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第52話〜 異世界の常識とは 〜

「説明は終わりましたけど、何か質問などはありませんか?」


  かなり長い説明だったのに、受付のお姉さんは全く疲れた様子を顔に出さずに笑顔を保っていた。


  恐るべし、営業スマイル……。僕絶対真似出来ない。多分真似したら表情筋が筋肉痛になると思う……。


「特にないです。ありがとうございました」


  お礼を言って、お辞儀をする。ごく当たり前の事をしただけなのに、何故か受付のお姉さんにこんな事を言われた。


「いえいえ、リサーさんってなんかちょっと変わってますね」


「え? 何処がですか……?」


  僕は訳が分からず、頭の上にハテナマークを浮かべていると「全部ですよ」と即答された。


  確かに、狐の仮面とこの服装は変だとは思うけど初対面の人にそんなこと言う!?


「仮面も服装も変ですが他にもありますよ? その年齢でそのレベルで、ギルドに登録するのが初めて。しかも礼儀正しい所とかです」


「や、やっぱり変ですよね……」


  や、やばい。やはり僕はまだこの世界に馴染みきれていない。周りにもおかしいと思われそうなので、レベルと年齢はこれから隠すことにしよう。


「でも、礼儀正しいが変ってどういう事ですか……?」


  まじで理解不能、僕にとっては礼儀正しくするのは当たり前のこと。

  でも、受付のお姉さんは逆に僕が何を言ってるのか分からないと言う風に首を傾げる。


「冒険者ギルドって結構気性が荒い人とか短気な人が多かったりするので。勿論良い人もいますけど。リサーさんみたいに礼儀正しい人は少ないんですよ?」


「そ、そうなんですね」


  それは今も後ろで争っているケニーさん達やお酒を飲んでいる人達を見れば明白だった。

  やはり、世界が違えば常識も違う。この世界に対応して行かないと、目立つばかりだ。


  気を付ける事が多くて、疲れる……。


  えっ?! てか、まだ喧嘩してるの!?


  喧嘩の長さに僕は、受付のお姉さんと一緒に苦笑する。


「あ、これから【依頼】や【任務】頑張って下さいね!」


  突然受付のお姉さんは、両方の拳を握ってガッツポーズをする。いわゆるファイトポーズをして応援の言葉を投げかけてきた。


「あ……あ、ありがとうございます…………」


  前世ではあまり女の人と関わる事はなかった。なので、必然的に応援される事も。

  一瞬どう反応していいか分からず吃ってしまったがこれから頑張ろうという気持ちも湧いてきた。


  あれ……? もしかして僕ってチョロい人間……?

  変な誘惑とかに、騙されないようにしないと……お金がいつの間にか消えている現象が起こってしまう。


  あ、なんかディ〇ニーとか遊園地とかに売ってある物って違う所でも手に入ったりするのにわざわざそこで買ってしまうよね。

  しかも、普通より高い値段なのに……。ああいう所で金銭感覚が狂ってしまうのは何故だろうか?

  やはり、普段行かない所やしない事は特別感があるせいか……?


  と、言う事は……特別感を無くせば誘惑に負けない?

  そしたら、チョロ人間じゃなくなる。


  うん、無理ー……!




  まだまだ、人見知り&コミュ障は治りそうにないか。



  僕の脱陰キャ異世界生活はまだまだ続く様だ。



















  ギルドに登録でき、ギルドカードも作って貰って。この組織の説明もして貰った。

  後は帰るだけだと思うが忘れてはならない、本来の目的。

  リリアさんの『霧の宿屋』の宿泊料金を払うためのお金を手に入れること。

  それに、ギルドカード作成の料金も払わないといけない。

  それにこの国のお金を持っておかないと不便、というか生活していけない。門の通行料は、指輪とネックレスで何とかなったけど。


「それでは、換金でしたよね? どのような素材をお持ちで…………す……か………………?」


  僕の荷物を確認し、何回も僕の目と身体を交互に見てきた。


  そこで気付いてしまった。気付くのが遅すぎた。色々あり過ぎて、この世界に慣れてなくて忘れていた。


  この世界ではスキルという物が存在しない。これではスキル【空間収納】で収納している魔物の死体とかを取り出したら驚かれて騒動が起きる。


  最悪、どうなっているのか捕まって人体実験とかされたらどうしよう……?!


  スキルという物はないが、代わりに魔道具と言うものが存在する。その魔道具は様々な効果があり、生活にも役立つような物もある。


  今僕が身に付けている、狐の仮面と指輪もその魔道具の1つ。何故か偽りの仮面は頭に入ってきた効果とは逆になってしまったが……。


  これ、指輪の魔道具も大丈夫か不安になってきた……。


  やっぱり《不幸体質》のせいだろうか。魔道具にあまり信頼を寄せるのも危ないなと思った。


  って、スキルもたまに使えない事あるし……これ自分自身も強くならないとヤバくないか……?




  魔道具は僕が知ってる限り迷宮から出る。触ったら自然とその魔道具の情報が頭に流れ込んでくる。これは異世界人の僕だけでなく、この世界の住民のメアも同じだった。

  こんな事を出来るのは、神ぐらいだろう。この世界の人は、神とか信じてるか分からないけど。


  魔道具はこの世界を発展させるための神様からのプレゼントの様にも感じる。一体なぜ魔道具という物を与えるのか、謎だが今はそれを考える場合ではない。


  バッグとか持ってたら、中の空間が広がっていて見た目より沢山の物を持ち運べる魔道具って思わせる事が出来たかもしれない。

  けれど僕はそう思わせるためのバッグすら持っていない。寧ろ、丸腰。剣とかも装備してない。

  こんな格好でギルドに登録しに来たら、ナメてると思われても仕方なさそうだ……。


  今更ながら、もっとしっかり準備して来るんだったと後悔する。





  仕方が無いので、ポケットから出せる程度の魔石にしておこうかな……。あ、そうだ。この世界に来て1番初めに倒したあのでっかい親兎の魔石を売ることにしよう。正確には2番目に倒した魔物だけれど。一体目の魔石は取り忘れていた。まぁ、一体目はちっちゃくてすぐ死んだからそれほど高価でもないだろう。


  親兎の魔石は拳一個分くらい。これならポケットから取り出してもあまり違和感はないだろう。

  そう思い、ポケットの中で【空間収納】を発動。取り出したい親兎の魔石を頭に浮かべ、亜空間から取り出す。

  そして、あたかもポケットから出した風にカウンターに置く。


「えッ…………」


  え…………? これ、もしかして倒すの簡単な感じですか? 大量に手に入るものですか? だから全然安くでしか売れないとか? もしかして大量にあり過ぎて価値がないとか?


  受付のお姉さんの反応を見て、僕の頭の中は一気に不安でいっぱいになった。


「あ、あの……ど、どうですか……?」


  さっきまでは仮面を被って吃るのも大分マシなっていたが、不安でまた元に戻ってしまった。


「あ、あぁ。勿論、大丈夫ですよ! 鑑定してくるので少しお待ちくださいね」


  お姉さんは、ハッと我に返り慌てて親兎の魔石を鑑定しに行く。


  だ、大丈夫かな……。他にも換金出来そうな物はあるけれど、スキルが…………。

  もし全然お金にならなかった時はどうすればいいんだ!?


  どうしようどうしようと、不安で震え始めまでした。

  腕の震えを抑える為に、腕を組みながら頭を抱える。


 


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