第4話〜 命の恩人、メア ~
僕が再び目を覚ましたのは、太陽が高く登った時だった。
僕は休んだおかげ――というかほとんど『自然回復S』の能力のおかげで、筋肉痛は大分和らいだ。
朝起きた時は、筋肉がまだ痙攣していたのに今ではもうすっかり元気だ。
だが、体のだるさはまったく取れていなかった。
どうやら、能力にも出来ることと出来ないことがあるらしい。
この体のだるさの原因は何だろうと考える。
僕が使った能力で、体に影響がありそうなのは何だろう。
『自然回復S』と『剣術S』、そして『限界突破』だ。
僕の予想だと、多分『限界突破』が原因だと思う。
『自然回復S』を持ってなかったら、筋肉痛は1ヶ月は続いただろうなと予想がつく。
『限界突破』の能力を制御出来るなら良いけど……今度挑戦してみるか。
僕が、色々と考え事をしているとドアの方から視線を感じた。
僕は誰だろう、さっき体の大きいおばさんかな? と思い、ドアの方に視線を向けるとそこには小さな女の子がこっそりとこちらを伺っていた。
その女の子と目が合うと、ビクッと体を震わせた。
誰だろうと思い、首を傾げると女の子はドアを開けて部屋の中に入ってきた。
僕の寝ているベッドの近くまで来ると女の子は「もう、体は大丈夫なの?」と話しかけてきた。
「あ、えと……。う、うん。もう大丈夫」
僕は相変わらずのコミュ障&人見知りを発動しながらも何とか返答した。
「と、ところで……君は誰?」
見たところ、10歳くらいだろうか。茶色のショートヘアにキラキラとした蒼色の目。
10歳の女の子にしては、細くてすぐに折れそうな白い腕。
大丈夫だろうか。ちゃんとご飯は食べているのだろうかと心配になるような小柄な女の子だ。
「わたしー? わたしの名前は、メアだよ! この家に住んでるの!」
「そ、そうなんだね。……僕の名前は、ノアだよ」
僕は何とか自己紹介をして、何か話題はないかと視線を泳がせていると
「お、やっと起きたのかいノア」
と、さっきの体の大きいおばさんの声が聞こえてきた。
「あ、はい。その……この子は?」
僕は気になったことをおばさんに質問する。
この、メアと言う子はこの家に住んでいると言っていた。なら、この子のお母さんは何処にいるんだろう。
少し考えると疑問が次々と浮かんでくる。
「その子はメア。あんたの命の恩人さ。あんたが倒れてるところを見つけて、あたしに教えてくれたんだよ」
え?! そうだったのか……。てっきり、このおばさんが見つけて助けてくれたものだと思っていたのでビックリだ。
「あ、メア……さん。助けてくれて……あ、ありがとう」
僕がメアに向かって頭を下げると、メアはへにゃっと可愛らしく笑って頭を撫でてきた。
へっ?!
まさかこんな年下の子に頭を撫でられるとは思っておらず、鼓動が高まる。
ただでさえ、地球にいた時は人との関わりが少なかったのだから、無理もない。
決して、ロリコンではない!
しばらく僕の頭を撫でていたメアは、おばさんに促されて部屋の外に出て行った。
おばさんはメアが出て行ったのを確認すると、神妙な面持ちで僕の目を見てきた。
僕は、なんだろうと少し緊張して目を逸らしそうになるが、頑張っておばさんの目を直視した。
おばさんは、覚悟を決めたのか口を開いた。
「メアの両親はねメアがまだ3歳の時に……魔物に殺されたんだよ」
「えっ?!」
いきなりそんな話をされるとは予想していなかった僕は思わず声を出してしまった。
「メアは両親に捨てられたと思い込んでいるから、この事は言わないでおくれよ。あたしももう歳でね……メアの遊び相手をしてやれないんだ。だから、この村にいる間はメアと遊んでやっておくれ」
最初は何故そんなことを僕に話し出したのだろうと疑問に思っていた。
けど、そういう事か……。おばさんは色々忙しいから、メアの遊び相手をして欲しいと言うわけか。
でも、村には他の子供たちがいないのかな?
不思議に思ったが、今は関係ない。
「わ、分かりました……。でも、僕あんまり人と話したりするの得意じゃないのでメア……さんが満足するか、分かりませんけど……」
僕の命を助けてくれた人達にせめてもの恩返しとして、僕は了承した。
それに、行くあてがないのでしばらくお世話になるだろう。
メアの遊び相手になる事を了承すると、おばさんは優しい笑みを浮かべながら「ありがとう」と感謝の言葉を口にした。
僕の方が感謝する立場なのに、わざわざ「ありがとう」なんて、本当に優しい人なんだな……。
見た目はちょっと怖いけど。
本当は、「こちらこそありがとうございます!」とか返したいんだけど緊張して言えない。
思考回路が爆発しそうになった所で、「ぐぅぅぅー」と僕のお腹がなった。