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お兄ちゃんの前世は猫である。その秘密を知っている私は転生者である。  作者: ma-no
小学校である

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064 平和な日常である


 お兄ちゃんの前世は猫である。私の名前は広瀬ララ。アネゴって呼ばないで。


 糸本さんたちの訪問で、音だけだった私のやらかし談にポーズがついてしまったが、そろそろ夕方。

 ここで糸本さんは封筒を3通、母親に渡そうとしていた。中身は、心ばかりの弁護士費用、井口先生から勝ち得た慰謝料、学校からいただいた御見舞い金。

 総額はわかりません。あの厚さから見るに、百万円には足りないだろうね。


 そんなお金は、母親は貰えないと押し返していた。勝手に始めて勝手にやってたもんね。

 しばし糸本さんも貰ってくれと攻防が続いたが、母親の勝利。邪悪な顔で言った「うち、金持ちだし学校からガッポリ貰ったからお気になさらず」が決定打となっていた。


 こうして糸本さんたちは、何度も何度も頭を下げて帰って行ったのであった……


「ところでママって、学校からいくら巻き上げたの?」

「巻き上げたって酷くない? (じん)君の費用と合わせて、なんとか赤字を回避した程度よ~」

「な~んだ~。それならあんな顔で言わないでよ~」

「フフン♪ なかなかいい演技だったでしょ? まぁ学校からは、今度は割のいい仕事貰えることになってるけどね~」

「営業を兼ねてたんだね……」


 たくましい母に感服しっぱなしの私であったとさ。



 それから私は平和になった学校に通い、ジュマルが新しい担任と上手くやっているかを確認しに教室を覗きに行っていたら、(がく)君と数人の男子が私の前に並んで頭を低くした。


「アネゴ、お疲れ様です」

「「「「「アネゴ、おつかれっさ~」」」」」

「大勢でアネゴって呼ぶな!」


 休憩時間に顔を出すと、なんだか私の前だけヤクザの集団みたいになるから困ったモノだ。


「ドサンピン、いい加減にしないと怒るよ?」

「アネゴのほうこそ、あんなところでドサンピンとか大声で言うから、わてのあだ名がドサンピンってなったんでっせ?」

「いいじゃん。どうせみんな意味わかってないんでしょ? アネゴよりマシよ」

「そうですけど、どう考えてもドサンピンのほうが酷いですわ~」


 この日はちょっと言い合って教室に帰り、1週間が過ぎると、私と岳君は池田先生に呼び出された。


「上級生や他のクラスの人が、2人のことをあだ名で呼んでいるのですけど、何か心当たりはありますか?」

「「は、はい……」」

「もう、他の人に広めるのはやめましょっか? あだ名も禁止ね」

「「はい……」」


 そう。私たちはジュマルに近付く人物にはこぞってあだ名で呼ぶようにロビー活動をしていたから、全校生徒から「ドサンピン」「アネゴ」と呼ばれるようになっていたのだ。

 だって、こいつのせいで知らない上級生から私がアネゴって呼ばれるようになって腹が立ったんだもん。ちょっとした仕返しのつもりが、まさかこんなに大事になるとは……


 こうして私たちは痛み分けで、あだ名戦争は終わるのであった。


「「「「「姉さん、おつかれっさ~」」」」」

「姉さんもアネゴと同じ意味なの!!」

「さすがに姉さんはあだ名と言い難いですな~」

「私は年下なの~~~!!」


 ジュマルのクラスだけは、私への尊敬の念が尽きないらしく、呼び方が変わっただけであったとさ。



 私が「姉さん」と呼ばれるようになってからは、休憩時間に行くことはやめたのでジュマルのクラスメートとは疎遠になり、月日が流れると4月になった。

 私は3年生。ジュマルは4年生。クラス替えがあったかはわからないので4年生のクラスを覗きに行ったら、結菜(ゆいな)ちゃんと岳君に見付かった。


「ララちゃん。今回も?」

「うん。変わってなさそうだね」

「そそ。やっぱり私はジュマル君と赤い糸で結ばれてるのよ~」

「ド、岳君も結ばれてるんだね」

「いま、ドサンピンって言おうとしまへんでした?」

「さあね~。ま、今年もお兄ちゃんに殺されないようにしなよ。私は行くね~」

「怖いこと言わないでくだはりませ~」

「ララちゃん!? お姉さんの話、ぜんぜん聞いてなかったでしょ!?」


 自分の世界に入っていた結菜ちゃんは無視して、岳君は脅してから、私はさっさと自分のクラスに急ぐのであった。



 私が3年生にもなると、あの猫に子供ができた。一男二女……二猫一猫耳? 赤ちゃんはかわいいとは思うけど、9歳で子持ちって早すぎない?? ま、去年はモザイクの入った夜の映像を見せられていたから、これで少なくなるか。

 それには驚かされたけど置いておいて、友達から遊びに誘われることが増えた。この歳ぐらいから、友達どうしの交遊が増えるのかもしれない。

 どうしていいかわからないので、先輩のジュマルに聞いてみたら「しらん」とのこと。おそらく誘われても断っていたか、面倒くさいから「しらん」と答えていたのだろう。役に立たないな。


「ママ。週末に友達と遊びに行ってもいい?」


 というわけで、母親に聞いてダメと言ってもらえたら、断りやすい。だって、お人形遊びとかやらされたら困るもん。


「う~ん……どこに行くの?」

「うちから離れたところの河川敷に集まるみたいだけど……」

「河川敷か~……ジュマ君と一緒ならいいよ」

「なんでお兄ちゃんも?」

「ララちゃんが誘拐されたら困るじゃない。ボディーガードよ」

「お兄ちゃんは困らないんだ……」

「ジュマ君ならなんとかするでしょ」


 残念ながら母親から許可が出てしまったから、週末にはジュマルを連れて河川敷へゴー。私は電動自転車で進み、ジュマルはダッシュだ。


「お兄ちゃん! 壁の上を走らない!!」


 たまに後ろを見ると、変なところを走っているジュマルであった。



 それから河川敷に到着すると……


「「「「「キャーーー! ジュマル君だ~~~!!」」」」」


 友達はジュマルに夢中。私そっちのけで、キャピキャピやってる……え? 遊ぶんじゃなかったの??


「なんかようわからんけど、走って来てええか?」

「見える範囲でね。猫とか犬とケンカしちゃダメよ?」

「おう! ほなあとでな~」

「「「「「キャーーー!」」」」」


 私の護衛のはずのジュマルは邪魔なので追い払ったけど、友達はずっと目で追っている。さらに恋バナになってジュマルのことばかりを質問されるので、何しに来たのかサッパリわからなくなる私であったとさ。


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