表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君へ贈る手紙1  作者: しゃしゃ
1/2

記憶の旅

母が神妙な面持ちで手紙を渡してきた。

桜が淡く描いてある綺麗な便箋。

そこには、「さくらへ」と綺麗な文字で書かれていた。


「どうしたの?お母さん。なんの手紙?」


少し間をおいてからゆっくりと、母が口を開いた。


「さくらの本当のご両親はなくなっていることは、言ったわよね。実はまだ、あなたに言っていないことがあるの。」


母からその話がでるとは驚いた。

去年の誕生日、私達には血の繋がりがないって言われてショックだった。けど、血の繋がりがなくてもこんなに大事に育ててくれて、私の本当の両親には生んでくれてありがとうって前向きに思えてた。

あんまり母や父も話したくなさそうだったから、それ以降会話にその話がでることもなかったし。


「言ってないことって何?」


「……実はあなたにはお姉さんがいるの。」


「え、」


涙がこぼれてきた。姉がいるなんて初めて聞いたはずなのに、なぜこんなにも胸が苦しくなるんだろう。血が繋がっていないことを聞いた時よりずっと。


昔のことは小学1年生ごろまでしか覚えていない。思い出そうとしても、思い出せなくて。思い出したくないみたいに。


「ごめん、ちょっと出掛けてくる」


突然湧いた辛い悲しみから逃げるように家を飛び出した。

冷たい夜風が私の頬をなでる。

(思い出さなきゃいけないことがある気がする…)

.

.

.

「さくらーーー!幼稚園行くよー」


いつものように小さな家に響き渡る声。


「ゔぇぇーーーん、いやだぁぁぁ」


「なんでかなぁ、幼稚園楽しいと思うよ?」

困ったような顔をして姉は首を傾げた。

優しい声とささくれがある痛々しい手でなでながら私を落ち着かせる。


「お姉ちゃんと一緒にいるの!!」

駄々をこねて地団駄を踏む私。


「私も学校行かなきゃだめなんだけどなぁ」

そんな会話が毎朝のようにあった。

.

.

.

姉の存在を思い出すと、なかなか思い出せなかった記憶が鮮明に蘇ってきた。

記憶にある優しい姉の姿。姉はどこへ行ってしまったんだろう。なぜ、私は忘れていたんだろう。







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ