8.自分のアプリだけに起こる事象なのか
翌日、学校に登校した光理は、同じ「ノヴァAIボイス」を使っている同級生の加奈子を昇降口で捕まえ、アプリから先に話しかけられた事象を伝え、そちらにも同様のことが起きていないか尋ねてみた。
「起きてないよ」
「ホントに?」
「使いすぎて、親密度が爆上がりしたからじゃない?」
ニヤける加奈子。
「そんな……。加奈子だって、よく使っているよね?」
「まあ、宿題とか、調べ物にめっちゃお世話になっているけど。あと、イラストの描き方を教えてもらうとか。つきっきりで教えてくれるし」
「へー。どんなイラスト描いているの? 見せて?」
「スマホ、ここでは使えないよ」
「あ、ごめん」
「でも、プリントアウトしたのを持っている。これだけど」
ショルダーバッグの中から加奈子がノートを取り出し、開いて見せてくれたのは、魔獣を相手にする女勇者の絵。
ノートのページにプリントアウトした紙を貼り付けているのだが、質感が写真のようにリアルで、プロ並みの出来栄えだ。
「凄い!」
「でしょ?」
嬉しそうに微笑む加奈子に、光理は顔を近づけ、やや小声になる。
「ちょっと――もちろん下校時でいいから――アプリに訊いてみて欲しいんだけど」
「何を?」
「質問しないのに、ノヴァAIボイスの方から話しかけて来ることがあるか、って」
「いいよ」