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第32話〜 神とのリンク 〜

「――……っは?!」


  あれ、僕寝てた……?


  もう朝か。


「はぁ。何事もなくてよかっ……た?」


  朝だと思った僕は体を起こして伸びをしながら周りを見渡し言葉を失う。思考が一瞬停止した。




  ……1番最初。僕が転移される前や、死んで《転生》スキルで毎回帰ってきた場所。

  スキルを授けられた場所。


  つまり、神様と初めて会った場所だ。


  辺り一面真っ白で、何も無い空間はその時と同じだ。


『やぁ、君が噂の《不幸体質》持ちかい?』


「っ?!」


  急に聴こえていた声に驚き、周囲を見渡すが誰もいない。


『あー、上だよ上』


  その言葉どおりに、上を見ると


「……だ、だれ…………ですか?」


  知らない人。いや知らない神様がプカプカと浮かんでいた。


  僕にスキルをくれたお爺さん神様ではなく。若い男性。

  かなりのイケメン。うん。だけど、チャラい感じがする。



『イケメンって言葉はありがたいけど、チャラいってちょっと失礼じゃないかー?』


「あ、す……すみません」


  忘れていたけど、そうだった。神様は僕の思考を読めるんだった。

  迂闊なことは考えないようにしよう。


『あー、君の質問に答えるね。僕は名乗るほどの神ではないよー。君にスキルを授けた神に頼まれたから様子を見にきたんだ』


  あ、あの老人神様なんか仕事がなんとかって言ってたような……。


『そうそう。先輩、申し訳なく思ってたよ』


「え……なんで、ですか?」


  人見知り&コミュ障発動。メアとはもう大分言葉に詰まらずに自分の考えを話せるようになったけど。根本的には直っていない。

  これは《自然回復S》でも治らないらしい。


  というか、神様にも上下関係あるんだね……。


『えーと。それは、ほら……君にスキルの使い方とかをもっとちゃんと教えていたらあんな事にはならなかったし……ね?』


  若い神様は、気まずそうに目を泳がせながら説明してくれた。


  あの事とは、セル村をスタンピードが襲ったことを指しているのだろう。



  あの時の光景を思い出して気分とともに顔が下がる。


  まぁ、確かに。もっとあのお爺さん神様がスキルやこの世界について教えてくれていたら、被害はもっと少なく出来て。

  メア以外の人も少なくても、数人は助けられたはずだ。ポーラさんも死ななかったかもしれない。


  だけど、それは全て神のせいにしてもいいのだろうか。

  それでいいのだろうか。いつまでも神を恨んでも何にもならない。

  それは麗奈(れな)の時に充分にわかった。あの時の僕は未熟で、神を恨む事しか出来なかった。


  でもその結果がこれだ。突然異世界に転移して。わけも分からない《不幸体質》のせいで異世界で7回も死んで。


  神様ももちろん悪いのかもしれないけど、これは――


「――僕のせいですよ……」


「神様は何も悪くない。寧ろ仕事で忙しい中、僕に何回も話しかけてくれて、スキルのアシストをつけてくれて」


  だけど、

「それを上手く活かす事が出来なかった僕の責任です」


  地球でのいじめの事。麗奈の死。そして地球に残っている両親。

  セル村での日々。スタンピードの時何も出来なかった自分を思い返して、目頭が熱くなった。


  泣いて済むわけじゃない。僕は沢山の人達の想いを背負って生きていかなければいけない。

  全て神のせいにするなんて、惨め過ぎる。


  泣かないように、下唇を噛み締め両拳に力を入れる。

  手のひらに爪が食い込む。


  そして、神様に顔を向け言う。


「僕は大丈夫です。責任なんて感じないで下さい。と伝えてください」



  チャラい神様の方を見ると、なんとも言えないような表情をしていた。


「…………?」


  その表情に疑問を持ったのを察してか、チャラい神様が動揺しながら『なんでもないよ! 伝えておくよ』と言った。


  その様子をみて僕はより一層の疑いの目を向ける。

  元々神を信仰とかしてないし、何か企んでいそうで信用していない。

  なので、今のでこのチャラい神は何かを知っていると言うのが分かった。


  チャラい神は僕がジトーっと疑いの目を向けているのに気付くとあたふたして何か発する言葉を探していた。


  うん、もうこれ。なにか僕を利用しようとしているの確定だな。


『……あっ?! もう繋がり(リンク)切るよ! 目が覚めたら直ぐにダンジョンから出て!!』


  え……? 突然何言って……――


  大声で(まく)し立てるように命令されて、ビックリした時にはもう視界が真っ暗になった。



  次には意識も遠のいていった。

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