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《不幸体質》のせいで7回死んだ僕は、神様にチート能力を7個貰ったので、人見知り&コミュ障を治そうとしたら問題だらけで難しすぎた~7回目の転生では劣等人の忌み子として嫌われる~   作者: 絶対人生負け組
第一章 7つのチート能力も使えなければ意味が無い

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第15話〜 優しくしてくれて、受け入れてくれて『ありがとう』 〜

  僕は、まだ目の前で起きている事は夢のように思えて頬を指で思いっきりつねった。


「いっ?!」





  頬をつねっても、痛い……。

  これは、夢じゃないの……?





  そうしているうちにも、どんどん魔物が増えていって次第に火の手も上がるようになった。






  まだそれを現実とは思う事が出来ずに、ただ呆然と外の惨状(さんじょう)を眺めていると


「ノアっ?! あんた、無事かいっ?!」

「ノアー?! 大丈夫っ?!」


  切羽(せっぱ)()まった表情で、ポーラさんとメアが勢いよく扉を開けて入ってきた。





「ぽ、ポーラ……さん……? これは、何が起きているんですか…………?」




  僕が、まだ現実の出来事と思えずに恐る恐る真実を確かめるようにポーラさんに訊くと、ポーラさんは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。

  メアの方を見ると、目が合ったがすぐに逸らされて(うつむ)いてしまった。




「ノア……。今は説明してる暇がない!とりあえず、逃げるよっ!」




  そう言って、僕の手を引いて家の外に出る。












  すると、そこら中に家の破片や村の人達の血や(むご)い死体が転がっていた。


「……っ?!」


  僕は、それを見て吐いた。あまりにも酷い状態。原型をとどめていない顔や体。

  死体の表情は、どれもとても苦痛に歪んでいた。










  僕は、段々とこれが現実だとやっと理解して来た。


  メアは、吐いた俺の背中を(さす)ってくれた。


  あぁ……情けないな僕は……。 年下のしかも、女の子にこんな心配をされるなんて。

  メアは凄いな……これを見ても吐かないなんて……。





  メアに「ありがとう」とお礼を言って口を拭って立ち上がる。



















  こんな僕でも受け入れてくれたセル村の人達。

  みんな、みんなとても楽しそうに暮らしていて。








  こんな人見知りでコミュ障の僕にも嫌な顔1つせずに、話しかけてくれて。






  みんな、とっても面白くて。




  そして、この世界に来てからの不安な気持ちを少なくして勇気をくれて。






 そして何よりもこんな僕に、どこから来たかも分からない得体の知れない僕に……とってもとっても









 ――――優しくしてくれた村の人達。











  そんな人達を拒絶する王都も許せない。

  だが、今はそんな優しい人達を殺した魔物達が許せない……。








  僕は、強く拳を握り締めて覚悟を決める。




「ポーラさん。その剣、1本貸してください」




「そう言うと思って2本持ってきてたんだよ」




  ポーラさんは、僕に1本の剣を渡してくれた。




  (さや)から出すと、それは今まで修行で使っていた木剣では無くキラキラと輝く銀色の真剣だった。





「ノア、今はとりあえず村の外まで逃げるよ」


「ッ……分かりました」




  僕は今すぐ魔物たちをぶっ殺したい気持ちを抑えてポーラさんの指示に従って逃げる。



  ポーラさんは、メアの手を引いて走っているので僕の少し後ろにいる。





「そこを右!」




  ポーラさんが、逃げる方向の指示を出す。

  僕はそれに従って進む。














  すると、曲がった瞬間後ろで金属と何かがぶつかり合った甲高い音が聞こえてきた。




「っ?!」





  ポーラさんっ! メアっ!







  来た道を引き返すと、そこには狼のような魔物と鍔迫(つばぜ)り合いをしているポーラさんの姿があった。







「ポーラさんっ!!」




  ポーラさんは、僕の声に気づいたのか目だけをこちらに向けて



「ノア! メアを頼んだよっ!」



 と、言葉を投げかけた。







  その後に、僕の方にメアを突き飛ばしてきた。

  僕はメアを胸で受け止めて、顔を上げる。



  ポーラさんは、狼の魔物を腕力で弾き飛ばして腹を切り裂いていた。

  だが、狼の魔物は次々とポーラさんに襲いかかる。



「っ! ポーラさん!」



  やばいやばいやばい……。このままじゃポーラさんまで、殺されるっ!





  僕は、地球では無かった初めての出来事に焦って、まともな言葉を発する事も出来なくなっていた。




  それでもポーラさんは僕の心情を察して語りかけてくる。






「あたしのような老いぼれ何か気にせずとっとと行きな! いつか、こうなる事は前から覚悟してたのさ」






  ポーラさんは、魔物の群れを相手にしながらも言葉を連ねる。










「短い間だったけど、ノア……あんたと一緒に過ごした時間は楽しかったよ。どんどん剣術が成長して行く姿は見ていて面白かったねぇ……。

  メア、あんたはいつも色々と手伝ってくれてありがとね……。傍で成長していくのを見れて幸せだったよ」















  なんだよ、それ……。まるでもう死ぬ人がいう台詞(セリフ)じゃないか……。












  涙が溢れ出てきて視界が歪む。瞬きをすれば涙が頬を伝って、(あご)を伝って地面に落ちる。




  メアも、泣いていた。声を押し殺して、僕の服の(すそ)をギュッと握って泣いていた。







「ポーラさんっ!! 僕は、僕はまだ貴方にっ!! ――恩返しが出来てないっ!!」




  僕は、ポーラさんに貰ってばっかりだ……。ポーラには、少ししか返せなかった……。







「メアを、頼んだよ」






  ポーラさんはフッと微笑み、そう語りかけた。

  その短い言葉だったけれど、ポーラさんの色々な感情が、気持ちが沢山詰まっているのが分かった。






  僕は、必死に喉から声を出す。震える声でポーラさんに叫ぶ。








「短い間だったけど、命を助けてくれて……僕を受け入れてくれて――あ゛りがとうっ!!」











「ポーラっ!! メアも、幸せだったよ!! こんなメアを育ててくれてあ゛りがとうっ!」

















  ポーラさんは、それを聞いてとても優しい笑顔を――満足そうな笑顔を浮かべて呟いた。














「あぁ……あたしは、幸せ者だ」



























  その次の瞬間、夜空に赤い花が舞った。

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