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2.普通の人と比較する悪循環

 普通の人に対してADHDについて知ってほしいことを一つ書くと、「興味があることは得意なこと」だ。私の場合、文章を書くことに対しては並々ならぬ興味があった。大学では文章による表現を専門的に学び、我ながらかなりいい成績で卒業できたと思っている。加えて、プロ野球、小説、漫画など、興味がある分野に関しての記憶力はとてつもない。

 ここまで書くと、それは普通の人でも同じだと思うかもしれない。ただ、ADHDの場合は、補足説明が必要だ。「興味があることは得意なこと。※興味がないことは基本苦手で集中できません」。もちろん、ADHDでも人によって千差万別あると思う。ただ私の場合はここが一番苦労してしまう。興味がないことに対して集中を保てない。人の話を聞いているつもりでも、ふっと意識がどこかに飛ぶ。急に脈絡のないことを話してしまう。これは、興味がないことに対して、集中を保てないことによるものだ。

 それは日常生活の中にも及ぶ。例えば、ごみ捨てをしようと思っても、急に別のこと、食事やトイレのことを考えると、ごみ捨てが脳の一部から削除される。電気を消そうと思っても、漫画を読みたいという欲求が上書きされて、朝まで電気がつけっぱなし……。

 この症状の怖いところは、「普通の人でもあるある」な点だ。物事の優先順位を付けられなかったり、好きなことを優先してしまったり。そして、それを総じてケアレスミスという。そして、普通の人にもあるあるだから、それは直せる、と思われていることが最も怖い。ケアレスミスは努力でなくせるし、物事の優劣も、仕事をしていく中でついてくる。だから周りも本人も、「普通の人が克服できることが、どうしてできないんだろう」という視点に変わってしまう。

 多動性もそうだ。一般的に「空気を読む」ということは、人とかかわりが増える中でできるようになってくる。ただ、ADHDは、思ったことを口に出してしまう。決して空気を読んでいないわけではない。空気は読んだうえで、言葉を発してしまうのだ。私をはじめ、かかわってきたADHDの人は、「人と話すのは怖い」と多くの人が言う。これは、空気を読んでいるから、自分の行動がおかしいと気付いているからに他ならない。さらにADHDはすぐに態度が急変するときがある。いわゆる癇癪みたいなものだが、少々違う。自分の考えや視野と異なる状況に置かれたときに、気持ちの整理をつけるのが苦手なのだ。これも、はたから見たら精神のコントロールができていない。子供っぽいという結論になると思う。普通の人ができることだから、みんな悩んで克服していける、そういったことだから、私も、もしくはあなたもできるはずだと思うことこそ、怖いことなのだと改めて思う。

 私も例にもれずそうだった。自分が苦手だと思うことでも、少しずつ克服していけば、人は得意なところを見てくれるだろうと信じていた。ただ、普通の人のくくりにいる中で、それを求めることが無理だと大学に入ってから気づいた。「自分は普通ではない」と認めることこそ、一番の近道だ。私は今でもこう思っている。

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