第44話〜 リリアの過去① 〜
まな板の上に《空間収納》スキルでメアが解体してくれたお肉を手から出すとリリアさんは驚いて少しの間固まってしまった。
それから、リリアさんが料理をしてくれて。
野菜はいつも食べているからあったらしく、それをお肉と一緒に食べた。
いつも野菜って……だからこんなに痩せ細っているのか。
この世界では塩とか直ぐに手に入るそうだ。味付けは塩味で、お肉も焼いただけだったけど焼き加減が絶妙で美味しかった。
リリアさんは久しぶりに食べるというお肉に思わず涙を流していた。
2人より先に食べ終わった僕は席を立って洗い物を始めた。
もう店員さんとお客さんの立場では無くなっているが、リリアさんは泣いているし。これくらいは僕がやってあげたい。
暫くして2人とも食べ終わり、その分の洗い物も済ませる。
リリアさんは泣き止んでいたが、目を赤く腫らしていた。
「その……。色々とありがとうございます」
リリアさんは今一度深く頭を下げてお礼を言ってきた。
「全然いいよ。これくらい」
リリアさんは顔を上げると、涙ぐんでいた。
「ご、ごめんなさい。人に優しくされたのが、久しぶりで……」
嗚咽混じりにリリアさんは語る。
リリアさんは涙を手で拭うが、また涙が溢れてきていた。
どれだけ辛い思いをしてきたのだろうか。僕はそれが気になったけど、自分の口から言うまでは何も聞かない方がいいと判断した。
僕らは何も言葉をかけずに、リリアさんが泣き止むまで一緒にいた。
メアは途中で眠くなり、そのまま寝てしまったので部屋のベッドに連れて行ったが。
それから暫くしてリリアさんは泣き止むと
「お見苦しいところお見せしました。すみません」
と鼻声で言ってきた。
「もう大丈夫? 話はいつでも聞くよ」
「遅くまでありがとうございます……。ノアさんももうお休みになって下さい……」
「そう? 分かった」
僕はリリアさんの言う通りに部屋に行って、メアの隣のベッドに横になる。
部屋は同じにした。メアもあんな事があったばかりだ。
寂しいだろうし、辛いだろうし。夢で魘されるかもしれない。
そんな時に、そばにいてあげたいから。
仰向けになって、頭の後ろで腕を組んで枕にする。
目は瞑らない。
天井を見ながら考える。
リリアさんは大丈夫と言っていたけど、あの様子だと大丈夫じゃなさそうだ。
僕が部屋に移動する時、横目で見たリリアさんは、どこか淋しそうな。なにか言おうとしていたけど、言えない。そんな悩んでいた顔だった。
その顔が脳裏にチラついて、中々寝付けない。やはり心配だ。
それから、何時間経った頃だろうか。
街は暗闇に包まれ、静寂な時間。どこからか虫の音やたまに通る酔っ払った人の声が聞こえる。
そんな中、部屋のドアが開く音に僕は目を開く。
「……あっ。す、すみません。起こしちゃいましたよね……」
そう言ってリリアさんはドアをゆっくり閉めようとした。
「あ、元々寝てなかったから大丈夫だよ。話があるなら聞くよ」
僕はドアが閉まる前に慌てて言葉を発した。メアが寝ているから抑えた声で。
すると、リリアさんはそーっとドアを開けて入ってきた。
僕はその間に起き上がり、ベッドの縁に座り直す。
リリアさんは僕の隣に腰掛ける。
リリアさんの雰囲気からして、暗い話だと推測がつく。
こういう手の話の時は、対面よりも顔を見ない横座りの方が話しやすいから、隣に座られたのは別にお、驚いてないからね?!
チラッと横顔を見ると、何かを決意したそんな感じの表情をしていた。
僕も思わず緊張して、ゴクッと唾を飲み込む。




