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ガチャポンは無限には回せない

「さあ、野営の中で一時の息抜きだ。珍しい飲み物もあるから、どうぞ買ってくんな。銀貨一枚と高めかも知れんが、銀貨一枚払えばここにある分は飲み放題! 早いもん勝ちだ! おっと、コップは高級ガラス、勝手に捨てたり壊したりしたら弁償してもらうからなー」


 野営地の中心に木箱を並べて、そこにシーツを敷いただけの簡易的なテーブルに俺が現物化したドリンクシリーズを並べて置いてある。


 ナグロさんが言うにはこうだ。


「流石に高級ガラスは売ってやれねえが、味のついた飲み物だって野営地じゃ貴重だ。だから、中身も銀貨に変えちまおうぜ」


 なるほどと目から鱗の思いだったよ。そうか、中身を自分で飲み切れないなら売ってしまえば良いのか。こういうファンタジー世界なら、野営地じゃなくたってジュースみたいな味のついたものはお高めだろうし、コーラやコーヒーなんてあるかも分からないからな。価値としては申し分ないかも。

 何よりも素晴らしいのは、売値が銀貨だって事だ。これで銀貨を再度補充するとは……ナグロ商人恐るべし。


 ガチャで出したものは次の通り。


 ・リンゴジュース×10

 ・オレンジジュース×10

 ・コーラ×10

 ・麦茶×9

 ・ミルクティー×9

 ・アイスコーヒー×9


 麦茶とミルクティーは俺が一個ずつ出して、アイスコーヒーはナグロさんが一個出したから、このガチャポンの中身は全部で六十個みたいだな。

 三百円の筐体の中身が大体五十個ぐらいなので、最初に三百円で回せた通りに三百円の中身基準らしい。


 ちなみに、昔は一律百円で回せたみたいだったが、今は百円、二百円、三百円と値段の違いがあって、値段によってカプセルと中身のサイズが違うのだ。

 百円のガチャポンだと中身が百個以上あるんだよな……。


 というわけでナグロさんは、中身が無くなるまで銀貨を使った。銀貨六十枚ぐらいなら両替にもそんなに影響がないって事で、安心してたよ。

 ていうかこのガチャポン、スキルなのに中身の上限あるんだね……いや、中身の上限がないからこそソーシャルゲームが嫌いでガチャポンが好きだったからこそ、俺は凄い嬉しいんだけどね。


 なんかスキルってだけで、無制限に回せると思っちゃってたよ。


「うお、なんだこれ! 口の中が攻撃された!?」


 コーラを飲んだ冒険者と思われる帯剣して革鎧を着た人が驚く。


 やっぱりこの世界じゃ炭酸は無いのかな? コーヒーも無い可能性が高い。


 ちなみに面白そうだったので、コーラだけはナグロさんに一つ確保して飲ませてみた。飲んでみて炭酸にの刺激を味わったナグロさんは、梅干しを食べた時みたいにきゅって顔が表情が(すぼ)まってた。面白かった。


「このガラスは売ってはもらえないのか?」


 野営地に居るのは冒険者や旅人だけじゃなく行商人も居るみたいで、ナグロさんにグラスを買えないか交渉する人も居る。


「そりゃ俺も商人だ。売っても良いけど、このガラスの透明度だ。かなり高くなるが、払えそうか?」


「うーん……この場で売るなら幾らだ? もちろん即金で払うから、多少は安くなるだろう?」


「そうだな、出す所に出せば金貨はいく代物だ。条件ありなら、大銀貨八枚で売っても良い」


「金貨までいくと言っても、これなら金貨数枚はするだろう……それを大銀貨八枚だって? 一体どんな条件だって言うんだ。あまり無茶な条件ならもちろん買わないぞ?」


 凄いなあ……魔法もあって、文明が馬車レベルなファンタジーな世界での商人同士の交渉だ。地球じゃ絶対に見れない光景だよな。


「大銀貨八枚分、ただし銀貨で払ってもらう。それなら銀貨八十枚でこのコップは売ってもいい」


「なに、それだけで良いのか? だが、八十枚か。ふむ……よし、二つほど売ってもらえるか?」


「毎度。ここにある現物しかないからな、飲み終わったコップは自分で洗ってもらえるか?」


「構わんよ、その代わり多少は負かるんだろうな?」


「しょうがねえな、じゃあ十枚割り引いて百五十枚でどうだ」


「まあ、洗う手間ぐらいじゃそんなものか。銀貨を用意してくるから、このガラスのコップ二つ、ちゃんと確保しておいてくれよ」


「おう」


 そうして商人さんが去って行くと、ナグロさんは俺の方を振り向いてウィンクしてきた。おっさんのウィンクってどうなんだろうとは思ったけど、今は本当に頼もしい大人な色気あるウィンクに見えた。

 実際に頼れる所を見せてからのウィンクって、カッコイイんだなあ。


 ドリンクシリーズを引いた役五十枚の銀貨が三倍になって戻ってきてしまったぞ。ナグロさんの考えに乗っかって正解だった。


 というか商人は銀貨百五十枚とか両替用に持ち運んでるんだなあ……地球と違って全部がコインだから重いし嵩張(かさば)るだろうに、大変だ……。


 しかし、その場で回したガチャを商品にして三倍の稼ぎを出すとか、ナグロさんは本当に商人なんだなあと実感する。

 見た目は確かに山賊みたいだけど、こういう所はちゃんと商人してるよね。


 俺も後で大銀貨一枚だけ銀貨に両替してもらって、ガチャポン回そうかなあ。人が回しているのを見ていたら、やっぱり自分も回したくなってしまった。

 大銀貨二枚もあれば二十万の価値なんだし、街でもなんとかなるかも知れないし。十回分だけでも……。


 ともかく、これでドリンクシリーズのガチャポンは全部回しちゃったから飲み物は補給できなくなったけど、そこはナグロさんが水を分けてくれるというので、そこは安心だった。

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