第47話〜 2人の不憫な少女 〜
最悪の可能性。それは、メアが寝返りをした時に実は起きていてあの話を聞いていた可能性。
「め、メア……いつから起きてたの……?」
もし聞いていたらどうしようと緊張して声が震える。
「…………?」
リリアさんも幽霊じゃないと、気付いて顔を上げていた。
けれど、未だに抱きついたまま。
「んー?……最初からだよー!」
「えっ……」
表面上メアは笑顔でいつもと何ら変わりなく明るく言う。
けれど、その笑顔はいつもと少し違った。何処か切なさが滲み出ている。
「え、じゃあ……あれも聞いてたの…………?」
ハッキリと、メアの両親は魔物に殺された事と言うのははばかられた。
「……うん」
やはり……何となくそんな予感はしていた。自分の両親の死の事実に動揺して思わず音を立ててしまった。だから、寝返りをした。
そんな感じだろう。
僕はやばい……と言う顔でリリアさんを見ると、リリアさんも眉間に皺を寄せて困惑していた。
顔近い……。
「あ、でも。何となく前から気付いてはいたんだよ! ポーラは嘘下手だから。……でも、やっぱりそうだったんだね……」
まぁ、何となくは予想していた事だ。こんなに好奇心旺盛で、色々なことに興味があって。それに加えて頭もいい。
気付かない方がおかしいのかもしれない。
けど、本当に捨てられたのならまだ良かった。だって生きてるから。
でも、死んでると知って。しかも捨てられてなくて。魔物に殺されたと言う真実を聞いて、動揺しない方がおかしい話だ。
「でも、いいんだ! わたしにはノアがいるからねっ!」
流石に少しは堪えたのだろう。涙目にはなっていた。けれど、決して涙を流しはしない。
メアって、こんなに強いんだな。僕とは比べ物にならないくらいに……。
でも、そっか……僕がメアの支えになるのなら何よりだ。僕なんかでいいのなら、いつまでもそばに居てあげたい。
メアが僕を必要としなくなるその時まで。それは例えば好きな人。愛する人が出来た時までとかね。
でも僕の《不幸体質》に巻き込みたくはないという思いもあって色々と悩んでいる。
「ねぇ、それよりもリリアーちょっと引っ付きすぎじゃない……?」
メアはほっぺをプクーと膨らませて少し不機嫌に言う。
それよりもって、今結構大事な話だったぞ……。
メアなりに、暗い空気を和ませる為なんだろうが、その姿がまた何処か演技じみてる様で。より一層悲しそうに見える。
「はわわッ、す……すみません!」
リリアさんは慌てて僕から離れるとペコペコと何度も謝ってきた。
リリアさんもリリアさんで慌てすぎな気がするけど……。
元はと言えば、メアが驚かせたから抱きついてきた訳で……。
いや、よそう。今はふざける様な気持ちにはなれそうもない。
「話は戻るけど、リリアさんの為にできる限りの事はするよ。ね? メア」
「うん! 暫くここに泊まることになると思うしー! 全然問題なしっ!!」
いつもの元気なメアに戻って、明るい声で親指を立てる。
その姿が、やっぱり少し哀しそうな。切なさが滲み出ている。
前から両親は魔物に殺されたと気付いていたと知って。
無理矢理今までも明るく振舞っていたのではないかと考えてしまう。
そう考えると、胸が締め付けられて息が苦しくなった。
リリアさんは「ありがとうございます」とまたお辞儀をしながら何回も感謝の気持ちを伝えていた。
「リリアさんはまず、誰かに素直に頼る事を覚えた方がいいかもね」
僕も場を和ませる為に、冗談を言ってみたが……。
なんせ場を和ませるとかそういう事をした事が無かったので不安だった。
けれど、思いのほかウケた様で。メアは僕に乗っかり「うんうん」と大袈裟に頷いていた。
リリアさんは「そ、そんなに私ダメダメなんですかっ?!」と本当にちょっとショックを受けていた。
そしてさっきまでの暗い空気はどこえやら。
僕らは3人で笑いあった。
笑いあって、疲れていつの間にか皆寝てしまった。
この世界は、こんなにいい人達が辛い目に遭っているなんて……地球がどれだけ平和で楽しい所だったのかが思い知らされた。
いい人達ばかりが、こんな目に遭うのはおかしい。
せめて、救える限りは救いたい。
だって僕は地球から来た転移、転生者で――7個のチート能力を持っているのだから。