一話 抱擁者
『初めまして、私はアリアです』
『貴方に私のスキルを付与します』
『さぁ、世界の為に生きなさい』
そんな女性の言葉で、俺は目を覚ました。
不快ではない夢の中の言葉。
しかし、決して理解は出来なかった。
「なんで、異世界にいるんだよぉぉおお!!」
今の状況を目にするまでは。
俺は城山日向。
つい昨日まで高校生活を堪能していた、卒業生だ。
順風満帆な高校生活を送り、彼女だっていたこともある。
そんな俺が、今何処にいるかというと……
異世界の草原のど真ん中だ。
たしか昨日の夜、布団にくるまって寝たはずだ。
その前の日だって同じだった。
「ナァンデダァァァアアア!?」
叫び声は草原一体に響き、木霊する。
眠りから目覚める時に、聞こえた様な気がする女性の声。
「何だっけ……スキルを付与? どう見れば……」
状況がわからずに頭を掻いていると、ふと言葉が思い浮かぶ。
『ステータス・ビジョン』
「は? ステータス・ビジョン?」
思い浮かんだ言葉を呟くと、効果音と共にステータス画面が開く。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
名前:城山日向
性別:男 年齢:18
クラス:冒険者
称号:転移者
スキル:抱擁者
魔法属性:全属性
Lv.:01
筋力:D 耐久:D
魔力:D 抵抗:D
俊敏:C 器用:D
幸運:A 魅力:SSS +
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「んん!? レベル1にしては魅力が高過ぎないか!? なんだこのステータス極振り感」
訳が分からないまま自分のステータスを見続ける。
何かしらのヒントがあることを期待したが、これといった情報は無かった。
あるとすれば、称号の転移者のみだ。
「ふむ、分からん!! てか、街は何処だよ……」
数分ほど悩んだが、現状はさほど変わりはしなかった。
ある程度で諦めがつき、あたりを見回しすと、視界の端で何かが大きな動物に追われているのが映る。
「あれは人と、魔物? ん、こっちに向かってきてね!?」
追われている人はどうやら俺を見つけたようで、こちらへ向かって全速力で走って来ていた。
人を追っている魔物らしき生物は、牛のような見た目をしていた。
『そこの人ぉぉ!! 助けてぇぇ!!』
追われている人は、よく見ると女性であり、必死に助けを求めていた。
俺の元までうまく辿り着けたは良いものの、安心からか足を躓かせ、俺の胸元に収まる。
『スキル:抱擁者 発動!!』
『全ステータス極大アップ、オールSSS』
『スキル:威圧を取得』
『威圧を発動しますか? Yes / No』
女性を抱きしめた途端、訳が分からないほどの情報を取得した。
危険な魔物が直ぐそこまで差し迫っている為、なりふり構わずイエスだけを思い浮かべた。
『フゴッ!?』
魔物は急に驚いた顔をし、徐々に冷や汗を流し始める。
徐々に後ずさりを始め、最後には必死に逃げ出した。
この場の状況が飲み込めず、とりあえずで女性に声をかける。
「あの、大丈夫です? あの魔物みたいなやつは、何処かに逃げ出しましたから」
「えぇ!? あの魔物、ここら辺では最強の存在なんですよ!?」
「へっ?」
どうやら俺は俺TUEEEができる世界に来てしまった様です。