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カエンの継承~未来を変える運命の遺言~  作者: トッポ店長
序章
1/6

第1話 時のマテリアル

 -2070年、パウンド輸送艦・操縦室内-


「目的地まではあと何分だ?」


 大きな身体をした、屈強そうな男は操縦士に問いかける。


「あと1時間くらいで到着です」


 彼の名はベイク。世界の均衡を守る特殊部隊GATOR(ゲイター)の一番隊で隊長を務める男だ。


「早くしないと到着してからの作業で日が暮れちまう。今日は息子の誕生日だってのによ」


 ベイクは大きくため息をつき、その場に座り込んだ。


 今日は大事な息子の誕生日らしい。


 そこに近くにいたもう一人の男がベイクに声をかける。


「大丈夫だ、このまま進めば予定時間には到着する。波も天候もそれほど変化はない」


 声をかけたこの男の名はノエル。ベイクと同じくGATOR(ゲイター)の特殊部隊で、2番隊の隊長を務めている。


「そうか、なら大丈夫か…だとしても何だかソワソワするぜ…」


 ベイクは落ち着かない様子で返事を返す。


「心配しすぎだ、あまり考えすぎると到着までに疲れるぞ」


「それもそうだな…しかし、まさか誕生日の日にこんな重要な任務が重なるとはな…」


「俺もこんなに緊迫する任務は初めてだ。もしも奪われることがあれば、それは世界の終わりかもしれないからな」


 今回彼ら特殊部隊が運んでいる(ブツ)…それは『時のマテリアル』と言われるもの。


 マテリアルとは、不思議な力を秘めたダイヤモンドの様な結晶のことで、それを身体に当てると体内に入っていき、そのマテリアルに秘められた力を自由に使うことが出来るようになる。


 マテリアルはこの世界にいくつか存在し、

 特殊部隊の限られた人間にのみその力が許されている。


 今回重要機密資材として運んでいる『時のマテリアル』-これは時間を操ることができ、過去にも未来にも時空を超えて移動する事ができると言われている。


 もしもこれが誰かの手に渡れば、誰もその人間を止めることは出来なくなり、歴史を変えられてしまう危険性がある。


 彼らは誰もこのマテリアルを手にすることが出来ないよう、発見された場所シュリーム島から、特殊部隊など全てを管轄する組織の本部があるアーモンディという街まで運び切るよう本部から任務を依頼され、現在に至る。


「そういえば、これは一体どこから発見されたんだ?」


 ベイクはノエルに疑問をぶつける。


「調査報告書を読んでないのか?そういう所はいつまでも変わらないな」


「長々した文章が嫌いでな。興味はあるが読む方が面倒くさいと思ってしまう。だからいつもお前に聞くって訳よ」


「俺はお前の情報屋か。…まあ、いい。

 今回この『時のマテリアル』は、1ヶ月ほど前から行われていたシュリーム島の遺跡調査の途中で発見された小さな箱の中から見つかったらしい。」


「遺跡か…てことは古代から存在するマテリアルになるってことか?」


「さあな。だが、その可能性は十分に有り得そうだ。」


 2人がベイクの疑問について話していると、突然爆発音とともに船内が大きく揺れた。


 音は船の後方に位置する上甲板の方からだ。


 操縦室内がざわめく。船を操縦している操縦員の顔はこわばり、少しパニックになりながら辺りをキョロキョロと見渡す。


「大丈夫だ、俺が見てくる。ベイクは念の為ここに残っててくれ。」


 ノエルはベイクにそう言い残し、操縦室から飛び出して行った。


「勝手なやつだ。しかし、俺の不安が現実になってしまうとは…頼むから時間通り到着してくれよ…」


 -パウンド輸送艦・上甲板-


「止まれ!この船は関係者以外立ち入り禁止だ!これ以上踏み入れると撃つ!」


 特殊部隊の戦闘員が上甲板の後方に立つ男を取り囲む。


 突然乗ってきた青髪の男はうっすらと微笑む。


「俺を撃てるなら撃ってみろ。あるんだろ?ここに。『時のマテリアル』が。」


 取り囲む20人ほどの戦闘員は銃口を彼に向ける。


 しかし、青髪の男は銃口を向けられてもなお余裕の表情を浮かべている。

 少しまた微笑み、囲んでいる戦闘員の間を突っ切るようにまた歩き出す。


「発砲許可だ。この男を絶対に通すな。撃て!」


 銃弾は青髪の男に向かって一斉に放たれる。銃声も辺りに大きく響き渡る。


 青髪の男は全ての銃弾を立ったまま全身に受ける。

 しかし、受けた銃弾は傷一つ付かず全てはじき返る。


 青髪の男は何事もないかのようにそのまま歩みを進める。


 戦闘員達は必死に撃ち続けるも銃弾は一切通らない。


 銃弾は通らないと悟った1人の戦闘員は鞘に差していた刀を取り出し、彼に後ろから切りかかる。


 ガキィィィン…!!


 刀は1ミリも通ることなく男の肩の上で止まる。


「銃がダメなら刀で切ってみようってか…いいじゃねぇか。気に入った。…でもそろそろ耳障りだ。」


 青髪の男は振り返り、辺りにいる戦闘員に向けて手を上げ、手の平を向ける。


 手は一瞬光を放ち、向けていた場所が突然爆発する。


 囲んでいた戦闘員達は大きな爆風と爆音とともに、一瞬にして吹き飛ばされる。


 爆発が止んだ後、辺りはさっきの銃声が嘘かのように静まり返った。


 そして彼はまた船内に向かって歩き出す。


「俺が未来を決める。そのためにこの力を手に入れたんだ。」

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