第40話〜 15歳の劣等人でレベルが《2500》は異常らしい 〜
え? 僕のレベルが《2500》だって?
「え、えと……?」
僕が訳が分からず困惑している理由は簡単だ。
だって僕の本来のレベルは今も確認したけど《3762》なのだ。
それなのに、水晶に出たレベルは《2500》という。
『偽りの仮面』に設定した偽レベルのはず。
今は仮面をつけていない。なのに、偽る方のレベルが出ている。
「の、ノア様。レベルを偽る魔道具などは使っていないですよね……?!」
興奮気味に聞いてくる受付のお姉さん。
「は、はい。使ってませんけど……?」
『偽りの仮面』を被っていない今現在、使っている訳では無い。それに、僕の本来のレベルはもっと高い。
受付のお姉さんの反応を見るに、『劣等人』の僕が《3000》レベルを超えている事実を聞いたら多分、衝撃的過ぎて倒れてしまうだろう。
「の、ノア様……? 貴方本当に15歳なんですか?」
受付のお姉さんは、自分落ち着かせるために深呼吸をして聞いてきた。
どうやら、この水晶は触れた人のレベルと年齢が分かるものらしい。
「じゅ、15です」
「うぇぇぇっ?! ま、まだそんなにお若いのにっ?!」
この世界では確か15歳で成人って言っていた。
「……はぁ、はぁ…………す、すみません取り乱しました……」
周りの職員の目も気になるのか、少し赤く染めながら謝ってきた。
うん、驚きすぎでしょこの人は。僕もレベルが本来のレベルではなく偽りのレベルの方で表示されていた事には驚いた。
けど、お姉さんのこの驚きようを見たら逆に冷静になってしまった。
「ノアは凄いでしょー!」
と、今までのやり取りを見ていて理解したメアが誇らしげに受付のお姉さんに言った。
なんで自分の事のようにドヤ顔しているんだメアさんや……。
「そ、そうですね。歴史上『劣等人』の最高記録の《2500》を出した人の年齢は83歳との記録が残っているので……。ノア様は、15という若い年齢にも関わらず今現在《2500》ということは……記録を打ち破る事も可能ということ……ですので」
凄い早口で捲し立てられて、頬を引きずらせているメアさん。
……ん? なんで僕の方を向いて若干引いた様な顔を見せるんだ……?
「ノア、只者じゃないと思ってたけど……異常だねー!」
グサッ!! 僕に引いてたのかよっ?!
受付のお姉さんもお姉さんで、ひとりブツブツと「これは絶対歴史に残りますね。偉大な伝説として語り継がれるでしょう」と呟いているし。
「あ、あのっ、す……すみません」
他の人の視線が怖くて、耐えかねて声をかけると受付のお姉さんはハッと顔をあげる。
「な、なんでしょうか?」
「は、早く証明書を……。つ、作って貰えますか…………?」
急かすようで申し訳ないけど、こちとら周りの目線が怖いんですっ!!
「あ、あぁっ! 申し訳ありません! では次はそちらのメア様。水晶に手を……」
「はーい!」
メアは上機嫌で水晶に手を置くと、僕の時と同じように淡い光を発し、5秒ほどして消えた。
メアは受付のお姉さんの反応を楽しみに待っているように見える。
……楽しそうで何よりだけども、受付のお姉さんには少し悪いな…………。
受付のお姉さんは、水晶に表示されたらしい物を見ると、またもや目をギョッと見開いて驚いていた。
「えっ?! じゅ、14歳っ?! ……その見た目でっ?!」
受付のお姉さんはメアの背丈からもう少し幼いと勝手に思っていたらしい。だから、14歳という意外な年齢に驚いていた。
うん、僕もわかりますよその気持ち。だって最初10歳だと思ってましたもん。
僕が受付のお姉さんの反応にうんうんと相槌を打っているとお腹に衝撃が。
「め、メア止めッ、殴らないでっ!」
プクーと頬を膨らませて怒っているメアさん。
「わ、悪かったから。ごめんって」
そう言うとメアはジトッと疑うような目を向けてきた。
よし、奥の手を使おう……。
「〜〜っ?! の、ノア止めて! ゆ、許すから恥ずかしいからーっ!」
頭を撫で撫ですると、恥ずかしがって許してくれた。
よし、目論見通りだ。メアは頭を撫でられるのに弱いからね。
あ、あとでお姫様抱っこもしてあげよう。
この光景を見ていた受付のお姉さんは穏やかな笑顔をしていた。
いや、貴女が撒いた火種ですよっ?! 何笑ってんだよこのやろう!
「仲がいいですね。素敵です」
「あ、ありがとうございます……」
勿論心の中で思っていることを言葉に出すことは出来ない。
僕が恥ずかしがって目を逸らしながらお礼を言うと、カウンターには2枚のカードが置かれた。
「こちらが証明書です。こちら、ギルド登録時にも役に立つので無くさないで下さいね。もし無くしてしまった場合にはまたここへいらして下さい。再発行には300マインかかってしまうので気をつけてくださいね」
「は、はい。分かりました……」
再発行の方がお金かかるのか……。無くさないように必要な時以外《空間収納》に入れとこ。
最後にもう一度受付のお姉さんにお礼を言って、僕達は役所を出た。




