴らす。
その正体は、半年間に渡る熊田直々の戦闘訓練でメキメキ腕を上げた葉潤だった。とりわけ射撃の精度は今では熊田を上回るほど。
射撃手が最も苦手とするのは、多数の敵がこちら目掛けて一斉に襲いかかる状況だ。
しかし一匹ずつなら難易度は格段に下がり、落ち着いて狙い撃てる。各個撃破ってヤツだな。
だから戦場での単独行動は危険なのだ。常に誰かに狙われていると心してかからねば。
葉潤が言うように、ゲームでは常にこの状態に持ち込めるよう巧く立ち回るのが必勝法となる。
あと決定的だったのは、両軍が使用する機動兵器の性能差だ。
地球側の兵器は当初のウニ型からさほど変わらず、しかし各部品の開発技術は格段に向上し、性能的にはまるで別物。
さながら、レベルアップする度にあれだけ苦戦した強敵が取るに足らないザコ敵と化すRPGのごとし。
一方の月側兵器は、現在ではその地球側のものをまんまパクったような機動力優先のモデルに大きく様変わりしていた。
初期の人型では読みが外れて思わぬ苦戦を強いられ、また人型ゆえに死角が多く応戦しづらいとのパイロット達からの不評を受けて、さらに幾度とないモデルチェンジを経て現在の形に落ち着いたのだ。
しかし短期間での変革は現場での大混乱を招き、度々変わる操作系についていけないパイロットが続出。
あたかもファミコンのシンプルなコントローラーが突然ボタンだらけのスーパーファミコンのソレに変わったがごとく。だって二個から六個よ? 三倍じゃん!
しかも最初期のタイトルは処理落ちがそりゃも〜酷かったし……えーっと何の話?
あーっとつまり、それがそのまま現在の両軍パイロットの熟練度に直結しちゃってるのだ!
《ええいっよくもっ!?》《コソコソ隠れやがって!》《だから待てと言っている!?》
しかし撃ったことにより位置がバレた葉潤機に、血気盛んな他の敵機が隊長機の指示を振り切り襲いかかる!
「わわっ二機同時!? ちょっ待っ…移動はまだ苦手なんだけどなーっ!?」
大昔のテレビゲームのように縦横軸のみの平面的な移動なら問題なく行えるが、そこに上下軸が加わりでんぐり返しとかやった日にゃ〜途端に方向感覚が狂いまくる、フライトSLG初心者が陥りがちな罠…それが葉潤の現状だった。
焦るあまり急に操縦がおぼつかなくなった碧い機体、絶対絶命!
ズドピシュンッ!《がハッ!?》《おゴッ!?》チュドドォーンッ!!
だがすんでのところで、逆サイドから回り込んできた紅い機体が一発の射撃で二機を同時に貫通させ、見事に粉砕する神技を披露!
「だから戦争ナメんなっつったろ?」
「ふぅ…サンキュー、助かった♩」
額に浮かんだ冷や汗を拭って、紅い機動兵器を駆る熊田に心底感謝する葉潤だった。
静の葉潤機と動の熊田機。割と良いコンビネーションかもしれない。
《バカ者どもが…っ。》《巨大機に何か動きがありますっ!》
一方、一気に三機を失って歯噛みする敵隊長機に、僚機から報告が入る。
見れば、既に全開となったじおぽりすのシャッターの奥で、煌びやかな明かりが灯り始めていた。
《クッ、いったい何…を…?》
警戒を強めてそれを凝視する隊長の目に、信じ難い光景が飛び込んできた。
《…女に…子供…?》
シャッター奥には広々としたライブステージが築かれ、四方八方からのライトアップが、その中央に立つ彼女達を眩く照らし出していた。
おおよそ戦闘員には見えない着飾った若い男女に混じって、明らかに子供と思しき者の姿も何人か…それが総勢二十人近くもいる。
《ムゥ…全機、指示があるまで攻撃はするな!》《りょ、了解!》
それでも先程のようにためらわずに撃つ脳筋な月の民もあるだろうが、幸い隊長以下の残存勢力はそこそこインテリだった。
まぁ仮に撃たれたところで、分厚くもクリアーな強化耐熱超硬質ポリカーボネート樹脂に加え、ビームコーティングや電磁攻殻処理が施されたステージ天幕を破壊することはほぼ不可能だったが。
「ぅわぁ…これが…宇宙…!?」
ステージに立つ留未が呆然と呟く。
他のメンバーも初めて目にする漆黒の大海原に見惚れて、すぐ間近でドンパチが行われていることすら忘れていた。
見下ろせば、足下には大きな青い地球がゆっくり回っている。
動画などではよく見る画だが、実際に自分で目にすると感動もひとしおだ。
「靖利ちゃん…こんなトコ生身で泳いでんだ…?」
熊田の報告によれば、靖利は宇宙服も何も着けずに鮫のままで泳いでいたとか。幼馴染の奇行は今に始まったことじゃないが、ここまで来るともう訳がわからない。
そんな泳ぎが達者な靖利に比べてカナヅチな留未は、こうして立っているだけでも怖い。
星々の瞬きはたしかに綺麗だが…あの日、不良達に無理やり海中に引きずり込まれたときのように、先がまったく見通せない暗闇にどこまでも堕ちていきそうで…。
「じゃあ、また靖利ママと会えるかもしれないね♩」
無邪気な小鞠の言葉にハッとする。
そうだ、自分はもうあの時みたく独りぼっちじゃない。
こんなに多くの仲間ができたし、靖利も近くまで来ているかもしれない。
というより、幼馴染の宿命というか腐れ縁というか、この二人はたとえどんなに離れていても、必ずまた巡り会えるのだ。
さらには…あまり頼りにならないかもしれないが恋人候補?の葉潤だって、あとこっちは確実に頼れる熊田だって、すぐそばで戦っている。
「…ぃよし!」
気合いを入れ直す留未に、
「気負いすぎちゃダ〜メダ〜メ。いつものノリで気軽におやんなさいな♩」
人妻アイドルグループ『タレナイン』のメンバーでもある鹿取社長が拍子抜けなアドバイス。
「そうだぜ姫!」「こんな機会は滅多に無いんだ」「存分に楽しもうぜ!」
あ、ついでに靖利の兄貴達で結成された『SMブラザーズ』もいた。
さっきの『タレナイン』には靖利の母・靖美や小鞠の母・真里子もいるし、もう完全にご近所状態だ。
こうなりゃお祭りみたいに楽しんだ者勝ちかもしれない…と思ったら、身体から余分な力がスゥッと抜けた。
「う〜ん…なんかボクこの景色、見覚えあるかも…?」
次元の彼方より突然現れたこと以外、その出自がまるで謎だったセブンが、ポツリと気になるコトを呟いた。
「ってことは、お父様もこの宇宙の何処かにぃ〜?」
《可能性はありますね。あるいは鮫洲のような次元航行船を造って、他次元にいるのかも…》
『不死人』七尾ななおは今も何処かで生きている。
セブンをこちらの世界に送り込んできたことが何よりの証拠だ。
その娘であるボン子とニャオは期待に顔を輝かせた。
「おっしゃあっ、んじゃトップバッター行かせてもらうぜッ!」
SMBのメンバー、號壱・號弐・號留が威勢よくステージ中央に駆け出していく。
いよいよ前代未聞、最前線での世紀の一大イベントが幕を開けた。
◇
ライブの模様はリアルタイムで地球側のあらゆるメディアで中継されており、さらには広帯域で無制限に受信可能となっていた。
月側もこちらの通信を傍受しているはずだから、知らず知らずのうちにまんまとこちらの手中に嵌ることになる。
そして一番手は最もキャッチーな曲揃いのSMB。普遍的なロックダンス調の調べは、労働讃歌ぐらいしか知らない月側に絶大なインパクトを与えること間違いなしだ。
《…なんだ…あの粗暴な連中は?》《なんたる下劣な服装!?》《月面だと一発で矯正施設送りだぞ!》
ステージ中央でスターティングポジションについた三人組に、月側のパイロット達は奇異な視線を向けた。
何度も説明したが、月の民に性別はなく、それ故に中性的な背格好の者が大半である。
然るに、靖利の兄貴達のようにいかにも男らしい身体つきの者達が、しかも月側には存在しないボンテージファッションに身を包んでいる様は奇妙としか言いようがない。
加えて、なんとも妙ちくりんなポージングで微動だにしない様子は、月側の目には不気味に見えて仕方がない。
《何を仕掛けるつもりだ…?》
警戒を強めたその時…
ギャギャギャアーーンッ!と、突然荒々しいサウンドが月側の鼓膜をつんざいた。
《ぐあっ!?》《み、耳がっ、耳がァーッ!?》《おのれっ、音波兵器か!?》
彼らの音楽にはディストーションギターなどという暴力的な音の要素は存在しない。
初めて耳にする爆音に、パイロット達は大パニックに陥った。
…だがその苦痛もほんの一瞬。喉元過ぎれば熱さも涼しで、その後は三人の連携がとれた見事なダンスと歌唱のオンパレード。
月側にも当然舞踊はあるが、ここまで激しい曲に合わせてダイナミックに踊り狂い…
かと思えば要所要所でメロディアスなバラード調になりゆったりとした振り付けになったりと、メリハリを効かせた曲とダンスは耳も目も飽きさせない。
何より、ここまでエンタテインメントに徹した"魅せるためのダンス"は月側にはなく…それ以前にこれほど完成度が高いショーは月の民には望むべくもない。
《何だこれは…一時たりとも目が離せない。新手の精神攻撃なのか…?》
なんだかんだ言いつつ、最初は粗暴だの何だのクソミソに貶していた三人のことがたまらなくカッコ良さげに見えてきて…
かと思えば長いようで短かった楽曲はすぐに終わり、三人は投げキッスをしながらステージから去っていく。
《もう終わりなのか…あ!? いやその!?》
思わず残念そうに呟いてしまったパイロットが、通信が入ったままだったことに気づいて慌てて取り繕う。
しかしそれを責める者は誰もいない。皆、少なからず同じ気持ちを抱いていたから。
《…ムゥ? 今度はずいぶんと大人数だな》《しかもまたケッタイな格好で…》《人員のバランスもバラバラじゃないか?》《おおかた娼婦の寄せ集めだろ?》《これだから獣人どもは…》
続いてステージに登場した『タレナイン』の面々に、月側のパイロット達はまたもや罵詈雑言の嵐。
何よりも調和を重んじる月の民にとって、それぞれかなりド派手で個性的な女性ばかりが九人も集い、しかも共通した意匠ながらもてんでバラバラなデザインのコスチュームを着ているというのは、アンバランスで違和感この上ない。
しかも、その曲調ときたら…
《うっ…何だこの艶かしさは!?》《い、いいのか…こんな猥褻物を放置しといて?》《良くないに決まってるッ!》《なんたる破廉恥、なんたる低俗!》《地球の取締官は何をしているんだ!?》
のっけからエロい、エロすぎる!
いや逆にエロくない箇所を見つけるほうが難しい。
もういっそエロエロでしかないっ!!
…的な煩悩刺激しまくりでありゃりゃこりゃりゃな歌と踊りに、先程のSMBとは全然違った衝撃に見舞われた月の民は悶絶しまくり。
《イカンッ、こんなモノを長く見続けたら確実に脳がやられるぞ!?》《嗚呼それなのに…危険だと解っていても何故だか目が離せないっ!》《もしや…催眠術かっ!?》
そんな高尚なモンじゃござーせん。単にあーたがエロいだけです。
有史以来、エロコンテンツは常に人類をリードし続けてきた。ギリシャ彫刻然り、裸婦絵画然り、カーマスートラ然り…。
すなわち、エロこそが人類の原点と言っても過言ではないのだだだだだッ!!
《そ、それにしても…これだけバラバラな面子なのに、不思議と調和がとれている…》《大人数なのに全員に目が行き届く…》《よもや獣人にこんな技術があったとは…!》
当たり前だ、獣人ナメんな。
一見同じ振り付けでもメンバーそれぞれの体格に合わせて動きのバランスを変えているし、視線誘導によって知らぬ間に各々の見せ場が出来るように計算し尽くされている。
全員で平均的に同じ事柄をなすことを善しとする月の民からは決して出てこない発想た。
…そんな具合に彼らが興味を示し始めたところで曲が終わり、決めポーズで締めたメンバーがステージ脇へとはけていく。
《…また終わりか。ショーにしては異様に短くないか?》《…いや、時間を測れば各々のグループで五分前後は消費している》《そんなに!? まるで実感がないぞ!》《さては地球側にも時空を歪ませる技術があるというのか!?》
だからあーたらがそんだけ熱心に見入ってただけですってば。
そしてこれが鹿取社長の策略でもある。
グループ毎にまとめるのではなく、少しずつ小出しにすることで観客を飽きさせることなく、各グループの特色を極自然に受け入れさせる。
するといつの間にか観客それぞれの『推し』が生まれ、次にソレが出てくるのを今か今かと待ち侘びるようになる。
あたかも正義ヒーローが終盤にしか活躍しないのが判っていながら、テンポの良い話運びとド派手な演出によってチビッ子の興味を惹きつけ、落ち着きのない彼らには長尺な三十分ドラマをまんまと全部視聴させてしまう子供向け番組のように…。
◇
《…ムッ、また新しいグループか?》《今度は何をやらかすつもりだ?》《全機、警戒を怠るな!》
代わってステージ中央に現れたのは、本命『ポリポリ』こと『ポリッシュ・ポリシー』の面々。
当然のようにリーダーの靖利は不在だが、それでもカラフルなユニフォームが宇宙では一際目を惹く。
《今度は…なんというか…普通だな?》
最初は非戦闘員の女子供ばかりなことに戸惑っていたはずの月側をして、もはや「普通」と言わしめた。
これまた鹿取社長の目論見通りで、最初にあえて刺激が強めの『SMB』と『タレナイン』を2連チャンでブチ込むことで、彼らの感覚を麻痺させる。
その後にいわゆるトラディショナルな『ポリポリ』を登場させれば、この手のメディアに慣れ親しんでいない月の民にも安心して受け入れてもらえるだろう…と。
当ユニットこそ社長が最も心血を注いでいるため、そのクオリティーは折り紙付きだし。
そして一曲目は…この日のために書き下ろした新曲…『あなたの声を聞かせて』。
いきなり出し惜しみナシ!
《…なんだ…この曲は…?》《今までのグループのとはまるで違うぞ》《スローテンポ…バラードとかいうヤツか?》
地球側の曲の引き出しの多さに面食らいながらも、既に社長の術中にハマっている月の民達。
メッセージを伝えるのにスローバラードは最適だ。『ポリポリ』のダンスも控えめで、それよりは歌唱に重きを置いている。
もっともそれには中心メンバーであり一番ダイナミックな振り付けを担う靖利を欠いているからという理由もあるが。
内容的には、クラスで気になる子がいるのになかなか話しかけられない女の子の心情を切々と歌い上げる曲だ。
その子は自分の気持ちを伝えるのが苦手なあまり、他のクラスメイトとの間に深い溝が生まれ、次第に孤立していく。
どうにかしてその子に近づきたいと思いつつも、なかなか抜けがけできずに苦悩するヒロイン。
ある激しい雨の夜、二人は雨宿りのため入った店舗の軒下でたまたま鉢合わせる。
せっかくのチャンスを逃してなるものかと、ヒロインは勇気を振り絞ってその子を店舗の中にあるカラオケへと誘う…。
この二人はそれぞれ地球と月を、そして激しい雨は戦争を暗示していることは明らかだ。
鹿取社長は歌が説教臭くならないように、あえて何処にでもありそうな設定に置き換えたのだ。
実は月面社会に学校は無い。全ての人民はクローン技術により誕生し、その育成期間中に必要な教育を脳に直接刷り込まれてから世に出るからだ。
それでもその後の人生は人それぞれに委ねられるため、この歌の内容は痛いほどよく解る。
《…………。》
先程までの素人討論や、今が戦争中であることさえすっかり忘れて、いつしかじっくり聴き入る月側のパイロット達。
もちろん地球側も敵が動きを見せない限り手出しはしない。
今回の作戦は騙し討ちではなく、あくまでも文化交流だ。こちら側から攻撃を加えてしまっては逆効果となり作戦は失敗する。
だからこそ、まるで無警戒な『鳥かご』にもさっさとトドメを刺さずにそのまま放置している訳で。
だが…予想外の事態は往々にして肝心な場面で起こり得るものだ。
《…!? 戦闘宙域外から未確認物体が急速接近中ッ!!》《何ッ!?》
突如けたたましく鳴り響くアラームと共に、月側は大パニック!
それは地球側も同様だったが、
「何者だ、こんな時にっ!?」「この出現パターンは…例のアレですッ!」
地球側には既にその件が詳細に報告されており、月側では『未確認』な物体の正体も『確認済み』だった。そして…
「…へっ、マジで釣れやがったぜ!」
熊田がニヤリとほくそ笑む通り、ある意味では想定内…待ち望んだ展開だった。
《…ムッ、なんだアレは!?》《また地球側の隠し玉か!?》
やがて、宇宙の暗がりを切り裂くように次元の彼方から急浮上してきた三角形の背ビレを見つけた月側が騒然となる。
ソレは瞬く間にこちらに近寄ってきたかと思えば…ドッパァーーーーンッ!!
ヤケクソのように大ジャンプを披露して全身を露わにした。
「お前らァッ、戦争なんかやめてあたいの歌を…って言おうとしたら何パクッてやがんだよぉっ!?
最初に思いついたのはあたいなんだぞぉウワァ〜〜〜〜ンッ!!」
次元振動スピーカーで泣き喚かれると頭がガンガンするからやめて欲しい。
てゆーか誰が思いついたかって遥か以前にモロパクだからなコレ。
「や…靖利ちゃんっ!?」
その名を呼ぶ留未の顔に、久々に屈託のない笑顔が溢れた。
【第十五話 END】
予告通り、前回は出番のなかったレギュラーキャラがほとんど出てくる第十五話です。
前回ラストで衝撃?の初登場を飾った月の民・かぐやの正体が明かされたり、『ポリポリ』『SMB』『タレナイン』が宇宙デビューを飾ったりと、割りかし盛り沢山な内容となっております。
本作は完全にストーリー先行型で、数々の設定はすべて後付けとなっているため調整するのが大変ですが、今のところさほど違和感なく巧くハマってるかなーと。
まるで蜂か蟻のような月の民の社会体制とか、細々した箇所を考えるのが楽しかったですね。
一見、現代日本とは全然違うようで…でもな〜んか恐ろしく似てるでしょ?
普段はおとなしいのに、闇バイトに参加した途端に豹変する一般庶民とか。
綺麗事ばかり抜かして実質何もしないどころか、ますます周囲を混乱させるだけでなかなか辞めないお偉いさんとかね。
まぁそんな裸の王様はいずれ漏れなく民衆によって引きずり下ろされますけど。ウチの国の奴はもちろん、某国大統領も持って来年までじゃないかな?
世の中の調子がおかしくなってくると、大衆はとかく変革変革叫びますが、慌てたところで結局誰かを犠牲にした歪な構図に陥りがちなのはいつの世でも同じなようで…ハァ…。
ハッキリ言いますが、強者は常に弱者を踏み台にすることしか考えてませんから。連中の口車に乗せられると後で痛い目を見るのは自分達ですよ?
日本人ファーストで日本国籍を持たない人から巻き上げたカネを庶民に還元?
ンなもん政治家個人の懐に入るか選挙資金に回されるに決まってるじゃないですか。ある種の詐欺ですよ。
そうやって諸外国を締め付けるようなワガママをやらかしてもアメリカが許されるのは比類なき超大国だからで、弱小国家の日本が真似したらかえって厳しい立場に置かれるだけですよ。
そんなにまた戦争したいの? え、今の日本なら勝てる? 八十年前と同じこと言うんだな…。
目先の利益ばかりにとらわれず、せめて二、三歩先を見るようにしましょうよ。みんな視野狭すぎ。
米なんか食えなくたって今すぐ死ぬ訳じゃなし。大昔ならいざ知らず、他にいろんな食べ物が溢れ返ってる現在、昔ながらの主食なんてそんなに必要?
…あ、自分は米なんざ時々食えればそれでいい派ですので(笑)。
あと某絵札大統領が関税にこだわるのは米国に企業を誘致したいから…つまり国民の働き口を確保したいからで、それを日本産のまま行こうとするから痛い目に遭わされるんだし。
理由を突き詰めれば対処法も自ずと見えてくるでしょ?
などと、またまた話が脱線しまくりですが…
気づけば本作も結構な話数になりましたね。
なのにまだ全然終わりが見えません。
ヒロイン靖利は生身で宇宙遊泳しすぎたせいか無酸素脳になって、最近ますます天然度増し増しですし…う〜ん、どないしょ?(笑)