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冒険者ギルドにもちゃんと成り立ちがあるんだなあ

「どうだ、なんか良いスキル持ってたか?」


 ステータスと、そして称号とスキルの確認をしているとナグロさんが横から声を掛けてきた。


「えっと、ガチャポンにカプセルボックスって言うのがありましたよ」


「んん? 聞いた事ないスキルだな。アイテムボックスってやつなら知ってるが……」


 御者台に揺られながら色々と世間話をした感じ、ナグロさんは経験も多そうな商人さんだと思えたので、スキルの事も色んなスキルを聞いた事がありそうだ。

 そのナグロさんをしても聞いた事がないスキル、ガチャポン。地球の娯楽というか玩具というか、そんな感じなので知らないのは当たり前かも。


 ていうか、あるんかい、アイテムボックス。俺もそっちが良かったよ。


「どういうスキルなんだ? リョウは全く知らない土地に飛ばされて来ちまったんだし、攻撃系スキルでもありゃ冒険者でもやりゃ暫くは食いつなげるだろうからな」


「攻撃系スキル……じゃ無さそうですね。というか、冒険者ですか」


 やっぱりあるんだな、異世界物お馴染みの冒険者って職業。


 ステータスがあったりスキルがあったり、ここまで異世界物定番のパターンだったからあると思ってたよ。


「おう。まあ、冒険者と歌っちゃいるが実態は何でも屋だわな。最初は本当に秘境とかの探索をしてる奴等の集まりだったんだが、そいつ等が秘境にある珍しい薬草だとか財宝なんかを売ってるうちに、そういった物を集めるのも仕事になってな」


「そうなんですね」


 へえ、この世界の冒険者の起こりは本当に冒険してたっぽいぞ。


「それで、何かアイテムを集めてもらうのも周りが冒険者に依頼するようになって、そのうちに「じゃあこれも」って感じで色々と冒険者に依頼が舞い込んで、今じゃ何でも屋と変わらない感じだ。むしろ冒険者ギルドの方も、仕事にあぶれて犯罪者になる奴を減らすって救済措置もあって、依頼にも街の清掃だの建設の手伝いだの、より一層何でも屋って感じになっちまったらしいんだけどな」


 そこまで説明してから「今でも冒険する奴は冒険してるんだけどな」と纏めてくれた。


「と、まあそれは良いか。戦闘スキルは今持ってなかったとしても、そのうち手に入るかも知れないしな。そうなったら、あんまり自分のスキルは周りに言いふらさない事だな」


「有用なスキルだと目を付けられたりします?」


「だな。あと金になりそうなスキルとかな。悪用することに関しちゃ頭が回る奴ってのは、どこにでも居るもんだ」


 確かに俺のガチャポンスキルは悪用出来るだろうな……事実、悪用したつもりはないが俺は三百円で出た麦茶の副産物であるグラスを大銀貨三枚でナグロさんに売りつけてしまっているわけで……。


 ……やっぱり素直に謝ろうかな。ナグロさんが優しいだけに、色々教えてくれる度に罪悪感で心臓がチクチクする。


「あの……ナグロさん、俺のスキルを後で見てもらえませんか?」


「なんだ、俺が言った事が分からなかったか? 冒険者にならなかったとしても、自分のスキルってのはほいほいと教えるもんじゃないぞ。信用した相手にだって、状況によっちゃ教えねえもんだ」


「えーと、その、信用……とまでは言いませんが、まだ会ったばかりですし。ただ、ナグロさんの事は信用しても良いかなってぐらいには良い人だと思ってます。それに、ちょっとスキルの事で謝りたい事もあるので……」


「……そうかい、そう言ってくれるなら聞いてやるよ。それと、スキルの事でって事は、自分の知らない間に勝手にスキルが発動してたとかか? 自分のスキルを把握してなかった奴にはそういう事が起きる事もあるからな、それはあんま気に病まなくて良いと思うぞ。リョウの里じゃスキルも使ってなかったみたいだが、スキルを扱ってる世界じゃありがちな事故の一つだ」


 やっぱり良い人だな、ナグロさん。


 うん、思った通りにちゃんと謝っておこう。大銀貨もお返しして、ガチャポンから出るって事を知ってもらった後で再度適正な値段で買ってくれないかお願いしてみよう。

 もちろん、一度は騙したので二度と買ってやるかって怒られる可能性の方が高いけど。


 どうせ異世界なんだから、自分の力を隠してお得に売り捌いちゃえと思っても良いのかも知れないけど、地球で育った倫理観もあるので「これは悪事で、詐欺と呼ばれるものなんじゃないのか」と一度考えだすと開き直るのは難しい。


「それでも見て欲しいです。でも、移動しながらは……多分やめた方がいいかな?」


 荷台でならガチャポンも出せそうだけど、道の途中で馬車を停めさせてナグロさんに荷台に来てもらうわけにもいかないだろうし。

 そもそもガチャポンがスキルなのは分かったけど、どうやって出すんだ? 一度ゆっくり試してみないとな。


「じゃあ次の野営地で見てみるか。あー……その、他の奴には見えないように俺だけに見せるって事で良いんだよな?」


「はい、それでお願いします。ちなみに街までは、あとどれぐらい掛かるんですか?」


「今日と明日は野営地に寄って、明後日に到着だな。今から行くのはテルサの街だが、リョウと最初にすれ違った場所からなら、街道を逆に行けば一日でホルディーって街に着いてたんだがな」


「ありゃ、遠い方に着いて来ちゃったんですね。でも、知り合いも居ないし、ナグロさんと一緒の方が安心だったので、助かりましたけど」


 こうやって色々と教えてくれるので、本当にありがたい事だった。


 そもそも、こっちの世界に来たばかりだからどっちの街が良かったとか、判断基準も何もないしね。知り合った人と一緒に行った方がよっぽど良いや。

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