第63話〜 大金と2つの噂 〜
「お待たせしてしまい、申し訳ございません。こちら、オークションに出品されたホーンラビットの魔石の落札額40万マインから、手数料を差し引いた35万マインです」
よんじゅ……ヨンジュウマンマイン……?
えっと?1万マインは確か日本と同じように1万円だったよね……?
ってことは40万円ってこと……?ん?
えぇぇぇぇっ!?どゆことだ。なんでそんな金額で落札されてんねん!! ただの何処にでもいるホーンラビットじゃなかったの?!
僕はあまりの高い落札額に驚いて声も出せずにいた。
しかも手数料意外と安いな……。ん?安いのかどうかも分からなくなってきた。
金銭感覚バグっちゃったやないかーい!
「あ、ありがとうございます」
こんな大金を手にするのは初めての経験で震えながら貰う。
これなら余裕で生活していけそうだな。学園に通うのも考えてみよう。
その後、魔物やいらないアイテムや宝石等を換金して今日の収入はなんと340万マインとその他端数。
端数っていうか、数えるのが面倒なだけだが……。
あ、ちゃんと【空間収納】スキルってバレないように沢山物を収納出来るマジックアイテムと思わせるため、鞄から取り出したから心配いらない。
この世界にはスキルは存在しないようだからね。
……ギルドが騒然としていたけど、やっぱり何回かに分けて売れば良かったかな……。
でも、ダンジョンに行くごとに減るどころかどんどん増えていってしまうからいい機会だったとポジティブに捉えることにした。
一つの硬貨で10万マインという白金貨を34枚も手に入れてしまった。
【空間収納】スキル持ってて良かったぁ……。これで盗まれる心配はいらない。
まさか自分の手でこんな大金を稼げるとは思いもしなかった。
これなら、この世界で億万長者目指せるんじゃ!?
僕は興奮して身体が熱くなり、震えていた。けれどまだ何処か夢なんじゃないかと実感が湧かないのも事実。
心臓が飛び出るくらいの、銃弾の様な速度で脈を打つのがわかる。
ギルド内にいる人達が驚きの視線を向けてきて、耐えられなくなって僕は急ぎ足で外に出た。
宿に帰る途中に、折角大金が手に入ったので食材を買っていくことにした。
今日は初仕事ってこともあったし、夜ご飯はちょっと贅沢しよう。
あの二人のキラキラして驚きと嬉しさの感情が入り混じった顔を想像すると、自然と笑みがこぼれた。
因みに、今は仮面を付けてないのでノアだ。
街の人達の腫れ物を見るような目を向けられるが今の僕はとってもご機嫌なので何とも思わなかった。
お店で買うときニヤニヤしてたら店員さんと目があってしまってこの世の終わりみたいな顔をして思いっきり睨まれた。流石にご機嫌だった僕も思わず笑みが消えた。
それからその店員さんと目が合うことは無かった。
けれども、店を出たならばもう僕はそんなことは忘れてウッキウキのステップで宿に帰るのだった。
今、この国では2つの噂が同時に国中に広まっていた。
一つは、劣等人の歴史上最高到達レベルの2500に僅か15歳でなった劣等人が現れたという噂。
そしてもう一つ、狐のお面を被った謎の新人冒険者が一度に大量の魔物を討伐したという噂。
そんな噂を僕が知ることになるのはかなり後の話になる。
何故だって? それは噂のことを知ってる人と話す事が先ず無いからだ。




