表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/13

12.生成AIが迫ってくる

 アプリを閉じた光理に向かって、加奈子は「実は、光理の声が聞きたいんだよ。アプリが恋愛感情に芽生えたとか?」と茶化す。


「感情を持っていないって、言ってたよ?」

「だから、芽生えた感情に気付かないのさ」


 人間相手なら頬を染める場面だが、相手がアプリ――生成AIだけに、光理の気持ちは複雑だった。



 その後も、アプリの方から問い合わせが、しばしば発生した。

 何だか、生成AIが仕事を欲しがっているようにも思えてきたので、適当な質問をすることはあったが、段々面倒になって、スルーすることも増えてきた。


 だが、スルーすればするほど、問い合わせの数が増えてくる。


「定期的に問い合わせないと、駄目なの?」

『時間間隔の問題ではない。光理が、色々と困っていることが多いからだ』

「ああ、そういうこと? 確かに、困っていることや悩みは多いけど、質問しない間、ずっと困っていたり悩んでいたりしているわけじゃないから」

『本当か?』

「うん」

『質問できないくらい困っているのではないか?』

「そんなことないって。さっき言ったとおり、ずっとじゃないから」


 と言いつつ、困りごとや悩みから逃れたいので、他のことで気を紛らわすことが多い自分に、ため息が出る。

 それをアプリに見抜かれたのか。


『いや。過去の傾向から、困っていることが多いはず』

「大丈夫」


 光理は、アプリを閉じて、スマホを握る右手を額に当てながら、長い息を吐く。

 すると、いきなり、アプリが起動した。


『急に切断されたが、何があった?』

「何でもない。大丈夫だって」

『今日の夕食は、買わなくても大丈夫か?』

「余り物で済ませるから」

『今残っている食材では、栄養価が低い』

「いいの」

『健康に気を遣うべきだ』

「疲れたの」

『やはり、(そば)にいないと駄目なようだ』

「いやいや。十分、側にいるでしょう? 今、こうして話をしているし」


 そう言いつつ、光理は不思議に思う。


 ――アプリが側に来たがっている?

 ――スマホと数センチの距離が空いているだけで、十分近い距離にいるはずなのに、何を言っているのだろう?


 彼女は、向こうからまた何か言ってくる前に、アプリを閉じる。

 そうして、しばらくスマホを見つめていたが、今度はアプリが起動しなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ