6.初めての自信と確信 経験は自覚を育て、縁を育む
カスタマーセンターに配属されて半年が過ぎたころ、別の部署への配属が決まった。同じカスタマーセンターではあるが、その会社にかかってきた電話ではなく、別の会社にかかってきた電話を取る、いわば委託業務のような仕事だった。当時私の精神は限界をかなり超えた状態だったので、部署移動はピンチでもありチャンスでもあった。あと少し遅かったらやめていたと思う。
新しい部署の上司は、それはもうかなりものをはっきり言う人で、最初は正直相性が悪いかなと思っていた。実際、私のいないところで、「できることなら前の部署に返還したい」なんて言っていたという噂も聞いた。あの時になぜやめなかったのだろう、と本当に思う。結論から言うと、この時やめなかったのは大正解で、この人はのちの恩師でありよき理解者になるのだから、人生、特に人の縁というのはわからないものだとつくづく感じる。
新たな部署に配属されて4か月ほどが経ったある日、新たにメール返信の仕事をするという話が持ち上がった。当時体調不良で電話を満足に取れなかった私は、研修を上司と受けることになった。研修を受けて実践する。正直、得意だなと思った。電話はお客様の質問にすぐに自分の口から答えなければいけない。反面、メールは自分の世界に一度落とし込んで、文章で返すことができる。得意な文章を活かせるし、何よりもともと誰よりもマニュアルやサービスを読み込んでいたのが功を奏した。「やらせてください」私はメール中心の業務を希望した。
それから、上司のもとでメール業務を積極的に行った。成績は爆発的に上がり、自信がついてきた。そのような自信の中で、上司のことも分かってきた。この人は、非常に素直で信賞必罰がしっかりしている人。自分からコミュニケーションを取りに行くことが多い分、誤解されることも多い人だと思った。私も最初は誤解していた。多分、私とは間反対だから、理解するまで時間がかかったんだと思う。
この人なら、私のことを理解しても、態度を変えずに接してくれる。そう思ったから、全てを話した。上司は態度を変えなかった。いや、ちょっとだけ仲良くなったかもしれない。その後もメール業務で、ほめられ、叱られ、伸ばされた。初めて、人と勝負したと思える経験もした。この時の上司がいまだに「俺の育てた最高傑作は篠田だ」なんて言うことがあるなんて聞くと嬉しくなる。
この部署で経験したことは、一つに自分には文章で勝負できる力がある、と確固たる自信を手に入れることができたこと、そして、自信が持てれば視野が広がり、視野が広がれば縁も広がる、ということだ。後者はADHDだろうが、普通の人だろうが変わりはないと思う。