第12話〜 剣の修行・特訓 〜
ポーラさんは、僕がまだ構えていないにも関わらず結構思いっきり木剣を振るってきた。
っ?! いきなり、実践訓練?! 僕剣の使い方さえ知らないのにぃぃぃ!!
なんとか避けることが出来たが、木剣とはいえ結構重さや強度はある。本気で当てられたら多分骨は砕けるだろう。
まぁ、僕の場合は《自然回復S》があるからすぐ治るけど……痛いのは嫌だな。
生憎、痛めつけられて悦ぶ性癖は持ち合わせていないからね。
「ノア、先に謝っておく。あたしは手加減がとんでもなく下手くそだよ?」
そう言いながら木剣を振るってくるので、僕も木剣で受け止める。
そういうのは、もっと早くに言って欲しかった。それを知ってたら、素振りで剣の扱いに慣れてからしかポーラさんに頼まなかったのに。
あれ? まず僕頼んでなくない?
そんな事を考えていたからか、ポーラさんの振るった木剣が僕の横腹を容赦なく襲う。
「かはッッ?!」
僕は衝撃で少しだけ飛んで受身を取るが、痛みで思わず地面に膝を着く。
多分、筋トレしてなかったら受け身も取れずに足とか手首捻ってたかも……。
剣の修行よりも先に体鍛えてて良かったぁ。
「ほら、ノア。時間は有限なんだから、早く立ちな。強くなりたいんじゃなかったのかい?」
ポーラさんは「そんなんじゃ、自分の身も守れないよ」と言ってまだ起き上がってない僕にとっては容赦なく木剣を振りかざす。
僕は地面を転がってなんとか避ける。
ポーラさん……理不尽にも程があると思うんだけど……。
さっき、時間は有限だけど休息するのも大事だって言ってたじゃん!!
…………いや、そうか。
「自分の身も守れないうちは休息の暇なんてないか」
僕は起き上がって、正眼の構えを取る。
ポーラさんが木剣を独特な動きで振るってくる。
僕は剣道とかしか見たことないから、独特に感じるのかもしれない。これがこの世界での普通の剣の振り方なのかな?
そんな事をふと思っているとポーラに「邪念を捨てて集中しな」と注意された。
剣の振り方なんて、どうでもいい。強ければそれでいいんだから。
それから、しばらく僕とポーラさんは少しの間見つめあって互いに走り出す。
僕もポーラさんに一太刀でもいいから浴びせたいと思い、攻撃に回るが全部防御されてしまった。
それからは、次は自分と番だと言わんばかりにポーラさんは僕に木剣を振るう。
僕は、防戦一方で木剣で防ぐ事しか出来なかった。
木剣と木剣がぶつかり合う鈍い音と、互いの吐息だけが聞こえる時間が続く。
ポーラさんとの特訓を始めてから、何分ぐらい経った頃だろうか。
僕は体力が無くなり、膝を着いてしまった。
結構体力着いてきたと思ってたけど、全身を使って剣を扱うからか体力の減りが早かったのだ。
「今日は、このぐらいで終わろうか」
「あ、ありがとうございました。明日もお願いしますっ!」
「勿論だよ。ノア、あんたのこれからの成長が楽しみだよ。期待してるからね」
ポーラさんは、そう言い残して畑の方に戻って行った。
ポーラさんは、疲れているような顔ひとつしていなかった。
僕は乱れた呼吸を整えるために地面に大の字になって寝っ転がりながら考える。
ポーラさん……どんだけ体力あるの? しかも、木剣で打ち合って分かったが、男の僕よりも力が強かったし……。
木剣で受け止める時の衝撃が重くて腕がまだ少しジンジンするぐらいだ。
っくそ。もっと体力付けないとな……。それに、筋肉ももっと付けないと……。
それに、スキルの事もイマイチわからない。《剣術S》の能力を持っているはずなのに今回は発動しなかった。
何か発動条件がある事は間違いないだろう。
では、その発動条件はなにか……。
今現在分かっていることは、僕が持っている物が剣と判断された時に発動する事。
それは、『迷いの森』で戦ったデカい兎で分かったことだ。
でも、さっきのポーラさんとの修行の時は木剣を使っていたのに発動しなかった。
ならば、他にも発動条件があるのだろう。
考えられるのは、僕が命の危険に晒されている時。それと、倒すべき相手――敵と認識した時だと思う。
今分かっていることで推測出来るのはここまでだな。まぁ、神様がまた話しかけてくれるだろうからその時に聞いてみよっかな。
とりあえず、今は時間が惜しい。
「っし。頑張ろ」
呼吸もある程度整ってきたので、僕は起き上がり木剣を握る。
そして、素振りを始めた。
ポーラさんと打ち合った時に、僕はまだ剣に振り回されている感じがした。自分で全然思うように動かすことが出来なかったのだ。だから、素振りをすると決めた。
腕力も、体力もついて、剣の扱いも上手になるからね。一石二鳥ならぬ、一石三鳥だ!
それに、何事も基本は大事だからね!