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市場のことは神様に任せます!

 ご飯が終わって、簡易竈の石を崩してただの焚火になったそれを二人で囲みながら、まだ出現させたままのガチャポンの筐体を一緒に見ていた。


「このガラスは絶対に高く売れるから、手に入るだけ手に入れた方が良いと思うぞ」


「でも、俺は森の中で手持ちのお金を全部使ってなんとか食料を手に入れてたような状況ですし、ナグロさんがグラスを買ってくれた大銀貨三枚が生命線なので……」


 一回一万円だ。どうせなら街に着いて仕事を見つけて、稼ぎが安定してから回したい。


 それに、今のラインナップはあのまま森で一人で居たままだったら役立つラインナップだけど、街に着けば服も食べ物も街で買った方が絶対に安いだろうし。

 ナグロさんに同乗させてもらった今としては、あまり魅力を感じないラインナップになっちゃったんだよな。


 いや、地球と同じ三百円だったら食品サンプルミニチュアとかって事で集めたいと思ったかも知れないんだけど、一万円だよ……?

 どうせなら役立つ物を当てたいと思っちゃうのが人情だろう。


「そんなもん、俺が出してやるって。俺はこれでも商人だぞ? 銀貨だけしか駄目だとしても、両替だって持ち運んでるんだ、それなりに回せるぞ?」


「でも、それはナグロさんのお金じゃないですか」


 ちなみに、金貨などのこちらのお金の価値が分からない俺がナグロさんに会う前にどうやってガチャポンを回したのかは、手持ちの俺の国のお金で回せるだけ回したと伝えているので、ナグロさんは俺が今はグラスを売った大銀貨三枚しか持っていない事を知っている。

 だからこそのナグロさんのお金で回すとの提案を出してくれたんだろう。


「そりゃそうだけどよ……聞いた話じゃ、この中身も定期的に入れ替わっちまうんだろ? こんな高級ガラス滅多にお目に掛かれねえんだから、今のうちに手に入れておいた方が絶対に良いぞ」


「うーん、でも……」


 確かにナグロさんが自分のお金で自分の為に回すなら、俺に止める権利はない。じゃあ何が問題なのか?


「俺があるだけドリンクシリーズとやらを回して、手に入った高級ガラスは高く売れる所に俺が売りに行く。そんで売り上げの何割かをお前に渡す。お互いに悪くない取引だろ?」


 俺に商売を持ち掛けている事だ。


 俺としてはお世話になっているし、回したアイテムは全部ナグロさんの物にしてくれと言ったんだけど、そこは(がん)として譲ってくれなかった。

 なので、こうして俺が悩み、ナグロさんは俺を説得しようとする形になっている。


「でも俺はこうしてお世話になっているわけで、しかも最初は(だま)すみたいにグラスを売っちゃったので利益は受け取れませんよ。しかも、両替の銀貨が減ったら商売としても困るでしょう? 他の通貨は使えるかなと思ったら銀貨しか受け付けないみたいですし……」


 そう、ナグロさんと試してみたのだが大銀貨を入れたら十回回せないかとか試してみたんだけど、同じサイズの銅貨や金貨ですら投入口に近付けると見えない力で押し戻されるんだよね。

 どう見ても地球にあったガチャポンの筐体そのものなのに、そういう所はスキルらしい。


「確かにそこは問題だな。銀貨ばっかり消費されちゃ、経済にも影響が出て来る。そもそも、そのガチャポンってやつに入れた銀貨はどこへ行くんだろうな。完全に消滅するってんじゃ、あまり乱用すると銀自体の価値まで変動しちまうだろうしな……」


「そうなんですよね……」


 俺がいっぱいお金を稼いで余裕をもってガチャポンを回すって事は、そのお金をかなり大量に銀貨に両替するって事だ。

 ずっと同じ街に住んでそんな事を続ければ、銀貨自体が市場からどんどん消えて行っちゃうんだよなあ。そうなれば、その内に銀貨の方が白金貨よりも価値が高いって事にすらなりかねない。


「銀貨はどこに消えちまうのか、スキルの説明とかには無かったのか?」


「見た限り無かったですね……」


「んー……あるいは、スキルのランクが上がれば説明が増える可能性もあるな」


「えっと、スキルにはランクがあるんですか?」


「ああ、基本的に使えばランクが徐々に上がってって、出来る事も増えていく。攻撃スキルだと威力が上がったり、手数が増えたりとかな。こういうサポート系だと、やっぱり今言ったみたいに出来る事が増える。まあ、大抵は細かい調整が入るだけだったりもするが……ああ、有名なアイテムボックスだと容量が増えたりとかもあるな」


 でもランク表記なんてなかったよな?


 疑問に思ったのでステータスを開いて再度スキルを確認してみるが、やっぱりランク表記はない。


「ランクが無いって事はあります? 表記されてないんですが……」


「ああ、そりゃ最低ランクだな。何度も使っていくと、ランクが上がってそれからはステータスにも表示されるぞ」


「なるほど……じゃあ俺のは最低ランクだから、ランクが上がって行けば銀貨の事もなんとかなる可能性もあるかも知れないんですね」


「まあ、スキルは神が与えたものだからな。神様だって、スキル一つで世界を混乱に陥れようなんて思っちゃいないだろうから、そのうち何とかなるか説明があるんだろ」


「良かった……」


 確かにナグロさんの言う通り、神様が自ら世の中に混乱をまき散らそうとは思わないだろう。それなら安心だ。


 神様が本当にいればね、と地球にいた頃なら皮肉げにでも言うんだけど……称号の『落ちた者』に思い切り神の救済措置の称号だって書いてあるんだよなあ……居るんだね、神様。


 神様。言語理解とガチャポンのスキル、本当にありがとうございます。


「じゃあ、好きなだけ回しちゃっても良いんですかね……?」


「そもそも神が与えてくれたスキルなんだから、そういう事を考えるのはお前の仕事じゃないだろ。もちろん、悪用は駄目だがな」


「それは、もちろん」


「ということで、俺に回させてくれ、頼む!」


 両手を合わせて頭を下げながら頼み込むナグロさん。結局そこに行きつくのか……でも、本当に神がいて、その神が与えたスキルなんだから、そういう世間に混乱を招くような事はないのかも。


 それに、ナグロさんがここまで頼んでくるって事は商人として商機を見つけたって事でもあるんだろうし、俺に利益を分けてくれるとは言ってもナグロさん本人ももちろん稼ぎになるわけで。


 それなら。


「……分かりました。ただ、現物化すると中身を全部その場で飲み干す羽目になりますからね?」


「大丈夫だ、考えがある!」


 ようやっと頷いた俺に、ナグロさんは嬉しそうに目を輝かせるのだった。

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