カプセルボックスを使ってみよう!
跳ね馬亭の前まで送ってもらってカッシュさんとそこで別れると、宿にはまだナグロさんが来てなかったので表でナグロさんを待つ事に。
台所を使わせてもらう交渉はナグロさんがしてくれるって事だったし、宿も同じ所を取ろうって言ったのもナグロさんだったから、先に部屋を取らずに待ってた方が良いだろうとの判断だ。
それは正解だったようで、なんとナグロさんが三日分の宿代を奢ってくれた!
いや、もちろん最初は日本人の謙遜の心で丁寧にお断りしようとしたんだけど、稼がせてもらったお礼でこれからも稼がせてもらえる先行投資みたいなものだと押し切られたので、自分からねだったわけじゃないぞ!
「こりゃ美味いな! こりゃあ、肉体労働してる奴等にゃ良さそうだな。普通のやつにゃ味付けが濃くてガツンときすぎかも知れんが……」
そして台所を借りて作った照り焼きに対する感想がこちら。
この世界の料理は基本的に薄味のものばかりらしい。ナグロさんと野宿をした時にもらったご飯は味が濃いめだったけど、あれは保存食だから塩がふんだんに使われているだけであって、こういう街中の料理屋とかに行けば薄味が基本なんだって。
日本人であり更に育ちざかりの年齢である俺としては濃い味のものを食べたい限りなのだが、そうなると自分で作るしかないのか……醤油と味噌がガチャポンに入ってて助かったと思うべきか、これは。
砂糖も高いらしいので、うん、やっぱり感謝しておこう。とても良いガチャポン内容だった。もう調味料シリーズの中身全部出しちゃったけど。
「この味噌汁ってやつはほっとするなあ……体もあったまるし」
ファンタジーな外見してる人ばかりの世界だったから、味覚も外人っぽいのかな? と思ったけど、お味噌汁も普通に受け入れられたようで何より。
あれ? 別に外国人は味噌汁苦手でもなかったっけ?
「これは俺が売り先で試食を作ってから売り込んだ方が良さそうだな」
それなりに商人歴も長いと言うナグロさんも知らない調味料だと言うので、醤油と味噌はその方が良いと思う。
もちろん、台所を借りた時に照り焼きと味噌汁の作り方は教えておいた。
ナグロさんは調味料そのものも、そのまま味見して何か考え込んでたようだったら、ナグロさん目線で何か作れるものも考え付いてるのかも知れない。
「そうだな……試食を作る為に個人的に一つずつショーユとミソをくれるか。それとは別に売り物で三個ずつ持って行くか」
「了解です」
今回の料理に使った調味料は自分用に取っておいて、新しく四個ずつ醤油と味噌を現物化してナグロさんに渡しておく。
残り五個ずつの醤油と味噌はカプセルに入れたまま。
服と鞄は全て現物化して渡してあるのでナグロさんの荷馬車に置いてあるけど、俺自身がこんなにカプセルを持ったのは初めてだな……。
十個以上カプセルがあってもかさばるので、初めてカプセルボックスのスキルを使ってみる事にした。
ガチャポンはイメージじゃ出て来なくてステータス画面の文字を押さないと駄目だったけど、カプセルボックスの方はどうかな?
カプセルボックス出て来い、と念じてみると――目の前にネットゲームのインベントリみたいな四角い枠がいっぱいある画面が現れた。
カプセルボックスは念じただけで出せるみたいだけど……この画面を見せられてどうしろと? ネットゲームそのものならアイテムをドラッグで移動したり出来るんだろうけど、現実世界のアイテムをこの表示の中にどう入れたら……。
「ナグロさん、これ見えます?」
「あん? 何がだ?」
どうやら見えていないようなので、今俺の目の前にカプセルボックスの中身と思われる画面が現れている事を伝える。
「うん? アイテムボックスとは、どうにも勝手が違うみたいだな。アイテムボックスの場合は、近くにアイテムボックスの入り口みたいなのが出て来るんだが……そういうのは出てないか?」
「ボックスの入り口……」
中身の表示と思われるインベントリは見えるんだけど、入り口らしいものは特には……うーん? あ、インベントリ画面の上に右から左に流れる説明文字みたいなのがある。そこもゲームっぽい。
一周が終わるのを待ってから、先頭の文字から改めて読んでみる。
『カプセルボックス内で当たったアイテムを整理しよう! 一種類につき九九個までスタック可能! すぐに取り出したい物はお気に入り欄に入れて埋もれないように出来るよ! カプセルを取り出したい時は取り出したいカプセルをタッチしよう! ボックス内に入れたい時は空欄をタッチ!』
俺こういう流れる説明文ってあんまり好きじゃない。文字が流れるスピードに合わせて読まなきゃいけないから、自分のペースで読めないんだもん。
でもちゃんと詳しい説明があったのは嬉しいぞ。
空白の四角い枠をタッチしてみると、下にずらっと俺の持ってるカプセルの中身一覧が出てきた。ほほう、中身のアイテムのアイコンで表示されるのか……取り敢えず、ずっと持ってた松明を選んでみると個数の指定が出てきたので今持ってる三つの松明を選択。
空欄に松明のアイコンと、アイコンの右下に小さく個数の表示が出た。
「まんまゲームみたいで分かりやすいな……」
続けて醤油と味噌も個数を最大にして入れてみると、俺とナグロさんの前に置いてあったカプセル群がテーブルの上から消える。
「おお、無事入れられたみたいだな」
「はい」
どうやら、このカプセルボックスはカプセルに入っている物以外は指定できない代わりに、カプセルに入ってさえいれば手に持ってなきゃいけないとか、そういう制限はなく入れられるようだ。
完全にガチャポンスキルを持ってる俺の為だけのボックスって感じだな。