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128 私の作戦である


 お兄ちゃんの前世は猫である。私の名前は広瀬ララ。みんないいヤツなのに、ジュマルはムカつく。


「お兄ちゃん……三日坊主って知ってる??」


 あんなとんでもないことしておいて、ジュマルが勉強を頑張っていたのは三日だけ。今日はずっとリビングでテレビを見ながらゴロゴロ、時々足で顔を掻いてる……この猫めっ!!


「知ってるで。三日間、坊主にする罰やろ?」

「できるか! 三日で髪の毛なんて伸びないわ!! 誰から聞いたのよ!?」

(がく)やったかな?」

「あのドサンピ~~~ン!!」


 ジュマルの自信満々の答えは大ハズレどころかただのボケ。いらんこと教えやがって!!


「三日坊主ってのはね。お寺の修行は辛いから三日で逃げ出してしまうこと。転じて、何かやっても長続きしないって(ことわざ)ね」

「へ~……なんでそんなこと聞いたん?」

「まさにお兄ちゃんが三日坊主だと言ってるのよ!!」

「へ~……髪の毛あるけどな」

「もう忘れてる!?」


 ダメだこりゃ。せっかくいい大学見付けて来たけど、ジュマルは受かりそうにない。両親も昨夜は家の中を走り回っていたから、ジュマルが逃げ回っていたんだな。

 どうりで今朝方、暗い顔で「もう諦めよっか?」とかコソコソと話をしていたわけだ。早すぎるよ!!


「お兄ちゃん、やっぱりさ~……なんでもない」

「なんやねん。気になるやん」

「夕飯、焼き魚と煮魚、どっちがいい?」

「う~~~ん……究極の選択やな。昨日焼き魚食べたから、今日は煮魚と言いたいところやけど、やっぱり焼き魚のが好きやし……」

「煮魚一択だろ」


 ちょっと話を逸らそうとしただけなのに、ジュマルは面白いほど悩み出したので、あとで聞くことに。私の助言は無視された。私、間違ってないよね?

 なんだか納得いかない気持ちで自室に入ったら、勉強机に着いて美しい胸を撫で下ろす。小さくないんだからね!


「あっぶな~。スポーツに戻れと言うところだったよ。言っちゃうとヘソ曲げて(かたく)なになりそうだから、ガマンガマン」


 私の作戦はこうだ。スポーツ関連に触れずにジュマルから言って来るのを待っているのだ。

 元々ジュマルは体を動かすことが好きなんだから、アレだけ毎日アホみたいに走り回っていたからいつか体がウズウズして我慢できなくなるはず。庭には各種ボールが無造作に転がっているから、けっこう早くに落ちると予想している。

 そこでサッカーボールでも蹴ったら儲けもの。「やっぱりやりたいんだね。私に任せて!」っと言ったら、ジュマルも泣き崩れながら「ララ先生。スポーツをやりたいんです」と言うはずだ。


「なんかどっかで聞いたセリフね……ま、いっか」


 ちょっと気になることはあるけど、ジュマルが庭を出た時にシメシメと追いかけたら、ジュマルはサッカーボールやバスケットボールを寝転んだまま手でコロコロしてた……


「猫だった~~~!!」

「ん? 大丈夫か??」


 作戦、早くも失敗。私は顔を両手で覆い、うずくまるのであったとさ。


 スリスリするなよ!!



 こんなこともあったので、ここ数日は1人作戦会議。ララちゃんネルはエマがスランプとか言うから撮影もできないの。

 ジュマルの「スポーツ引退」の余波が妹である私にも波及したせいで登録者が激減したから、かなりショックを受けて焦っているってのが、エマのスランプの原因だろうね。

 本当は私とジュマルへの誹謗中傷が凄まじかったから、両親が成敗しまくったのが激減の理由なんだけど、いい出しづらいからエマには秘密だ。


 最近浮かんだいい作戦は、違うスポーツにコンバート。陸上なら、ジュマルは無双状態なんだからやらせてみたい。企業に雇ってもらえば一生安泰だとは思うけど、このご時世、いつ終身雇用じゃなくなるかわかんないんだよね~。

 やはりフリーでやるのがベストか。オリンピックの金メダリストになれば、CMに引っ張りダコになれるしね。日本中の大企業からオファーがあれば、プロ野球ぐらいは稼げるはずだ。


 いや、それだけ動き回れば、また野球とかやりたくなるかも? 入りとして「一緒にランニングしよう」とか誘ってみよう!


「お兄ちゃ~ん。ちょっと頼みがあるんだけど~?」

「ん? ええで」

「や……ダイエットしようと思うから、ランニングに付き合ってくれな~い?」

「ええで」


 ジュマルはすぐオッケーするので調子に乗って「野球に戻れ」と言い掛けたが、なんとか踏み留まってランニング。

 とりあえずランニングコースのある河川敷に向かってみたけど、逆立ちで走るなよ。そんな競技ないの~~~!


 道行く人に変な目で見られながら走っていたら、なんとか河川敷に着いたけど、この時点で私は疲労困憊。逆立ちなら勝てるんじゃないかと欲を掻くんじゃなかった。


「ゼーゼー……も、もう無理。帰ろ。ゼーゼー」

「えぇ~。せっかく来たんやから、もうちょっとええやろ~」

「ゼーゼー。私の目が届かないところに行かないでよ。ゼーゼー」

「にゃ~~~!」


 このあと私は、無限の体力を持つジュマルに背負われて帰るのであったとさ。



 私の作戦はこれで終わらない。でも手詰まりとも言う。なので神様に祈ってみたけど返事はなし。アマテラスノオオミカミを奉る神社にタクシーで乗り着けて必死に祈ってみたけど、まったく反応がない。


「アマちゃ~ん。いっつもどうでもいい時は出て来るのに、なんでよ~。お兄ちゃんが大変なのよ~。ヒントぐらいちょうだ~~~い」


 けっこう大きな声で愚痴っても、出て来る気配がない。そういえば、あの猫の動画でカットされているところや、セリフに「ピー」って入っていることをしつこく聞いてから出て来なくなったな。

 いったいアレはなんだったんだろう? 時の賢者のところから始まったということは……ムムムム。わっかんない。


「もういいや。ホント、神様って役立たずよね~……イタッ!?」


 私の頭に何か当たったので振り返ったら、ドングリがポンポンと転がっており、カラスが「アホ~」っと鳴きながら飛び去って行った……


「いまのアマちゃんでしょ!? 出てこ~~~い!!」


 心の狭い神様の行動に、地団駄を踏む私であったとさ。


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