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ミス研ダイアリー  作者: なえた
林間合宿編
2/4

2.


筆記用具とメモ帳を手に持ち、肩からずれ落ちそうなスクールバッグを直しながら生徒会室へと早足で向かう苗木。

あと少しという所で人だかりに通せんぼをされてしまった。


ええ、なんでこんな所に、と人だかりをかき分けるとニコニコと爽やかに笑う池上が人だかりの中心にいた。

池上は苗木に気が付くと、ひらりと手を振られた。




「 今日は大切な生徒会のお仕事があるんだよ、

  なあ、苗木? 」




池上がそういうと、またね〜と人だかりは少しづつ、はけていった。

その後ろ姿たちをニコニコと見送ったあと、池上は苗木に視線を落とした。挨拶をしなくちゃ、と苗木は軽く身だしなみを整え、若干緊張を混じえながら口を開く。




「 副生徒会長になりました!苗木です 」




ぺこりと頭を下げると、池上は口元に指を添え、クスっと笑った。よろしく、と優しく挨拶を返され、先輩の人気な理由が少しわかった気がした。





池上と生徒会室に向かう途中、色々な話をした。

生徒会のメンバーの話、顧問はいるのだがいないようなものであくまで生徒主体な集まりであること、池上自身の仲の良い幼なじみの話。


特に幼なじみの話はというとこれまた楽しく話すのだから、よっぽど仲の良いことが伝わってきた。


生徒会室に入ると苗木と池上以外のメンバーは揃っており、ニコニコと手を振ってくれた。




全員が集まり、それぞれの席につく生徒たち。

先程まで爽やかだった池上はというと、様子が一変し、欠伸をしている。




「 あー、勝手に始めといて 」




生徒会室の棚を指でなぞりながら、漫画本をいくつか取り出すと、窓際の椅子に座り、足を組んで漫画本を読み始める池上。

初夏のカラッとした風が生徒会室に吹き込み、レースのカーテンが揺れる傍で本を読んでいる姿は様にはなっている。が、漫画本を読んでいるというのと先程の発言に新しく生徒会に入った苗木と書記であろう少年には衝撃を与えたのだ。




「 なんか、優しい池上先輩の様子が、 」





おかしい、と池上先輩を指差す苗木に生徒会の先輩は、いつもの事だよ、と苦笑した。

それに気付いた池上はというと、横目でこちらをみて




「 気のせいちゃう?とりあえず早く終わらせてくれ 」




と、眉をひそめた。

とりあえず自己紹介から始めましょうか、と女性の先輩が言うと、順番に進んで行った。


次は苗木と同じく新しく生徒会に入った書記の番だ。

少年は元気良く立ち上がり、眩しいくらいの笑顔である。




「 1年の(かじ)です!

  生徒会とか書記とか初めてのことで分からないこと

  だらけスけど、頑張ります! 」




真新しい制服は少し大きめで、梶からは初々しさを感じる。よく通る声で、一生懸命さがすごく伝わってくる。

まあどれだけ声が通ろうが池上は漫画本から目を外さないのだが。


池上のギャップに生徒会でやっていけるのか、幸先不安にはなったが、どうやら生徒会のメンバーは優しい人が多いらしい。苗木の胸によぎった不安は少し和らいだのであった。














一通り自己紹介がおわり、約1ヶ月後に控える林間合宿の説明も終わった。終始、池上は漫画を読んだり、ゲームをしたりと自由にしていたのだが。


先輩たちは先に帰り、苗木は残った資料を梶とともにまとめていた。

梶と接してわかったのは悪いやつではないということ。

たまに口が悪いような場面もあるが、人を傷つけようと悪意をもっているようではないようだ。

梶の方は一通り今日の活動の書記をまとめあげ、スクールバッグを持ち立ち上がった。




「 じゃあ自分は先に帰るスね! 」




あんまり無理しないでください!とぶんぶん手を振って帰って行った。


池上と2人きりになった苗木だが、自分の好きなことをしてる池上には話しかけれなかった。


そろそろ終わるなあ、とちら、と池上の方を見ると、目が合う。

あ、そうだ。と思い出したかのように池上は小棚から大量の資料を取りだした。すると終わりかけの苗木の資料の上に大量の資料を置いたのだ。




「 これも残ってるからよろしく 」




ニッコリ笑顔を浮かべ、動揺で冷や汗をかく苗木を残して池上は帰って行った。





















「 ねーもう最悪だよぉ!! 」




翌日、朝から教室で大きな声を出すのは苗木である。

昨日の生徒会での出来事を安室と狭間に話すと、ゲラゲラと狭間は腹を抱えて笑った。




「 で、その大量の資料終わったの? 」




ヒーヒーいいながら目尻の涙を拭う狭間。

不満でいっぱいの苗木は狭間を睨んでいた。




「 まだ終わってないから今日も昼休み生徒会室だよ 」




長くため息をつく苗木にやれやれとでも言いたそうな安室。やっぱり副生徒会長になるのなんて良くなかったんじゃないかと表情で語っている。




「 お前一人じゃ心細いだろうから俺もいってやるわー 」




安室は苗木に肩を組んだが、それはすぐに振り払われた。

暇なのもあるんだろうが、優しさで付いてきてくれると言っているのにその行動が跳ね除けられるのはなんとも不憫である。


狭間はというと、頭を掻きながらなにか気にしているようだった。

どうしたの。と苗木が問いかける。




「 なんか今日変な夢みたんだよなあー

  森の中でさ、なんだろ、思い出せねえ 」




思い出す間もなく、チャイムが鳴った。

狭間の夢の話などチャイムの音に勝らなかったのだ。
















長い午前の授業も終わり、生徒会室。

昼休みになり苗木は資料と向き合っていた。





____そして、安室もいた。





やはり暇なのだろう。

へー、初めて入ったわあ、と生徒会室を物色する安室に気が散って資料はなかなか進まない。


というかそもそも、生徒会室に一般生徒は入っていいのだろうか。普段は鍵がかけられているため、一般生徒は立ち入り出来ないのだが、今回は苗木が鍵を預かっていた。


生徒会室への一般生徒の立ち入りがもし禁止であったら。

そして、苗木が一般生徒を生徒会室に入れていることが池上にバレたとしたのなら。


目の前の資料の山を見つめ、苗木は目眩がした。




しばらくすると、廊下でざわざわと人だかりの声がする。

この音は昨日も聞いた気がする騒がしさだ。

苗木は震えた。先程、想像していたことが現実になるかもしれないからだ。


苗木は安室を無理やりロッカーに押し込み、鍵をかける。




「 ちょ、なに、なに、何に巻き込まれてるの僕は 」




若干の抵抗も虚しく、安室はロッカーに収まった。

その少し後にやはり池上は生徒会室に入ってきたのだ。

ぽたぽたと冷や汗を資料に垂らしながら苗木は池上を見る。




「 お、ちゃんと昼休みも取り組んでんだ 」




熱心じゃん、と池上は昨日と同じく定位置につくのだった。池上の読んでる漫画は昨日は気にならなかったが、異世界転生モノ、もしかしたら、実は、結構、そっちの気があるのかもしれない。




「 生徒会長ってオタクなんですか? 」




包み隠さず、オブラートに包まず、ストレートに苗木は問いかけた。が、池上は見向きもせずに無視だ。

少し心にくるものがある。

よく見ると生徒会室の本棚には特定の漫画本がズラリと並んでいて、チラホラとフィギュアまで置いてあり、あながち間違いではなかったらしい。


そんなこんなをしてると予鈴がなった。

池上は予鈴を聞くと漫画本をしまい、先に出ていってしまった。苗木も急いで資料を片付け、教室へと戻るのだった。





教室に戻り、授業が始まる。

いつも隣にいるはずの安室が何故かいないのだ。


そう。


ハッと安室をロッカーに入れっぱなしなことに気が付いた苗木は授業を抜け出し、急いで生徒会室へと駆けた。

どのくらいロッカーの中にいたのだろう。

密室でヘロヘロになっている安室がロッカーから倒れてきた。




「 …お前、次同じことしたらお尻引っぱたくよ… 」




なんとも不憫である。










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