第49話〜 異世界量産型、脳筋筋肉ダルマスキンヘッド 〜
今度は一体何に驚かれたのだろうと、思いながら言葉を待つ。
「リサーさん。貴方この前15歳になったばかりなのに、本当にレベル《3762》なんですか……?」
む? 『偽りの仮面』をしているのに、今度は正規のレベルが表示されたのか。効果が逆になってるじゃんッ!!
「はい、間違いないですけど……」
『偽りの仮面』の本来の効果は――装着時にレベル測定魔道具を使われても、自分のレベルを偽る事が出来るだ。
けれども、役所で素の顔で測った時は何故か偽のレベル《2500》が表示された。
そして仮面をはめている今は、逆に本来のレベルが表示されたのだ。
うん、なんでぇ……?
偽のレベルは変更可能だけど、これ以上レベルを高くしたら『劣等人』なのにって騒がれるだろう。
僕は騒がれるのは嫌いだ。大勢が嫌いだ。集団が嫌いだ。
だから、必然的にぼっちになる訳だ。
地球の頃、名前の件とかその他諸々が無くても虐められるのには変わりなかったと言うことだ。
「リサーさんッ! す、凄いですね!」
受付の女の人は興奮気味に褒めてくれた。
僕は仮面を被って少しマシになったものの、素直な褒め言葉に返事をする事が出来なかった。
「――おい、ガキ」
すると突然肩を叩かれ、声をかけられる。
しゃっくりが聞こえるので、恐らく酔っ払ってる人だろう。
げ……この後の展開が何となく予想出来るんですけど……。
変な人に絡まれてしまったと胸中でボヤきながら後ろを振り向く。
振り向くと、目の前にはゴリゴリの筋肉。鍛え上げられた、大胸筋の筋肉が目に入った。
何でこう……酔っ払いとか、筋肉ダルマは露出が多いんだよ……。
多分酒を飲んで身体が熱くなるからとか、自慢の筋肉を見せびらかしたいのだろうけど。
こんな朝から酒飲むって、どんだけ暇なんだよ……。
見上げるとスキンヘッドのツルツル頭。顔には何だか物騒な傷跡が……。
「………………」
この人絶対脳が筋肉で出来てるタイプだッ……!
典型的な、量産型脳筋とでも言おうか。異世界の定番、筋肉ダルマのスキンヘッド!
「……おい。聞いてんのか?」
いつもの癖で、脳内で色々感想を述べてしまった。
僕は慌てて「聞いてます!」と返そうとしたが、いつの間に緊張で喉が乾いていたのか声が掠れて「はい」とも返事が出来なかった。
いやまぁ、「聞いてます」と言おうとして声が掠れたから「はい」って言い直したんだけど、聞こえてないよねこれ……。
周りから見れば僕はコクンと生意気にもただ頷いただけ。
仮面をしているから、申し訳ない表情をしている僕の顔も相手には見えない。
嫌な予感は薄々感じていた。この建物に入った時点から。いや、冒険者ギルドに行く事自体を決めた時から。
「おいおい、随分と舐められたもんだなケニー」
すると、2階に座ってジョッキを持って酒を飲んでいる男1人が脳筋筋肉ダルマのスキンヘッドを嘲笑ってきた。
あぁぁぁっ! やめて、下手に刺激しないでっ!
「あぁ? ハハッ、別に舐められてねぇよ。俺に怖気付いてるだけだろ? そうだろガキ?」
おっと、意外にも冷静なのね。これはチャンスだ。
はい、そうです。怖気付いているんです!
その事を脳筋筋肉ダルマスキンヘッド。おっと、この言い方じゃ舐めてる感じになってしまう。
筋肉モリモリマッチョマンのケニーさんに怖気付いていると伝えるため必死にコクコクと、フードが空気で浮く程に頷く。
「おいおい、ガキんちょ嘘つくなよ。ギルドに入ってきて迷うことなく受付嬢の所に行く肝っ玉座った奴が、ケニーなんかで怖気付くわけねぇだろ。その時点でギルドの殆どの人を敵に回したと言っても過言じゃねぇぞ?」
あのちょっと2階の野次馬黙ってくれませんかね。というか、迷わず女の人の受付に行ったのは他の受付の人は全員体つきとか、目付きが鋭くて怖かったからですよっ?! 誤解されては困りますねぇー!!
その時点でギルドの殆ど敵に回したと言っても過言ですよ?!
そんなにこのギルド変態エロおやじばっかりなのか?! それとも女好きのモテたい女たらしとかばっかりなんですかっ!
「なのに今更、嘘をついてまでケニーを過大評価するなんて、どーゆー思考だ?」
別に嘘なんて付いてませんし、そもそも全然喋ってないのに嘘とか決めつけないで欲しいですね。それに筋肉ムキムキマッチョマンのケニーさんの事を全然過大評価していませんがっ?! 寧ろ真っ当な評価だと思いますよ?! 実力は知らないけど、少なくとも見た目は!
2階にいる貴方こそ、どーいう思考してるんですかっ?! 貴方もやっぱり脳筋なんですねっ?!
脳内で滅茶苦茶早口でツッコミを入れつつも、誰も聞いていないので少し虚しいという思いを抱く。
僕は仮面の下で、誰にも聞かれないようにため息を漏らす。
「あぁ? 俺なんかでってなんだよお前。もやしみたいなヘナチョコな体つきのお前に言われたくねぇな?!」
ケニーさんは、2階の野次馬の人を指さしながら抗議する。
うん、その通りです! 僕の話から逸れていけ!
「あぁー? うっせぇ、本当の事言っただけだわ、脳筋ダルマがっ!」
2階の野次馬の人はテーブルに片足を乗せ、片手にビールのジョッキを。もう片方の手の人差し指は、ケニーさんを指しながら、反発する。
完全に上から見下ろしているのが、ケニーさんの癪に障ったのか、ケニーさんは拳をワナワナと震わせながら「あぁ? 俺よりランク下のクセに舐めてんじゃねーぞ」と大声で叫ぶ。
すると二階の野次馬はまたケニーさんに言い返す。
周りを見渡すと、ギルドに入ってきた時の喧騒はどこへやら、今は野次馬の人とケニーさんの声だけになっていた。
「あーあーまた始まったよ」
「こりゃ長くなるな」
「よーし、人数も集まったし迷宮行くぞ」
呆れている人や、ニヤニヤとその様子を楽しそうに眺めている人。または、無視してさっさと出て行っている人など皆慣れた様子だった。
比較的普通の人が多くて安心した反面、これ以上怖い人に話しかけられないか不安になった。
更新を待って下さっていた読者様、大変お待たせ致しました。久しぶりの更新です!
ちょっと体調が悪い日が続いたり、私情の予定があって更新出来ませんでした。すみません。また、こういう事があるかもしれませんが、更新を待って下さると嬉しいです。
【お知らせ】
この度この《不幸体質》、ネット小説大賞の一次選考を通過しました!
ありがとうございます!
二次選考も通過出来ることを祈って、日々精進していこうと思います!




