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ガチャポンと一緒

 昨今流行りのソーシャルゲーム。


 キャラクターを集めて戦う感じのものが多い。


 そうしてキャラクターには星一から星五ぐらいまでのランクがあって、最初の方は色んなキャラクターが使えるけれど、後になってくると星五にしか価値がないぐらいの状態に陥る。


 星四のランクでも使えるキャラクターは使えるが、やっぱり星五ランクのキャラクターを持っていないと先には進めなくなるのだ。

 その結果として、最終的には星三ランク以下のものはゴミ扱いされてしまう。


 それらのキャラクターを、特別な石を集めて、その貯めた石で持ってランダムで手に入れるのだ。


 そう、所謂(いわゆる)ガチャである。


 このガチャだが、先にも言ったように星三以下のランクはゴミと化し、それらはガチャの中の外れ枠となってしまう。

 それでもって、星五ランクは中々出ない。

 それはそうだろう、ソーシャルゲームを運営している会社はガチャを引く為の石を課金で売っているので、それを買ってもらわねば経営が成り立つわけもなく。

 じゃあ、星五があんまり出なければ、それだけ多く買ってもらえるねってわけである。


 しかも、このガチャ。性質(たち)の悪い事に、石さえあれば永遠に引けるのだ。


 何故、性質が悪いのかと言われれば、永遠に引けるということは「最後の一個」という物がない。


 大抵のくじ引きには最後の1個というものがあるというのに。


 例えば〇.〇一%の確率で星五ランクが出るとしよう。

 これが現物のくじであれば、一万回引けば一〇〇%で当たりは絶対に引ける。

 でも、永遠に引けるのだ。


 何度引いても。

 何十回引いても。

 何百回引いても。

 何千回引いても。

 何万回引いても。


 永遠に確立は〇.〇一%のままなのである。


 つまり、永遠に当たらない可能性が九九.九九%なのだ。


 最悪だ。最悪な発明だ。こんな悪魔的な事が許されて良いのか。


 だから俺はゲームの中に出て来るガチャというものを信用していないし、何なら唾棄すべきほどに嫌悪している。


 そして、同じ理由でガチャポンを愛している。


 そう、ガチャポンだ。


 ガチャガチャ、ガチャポン、ガシャポン、色々な呼び方がある、あの小さい箱型のあれである。正式名称はカプ〇ルトイとか言ったか。


 そう、ガチャと同じ理由でガチャポンが好き――いや、逆の理由になるのか?


 ともかく、ガチャポンは良い。


 一つの中身は同じシリーズの種類が六個から八個ぐらいは入っていて、そのどれもが当たりだ。


 引けば絶対に出て来るし、出て来たやつは(かぶ)ってしまう事はあれど、手元に残る。


 しかも永遠に続かない。最後まで回せば絶対に全部集まる。


 なんなら運が良ければ、六回引くだけで六種類中六種全てが揃う。


 なんたる素晴らしきカプセル!


 出て来た物は飾るもよし! 手触りが良いもにもにしたストラップは持ち運んで手持無沙汰な時にもにもにと使うもよし! 素晴らしい!


 そして、そんな事を語る俺の目の前には六個の筐体(きょうたい)が二段三列で組まれたガチャポン。

 これこそガチャポンの基本形態。お店の前や、デパートの中で見かける二段三列の構え。

 そのガチャポンに向き合ってしゃがみ込む俺は、正に今からガチャポンを引かんとする戦士の構え。


 そして周りは広大な森。


「……ここはどこ?」


 私は本宮(もとみや)(りょう)

 姓は本宮、名は了と申しやす。


 そうじゃない。


「……なんで?」


 何故なにどうして?


 俺はいつも通り、学校帰りに行きつけの未だ生き残る古強者(ふるつわもの)の駄菓子屋に行き、その駄菓子屋の店の前に置いてあるガチャポンを今日も回そうと百円玉を取り出した所である。

 そうして、財布から取り出した百円玉を(あやま)って落としてしまい、筐体の下から拾って顔を上げればこの有様なのである。


 ちょっと下を向いただけじゃない。どうしてそんな事するの?


「これが異世界転生……!」


 昨今、そういった小説が流行りに流行っているのである。自分の身に起きたとしても驚くまい。


 ううん、嘘。


 こんなの現実にあるわけないじゃなーい? なんて思ってたので、アスファルトの上から何の予兆もなく森の腐葉土の上に立っている自分の現状に、驚きを通り越して行き過ぎたパニックにより逆に冷静な次第。


 実際に異世界なのかどうか知らないけど、これがもしや神隠しの真相であったり?


 神隠しだとすれば、ここは神域というやつなのだろうか。こーこはどーこの細道じゃー。


 しかし、このようなクラスでもグループの会話に中々入っていけないようなモブを神様がわざわざ呼ぶだろうか?

 根暗って言わないでね。根暗は傷付きやすいんだ。あ、自分で言ってる……。


 取り敢えず動かねば何も進むまい。


 俺の装備は学生服に学生鞄と言う見事な学生ルックである。学校帰りに森を探索できる装備をしていたら大したものである。


 そして目の前にはガチャポン。


 三百円を握り締めた俺。


 昔はガチャポンも百円の時代があったんだそうな……俺がガチャポンに導かれた頃には既に二百円だったが、ガチャポンも少しずつゆるやかに高くなっているようで。


「取り敢えず……」


 三百円を投入。


 俺は取り敢えず、一回ガチャポンを回しておくことにした。

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