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《不幸体質》のせいで7回死んだ僕は、神様にチート能力を7個貰ったので、人見知り&コミュ障を治そうとしたら問題だらけで難しすぎた~7回目の転生では劣等人の忌み子として嫌われる~   作者: 絶対人生負け組
第三章 2人の不憫な少女と《不幸体質》の僕

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第45話〜 リリアの過去② 〜

「そ、その……。今日は色々とありがとうございました」


  リリアさんはまたお礼を言う。


「か、感謝し過ぎじゃないかな……。僕別にそんなに何もしてないけど……」


「いえ! こんなに優しくして下さって私……嬉しかったです……」


  顔をバッと勢いよくこっちに向けて、僕の言葉を否定する。

  リリアさんはハッと我に返ったように、前を向く。


  え……なに? 僕の顔がブスだから笑わないように急いで顔を逸らしたの……?


  胸中で久しぶりの自虐をするが、リリアさんの横顔を見る限りそんな感じでは無いらしい。


「ねぇ、リリアさん。何があったか……リリアさんの事を教えて欲しい……です」


  リリアさんが中々言い出せそうに無いので僕から切り出した。


  かっこよく決める所なのに、やはり人見知り&コミュ障の僕は敬語になるし噛んでしまうしでダメダメだった。


「…………」


「あっ、言いたくないなら別に大丈夫だけど……」


  リリアさんと出会ってからまだ数時間。よく知りもしないこの変な格好をした劣等人なんか警戒するに決まってるよね。


「いえ、言います……」


  リリアさんは覚悟を決めたのか、深呼吸をして話し始める。


「私の両親は、病気のおばあちゃんの為にわざわざ『冒険者』になって。難易度の低い迷宮におばあちゃんを治すために必要な薬草を取りに行ったっきり、帰ってこなかったんです……」


「え、それって……」


「はい。数日後に死んだと知らせが来ました……」


  予想はしていたが、どうやらリリアさんの両親はいないらしい。

  その事実を聞いて、僕は心が締め付けられた。


「おばあさんは、何かの病気なの……?」


「はい……特別な薬草を使った薬がないと治せない病気らしくて」


  おばあさんの為にわざわざ『冒険者』になった両親の優しさが、今のリリアさんの優しさを作り出しているのだろう。


  どうやら迷宮に潜るには『冒険者』になる必要があるらしい事が新たにわかったが……。


  衝撃的なことを淡々と語るリリアさん。いや、落ち着いているように見えるが手が若干震えているのがわかった。


  ここで手を握ってあげるとかそんなイケメンな行為は出来るはずもなく……。


「あのね……実はそこで寝てるメアの両親は魔物に殺されてるんだ……。本人は捨てられたと知らされてるけどね」


「えっ、そうなんですね……」


「うん。内緒だよ……?」


「は、はい」


  僕が今このタイミングでこの事を言った理由は、親近感を湧かせるため。

  少しでも話しやすくなってくれればいいけど……。


  メアの両親を利用するみたいで少し罪悪感があるが、死んだ人は何も語らない。

  真実を知らないメアも寝ているから大丈夫だろう。

  そう思った瞬間


  ――ゴソッゴソッ


  と、メアの方から物音が聞こえた。


「ッ?!」


  もしかして起きていたのかと思って暫くメアを見てみるが、規則正しい寝息が聞こえるだけ。


  どうやら寝返りしただけのようだ。


  それにしては、タイミングが良すぎるような……考えすぎかな?

  今はリリアさんの悩み? に集中しないとね…………。


「それで、元々両親が経営していたこの『霧の宿屋』は私1人になってしまって……。元々はこんな立地の悪い所じゃなくて、もっと人が通って活気のある場所にあったんです。けど、両親が死んでお金を稼ぐことができなくて……おばあちゃんの入院費もあり借金をすることになってしまったんです」



  リリアさんの声は震えていた。勇気を出してこの事を僕に話してくれていることが伝わってくる。



「私一人では宿屋の経営は到底無理で。人を雇うお金もなくて……」


  それで、前の宿屋の場所を売って借金を返して。今のこの場所に住む羽目になったと言うことか……。


「そっか……大変だったね」


  僕はそう言って、リリアさんの頭を撫で――ようとしたけど踏みとどまった。


  ついついメアの時の癖で頭を撫でそうになってしまった。


  すると、それに気付いたリリアさんは僕の手を握り頭に置かせた。


  僕はリリアさんの意を汲んで、優しく頭を撫でる。


「私……どうすればいいか分からなくてッ……!」


  そんな時に、僕らが来たって事か……。頼りなさそうな僕でも、助けてくれる可能性を。どうすればいいかを教えてくれると信じて今話してくれている。

  判断力が薄れるぐらいに、リリアさんは追い詰められているのが簡単にわかった。


  最初に来た時も、警戒していたけどそれは一種の救難信号だったのかもしれない。




  リリアさんは僕に頭を撫でられて安心したのか、また涙を流していた。


  そうか……。リリアさんは1人で頑張ったはず。だけど、誰も助けてくれる人がいない。そんな中、どうすればいいかなんて分かるはずがない。


  僕やメアと歳は変わらないと思う。僕だって、この世界に来てからも。地球にいた頃も、分からないことだらけで。親がいないとできないことが沢山あって。

  どうすればいいかなんて、わからないのに。


  リリアさんも分かるはずがないよね……。




  部屋にはメアの静かな寝息と。声を殺してすすり泣くリリアさんの声が響く。

  時折リリアさんの口から漏れる嗚咽が、ホントに辛い思いをしていた事を感じさせた。





  僕は泣き止むまで、リリアさんの背中をさする事しか出来なかった。

  それが、悔しいと思った。


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