第37話〜 『劣等人』の超越者 〜
知らないから質問したわけで、何故か逆に正気を疑われてしまった。
「……は、はい。し、知りませんっ」
緊張で声が上擦ったがここで引く訳には行かない。どこの世界でも親切な人と親切ではない人はいるから。
ましてや、マーティンの治安や法律なども知らない。
折角少し話しやすくなってきた、このチャンスを逃す訳には行かない。
隣では「メアも知らなーい!」と興味津々で答えていた。
多分メアがこんなに頭が良いのは好奇心旺盛で、色々な事に興味があってもっと知りたいと言う欲――知識欲が強いからだと僕は思う。
それはそうと、門兵の2人は相も変わらず驚きを隠せずにいた。
「『劣等人』って言うのは、お前さんみたいに、黒髪で両の瞳が、黒目の人の事を言うんだ」
「『劣等人』って名前がついた理由は簡単だ。レベルの上限が3000までらしいんだよ。まぁ、今までの『劣等人』の記録に残っている最高記録は2500レベルらしいんだがな……」
…………えっ?! えっ?! えぇっ?!
ちょっと、待ってちょっと待って?!
僕の今のレベル何だったっけ? 確認しよう。
『レベル表示』
《レベル3762》
《偽レベル2500》
……っ。あぁ……。なんかおかしい事になってるぞぉー……?
余裕で過去最高記録打ち破ってるし、『劣等人』のレベル上限超えてるんだけどー…………。来る途中でも魔物倒してたけど、レベル上がるの全然遅くなってないんですけど……。
「調べたところ、そのレベルの上限とかがあるのが黒髪で量の瞳が黒目の人だけだったとさ。だから黒髪黒目の人は『劣等人』と呼ばれてるんだ」
僕が内心滅茶苦茶混乱してる事なんて知りもせずに、淡々と説明を続けていく。
おぉい。ちょっと待って、ほんとに。
……えぇっ?! 僕例外なのかな?
「それって、絶対黒髪黒目の人はレベルの上限があるとか。レベル上がりにくかったりするんですか……?」
「あぁ、そうだな。例外なんかは聞いたことが無い」
僕が異常ってこと?! あ、レベルアップ関連のチートスキル2つあるしそのせいかも……。それに僕は元々この世界の住人じゃなかったから、例外なのかも。
「お忙しい中ありがとうございます」とお礼を言って、門を通り歩いていく。
「これぐらいなんて事ねーよ。指輪ありがとよ」
「ネックレスもありがとよ。嫁さんにプレゼントしたら喜ぶぜ!」
「次にあった時はその話聞かせてくださいねー?」
と冗談交じりに言うと「おう!」と幸せそうな表情で頷いてくれた。
ふぅ、良かった。これで断られてたらもっと人見知りとコミュ障が酷くなってたよ。
勇気を振り絞って良かった。ちょっとずつ治していこう!
少し歩いて、門から離れたところで声が聞こえてきた。
「色々大変かもしれないが、頑張れよー!」
後ろから、門兵さん達が手を振りながら励ましの声を飛ばしてくる。
それに応えようと後ろを向き、手を振り返す。
「お幸せになー!」
……っ?! あっ?! この指輪気付いてたのっ?! 別にそういうのじゃないんだけどな……。
マジックアイテムの絆の指輪をしているのを見られて、変な誤解をされてしまったみたいだ。
僕は苦笑しながら手を振り返す。
隣のメアは「はーい!」とニコニコと嬉しそうに返事をしていた。
はぁ……。メアが幸せと思えるなら誤解されててもいいか。




