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第50話〜 謝罪と説明 〜

  それにしてもケニーさんに話しかけられた時はどうなるかと思ったが、なんとか僕から気が逸れてくれて助かった。


  ケニーさんと2階の野次馬の人が言い合いをし始めて静まり返っていたギルドはいつの間にか入ってきた時の状態に戻っていた。

  他愛もない会話や、酔っ払って気分の良さそうな人達の少し大きい声や仕事の話が飛び交っていた。




「あ、あの……リサーさん。大丈夫ですか?」


  安堵していると、受付のお姉さんが声をかけてきた。


  僕はそれに少しビクッと体を震わせながら振り向く。


  ビックリしたの気付かれてないよな……?


  そう思いながら「大丈夫です」と返すと受付のお姉さんは、勢いよく頭を下げた。


「えっ!?」


  いきなりの事に僕は困惑しながら、もしかしてビクってしたのバレて、驚かせてしまってすみませんって謝られるのか……?とまともな思考が出来なくなっていた。


  それもこれも全部、脳筋筋肉ダルマスキンヘッドのケニーさんと言う人のせいだ。


  怖すぎて未だに少し足が震えているし、背中は汗でびっしょり。


  受付のお姉さんは、頭を下げたまま

「私のせいで、ご迷惑をお掛けしてすみませんでした」

  と謝罪してきた。


  受付のお姉さんは、顔を上げると僕に目を合わせてきた。


「リサーさんのレベルの割に年齢があまりにも低くて驚いてしまった私のせいです」


  受付のお姉さんはまた頭を下げて謝る。


「い、いや。別に全然大丈夫ですよ。大事にならなくて良かったです」


  ちゃんと申し訳ないと思っている気持ちが伝わって来たし、『不幸体質』という呪いのスキルがある限り何をしようが同じ様な結果になっただろうからね。


「本当にすみません。いつもギルド(マスター)が厳しく注意しているんですが……」


  あ、やっぱりいつもの事なんだ。多分注意しても無理だぞ。まず、ここでのお酒の提供を辞めたら良いのでは……。


  と解決策を言おうと思ったが、ギルドにもギルドなりのやり方があるんだろう。

  お酒やご飯を提供する事で、冒険者同士が交流できるし。それこそ強い人と強い人が仲良くなってパーティーを組めば、難しい仕事も簡単にこなせるようになってギルド職員の労働軽減に繋がったりするかもしれないしね。


  そんな意図があるなら、解決策を言っても無駄だろうし。

  まぁ、行き過ぎた行為をした人は捕まったりするだろうから、変に口出ししない方が身の安全にもなるだろう。

  『不幸体質』のせいで、変な事に関わる事になってしまっても不思議ではないからね。



  そこまで思考を巡らせてから、「…………そうなんですね」と会話のボールを返す。



  会話の基本はキャッチボールだからね。



  てか、やっぱり陰キャで人見知りでコミュ障って独り言とか脳内で喋る事の方が多いよね。たった一文でさえ、こんなに考えてしまうんだもん。

  この脳内会話を口に出せるようになれば、脱陰キャだろうけども……。それが出来ないからこんな状況になっている訳で……。あぁ、自分で分かってるけど改めて実感するとちょっと気分沈むな。


「あ、こちらギルドカードになります」


  僕がケニーさんに絡まれている間に作ったのか、受付のお姉さんはカウンターにカードを置く。


  貴方もギルド職員ならば、ギルド長だけに任せずに注意しなさいよ……。


  と思ったが、僕でも無理なんだから受付のお姉さんも無理か。


「ありがとうございます」


  お礼を言いながらギルドカードを手に取り、見てみる。

  ギルドカードには『名前』『年齢』『レベル』が上の方に書いてあり、カードの真ん中には大きく大文字のアルファベット『D』が書かれていた。


「すみません、お聞きするのを忘れていたんですが、ギルドに登録するのは初めてですよね……?」


  僕がカードをまじまじと見ていたからか、受付のお姉さんが恐る恐る話しかけてきた。


「あ、はい。初めてです」


  嘘をつく意味もそんなにないと思うので、正直に言うとお姉さんは、また「えっ」と思わず声を漏らしていた。



  何もそんなに驚かなくても、初めては誰にでもあるでしょ。その時期が早いか遅いかだけで。



「あっ、いやその。ギルドの雰囲気に随分と慣れている感じがするなーと……思いまして……」



  僕が首を傾げていると、お姉さんはケニーさんや他の冒険者に聞こえないようにか、さっきよりも小さな声で驚いた理由を話してきた。


 それを聞いた僕は「あはは」と苦笑し頭を搔く。


  僕の何処をどーみたら慣れてる様に見えるんですかっ?! 緊張で喉カラカラで声掠れるし、背中は冷や汗でビッショビショですよ!

  ケニーさんに絡まれてから膝の震えも止まらなかったし?

  仮面を付けてて表情が見えないだけで、こんな勘違いされる事ってあるのか……?


「は、初めてです……」


  気まずい。とても気まずい。


「そうなんですね。初めての割には凄い冷静な対応で凄かったですよ!」


  気まずいと思っていたのはどうやら僕だけだったようで、受付のお姉さんは何故か僕を褒めてきた。


「……ありがとうございます」


  僕を褒めても何も出ないぞ。

  冷静なのは、仮面を付けているからだと思うぞ。


「あ、初めてなら『ギルド』という組織やお仕事の内容など説明した方がいいですよね?」


  はい、当たり前です。


  受付のお姉さんは手をパンと合わせてニコニコ笑顔になる。


  え、この人忘れてたの? それとも話の区切りの手鳴らしですか……?


「はい……お願いします」


  まぁ、ケニーさんとの騒動もあった事だし忘れもしちゃうよね。うん、きっとそうだよね。


  ……ん? 騒動はいつもの事って言ってたからこりゃ完全に忘れてたパターン……。


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