第11話〜 修行の日々 〜
修行と言っても、地球にいる時ほとんど運動してなかったから体力作りからスタートだ。
毎日朝早くからセル村の周りを何周か走って、バテたら家に帰る。
ポーラさんやメアと一緒に朝ごはんを食べ、その後は部屋で腹筋や腕立て伏せ、スクワットを10回ずつやる。
10回って、少なっ?! て思うかもしれないが、地球いた頃休日は家でゴロゴロしてた僕にとっては滅茶苦茶キツかった。
筋トレが終わったあとは、メアと一緒に外で遊んだり畑仕事などを手伝う。
そして、夜ご飯を食べた後にも軽く走りに行く。
走る距離や筋トレの回数は徐々に増えて行って、自分が成長しているのを実感出来て結構楽しかった。
《自然回復S》のスキルを持っている僕は筋肉痛にならないらしい。なので、どんどん筋肉や体力がついていった。
でも、キツいのは変わらない。毎日口の中が血の味がするぐらいまで走って頭がクラクラする。
それに、筋トレも己の限界を超えてやった。これぐらいしないと、僕の《不幸体質》のせいでなにかが起こった時に自分の力で対処できない。
《限界突破》などのスキルも発動条件は未だに分からないし……。
そんな本当に血の滲むような筋トレ&体力作りの日々で分かったことがひとつ……走ったり筋トレすると、少しだがレベルも上がるということ。
《獲得経験値10倍》と《必要経験値10分の1》のスキルを持っている僕でさえ50とかしか上がらなかったから、普通なら持っと時間かかるんだろうなぁ……。
いや、でも《不幸体質》のせいで上がらない可能性もあるか……。
どっちにしろ、強くなれればいい。
とまぁ、そんな日々を過ごしていったおかげか、セル村の人達は僕の事を奇異な目で見る人はいなくなった。
むしろ、笑顔でたまに話をするぐらいにもなっていた。コミュ障&人見知りだから、苦労したけど……。
良かったぁ……。呪いのスキル《不幸体質》があっても僕が頑張ればどうにかなりそうかも、と思い始めていた。
そんな事を思ったのがいけなかったのかもしれない……。
後に起こることに僕は、激しく後悔する事になるなど、今の僕には分かるはずもなかった。
ある程度、体力がついて来たので今日からポーラさんから借りた木剣を使って剣の修行を始めよう。
「と思ったけど、どうすればいいんだろう……?」
僕が1人で悩んでいると
「あたしが、練習相手になってやるよ」
とポーラさんが話しかけてきた。
「え、その……でも畑仕事は……?」
「もちろんやるさ。畑仕事の空いた時間に付き合ってやるってだけさ」
「でも、疲れますよ……?」
「なにぃ?! あたしがそんなに体力ないババァって言ってんのかい?」
「い、いやっ?! そこまでは言ってないですよっ?!」
思わずツッコミを入れるとポーラさんは、ふっと微笑を浮かべた。
「やっと、表情が柔らかくなってきたね。ノア……」
ポーラさんは、意味のわからないことを言ってくる。
僕が疑問符を頭の上に浮かべているとポーラさんは優しい笑顔のまま言葉を続ける。
「あんた、ここ最近切羽詰まった表情で体力作りや筋トレしてるみたいだけど……どうしてそこまでするんだい?」
? そんなの決まっている。この世界は典型的な弱肉強食。強くないと生きていけない。呪いの《不幸体質》スキルがある僕は不幸をも乗り越える強さが必要。
それに――他の人を巻き込む訳にはいかない。《不幸体質》の呪いのスキルがある限り、周りの人にも必然的に僕への不幸へ巻き込まれる可能性は上がる……。
「僕は、他の人たちよりも弱いんです……。この世界で生きていくためには強さが必要です……。それに力が無いと、いざと言う時大事な人を守れないじゃないですか……?」
そう、力が無いと自分を守る事も人を守る事もできない。人に助けてもらうことしか出来ない役立たず――クズも同然だ。
僕は地球にいた頃の出来事を少しだけ思い出してしまった。
嫌な記憶を思い出しちゃったな……。こんな事なら、地球での記憶を失って転移、転生した方がよっぽどマシだったかもな……。
「そうかい……。ノア、この世界で生きていくためには強い力は必要なのは確か。時間は有限で焦る気持ちも分かるが、時には修行を忘れて休息する日も必要だよ」
「そう、ですね……」
確かに休息の日も必要かもしれない。それにせっかくの異世界だ。どうせなら、楽しく生きたいしね。
「さて、じゃあ剣の修行――特訓を始めようか。ノア」
えぇっ?! 今の流れは完全に「今日はもう休みな」的な事を言う流れじゃない?!