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お兄ちゃんの前世は猫である。その秘密を知っている私は転生者である。  作者: ma-no
小学校である

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080 ジュマルの卒業式である


 お兄ちゃんの前世は猫である。私の名前は広瀬ララ。警察、嫌い。


 朱痰犯閃(スタンハンセン)のことがようやく全て片付いたので、ヤクザ刑事のオファーを検討してみたけど、調べたらブラックすぎたので却下。母親にも死ぬほど止められたよ。

 「証拠品も大事に扱えないカス」とも怒っていたけど、黒猫キーホルダーは私が壊したの。ゴメンね。お母さん……



 それから日々が過ぎ、激動の2学期も終わると、冬休みは恒例の温泉旅行。何度も行っているからジュマルも電車は慣れたもので、乗った瞬間から熟睡しているから吐くことはない。

 今回は海の近くの温泉街に来たので、漁港を回って新鮮な魚の食べ歩き。私は高級品ばかり食べて、ジュマルは尾頭付きを頭から。金持ちにもジュマルにも慣れた

ものだ。


 予約していた高級宿に入ったら、さっそく温泉。私はもうすぐ6年生だから、断固、混浴拒否!

 私と母親は大風呂に入りに行き、ジュマルは父親と豪華な部屋の備え付きのお風呂。仲良くやってるかは知らない……無理だろうね。


 海が真ん前にある迫力ある温泉を堪能して部屋に戻ったら、豪華な夕食の開始。魚が美味しすぎて、食べ過ぎだ。これは確実に太ったな。

 ジュマルも食べ過ぎてお腹がすんごいことになってる。元が猫だから、出された物は無理して食べるもんね。もったいないから戻すなよ~。


 そうして腹ごなしに、私と母親は備え付けのお風呂でまったり。極楽とは、このことを言うんだね~。

 つい口から「極楽、極楽」と出てしまったので、母親に「たまにララちゃん、お婆ちゃんみたいだよね?」とか言われてしまった。ガッツリお婆ちゃんなの……



 お風呂を済ませば、あとは寝るだけ。さすがに父親がかわいそうなので、川の字だけはやってあげてる。


「来年には、ジュマルも中学生か~……」

「そうね。長かったわね……」


 両親は天井を見詰めて苦労話をして涙ぐんでいるけど、私はまだ起きてるよ。ジュマルは寝てる。てか、苦労したの、私じゃない?


「なんだかんだ言って、かなり普通になって来たよな?」

「うん。『にゃ~にゃ~』言ってた頃は、どうしようかと……私、猫でも産んだのかと思って泣いたわよ」

「僕も、猫に取り憑かれていると思っていた。恨まれることをしたのかと思って御祓いしに行ったよ」


 あ、やっぱり苦労してるな。でも、正解は母親。私もジュマルには驚かされたな~。飛んだもん。着地なんて音も振動もなかったんだよ。顔をベロベロ舐めて来るし。

 アレ? 私、赤ちゃんの頃の記憶が鮮明にある。普通、3歳ぐらいまでの記憶なんてないのに……これは転生特典というより後遺症だな。大人脳のせいだ。


 両親の苦労話を聞きながら私もその苦労を体験していたから思い出していたら、私の話に変わった。


「やっぱりララちゃんのおかげよね」

「ああ。動物園で『待て』と叫んだあの時、救世主とか言ってしまったけど、本当だったもんな」

「救世主は、その前からよ。立っちだって言葉だって、ララちゃんが教えたようなモノよ。ジュマ君はマネしていたんだから」

「そうだったな。ララはいつでもジュマルの前を歩いて導いていた」

「私、たまにララちゃんのこと、ママ友みたいに思っちゃうのよね~」

「あはは。かわいいママ友だな」


 2人で褒めているから居たたまれなかったけど、ママ友発言にはギクッとなった。私もお母さんのこと、ママ友感覚だったし。タヌキ寝入りがバレてませんように!


「あとは中学だけだな……」

「ええ。中学を卒業さえしてくれれば……」


 両親はそんなことを言いながらしばらく黙っていた……


(え? 何この間……義務教育が終わったら、お兄ちゃんを投げ出すつもり? まだまだこれからでしょ!?)


 なので、私も焦っちゃった。


「高校は!? 大学は!? 就職は!?」

「ララ……」

「起きてたの?」

「あ……」


 そしてタヌキ寝入りもバレちゃった。


「まぁ高校ぐらいは出したいけど、あの成績じゃあ……」

「そうなのよ。行けると思う?」

「えっと……」


 うん。どれだけ私たちが頑張って教えても及第点ギリギリじゃ、厳しいか……でも、私は諦めない!


「しょ、少子化だからなんとかなるんじゃない?」

「ムリヤリ行かせなくてもいいんじゃないか?」

「何か問題起こすの目に見えてるし……」

「諦めないでよ~~~」


 私のタヌキ寝入りは何も言われなかったけど、両親共にジュマルについては諦めモードだったので、家族旅行は家族会議に様変わりするのであったとさ。



 それから新年を迎え、誕生日も迎え、ついにジュマルの卒業式となった。


「「ううぅぅ……」」


 諦めモードであった両親も、この日だけはジュマルを祝って涙していた……


「卒業生の皆さん、お別れは寂しいですが、輝かしい未来に旅立つ皆さんを、私たちはいつまでも応援しています。これからも良き人生の旅を楽しんでください。在校生代表、広瀬ララ」

「ララちゃ~~~ん!」

「ララ~~~!」


 いや、私が送る言葉を担当していたから、両親は感動して涙していたのだ。だって、先生から押し付けられたからやるしかなかったんだもん。

 両親以外も泣いてる人が多いから、私はけっこう文才があるのかも……小説家はキープで!


 こうして小学校の卒業式は、私が主役を奪って涙の最後と……


「「「「「ジュマル君、行かないで~~~!!」」」」」


 いや、腐ってもイケメンのジュマルが、在校生の女子に引き留められまくる涙の最後になるのであったとさ。


 ぜんぜん相手にしてなかったけどね。


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