第10話〜 禁忌の能力《転生》 〜
この世界にはまだ慣れてなく精神的にも疲れているので横になってゆっくり休む事にする。
すると、またジジッと頭に変な音が響いた。
これは、神様が話しかけてくる前になる音だ。
正直言うと、うるさい。まぁ、神様がいきなり話しかけて来ないだけありがたいけど。
いきなり話しかけられたら、ビックリして心臓に悪いからね。それを思うとジジッと言う音が鳴るのを、合図にしてくれているのかもしれない。
やっぱり神様は優しいなぁ……。異世界に、転移させて7回死なすのは優しくないけど。
「1日ぶり、いや正確には2日ぶりじゃのぉ……。元気そうで良かったわい」
何が元気そうでよかっただよ……。2日前『迷いの森』で話したあとめちゃくちゃ大変だったんだぞ……。
「ほほ……。それはすまなかったのぉ。でも無事に生きておるんじゃから結果オーライじゃ!」
この神様、過程はどうでもいい神様か……。まぁ、1年生かすために7回も死なせる事も平気でしてくる神だから、薄々気が付いてはいたんだけど……。
「ワシは死なせとらんわい! 正確にはお主の《不幸体質》のせいじゃよ」
それはごもっとも……。今更だけど、そんなクソみたいなスキルと転移対象に選ばれた僕は見方を変えれば逆に幸運なんじゃないか?
「お主は馬鹿か? もう死んでしまったら転生出来ないんじゃぞ?」
「……は? ……どういう事……?」
神様の言ったことに1人理解が追いつかないでいると神様は何かを思い出したのか「あっ」と声を上げた。
「まだ《転生》の能力について話しておらんかったな。簡単に言うと、お主はもう《転生》能力を持っておらんのじゃ」
この世界や能力について何も知らない僕は、神様の説明をただただ聞くことしか出来なかった。
「《転生》スキルは、人間に与えてはならない禁忌のスキルなのじゃ。《転生》能力を悪用して何回も死ぬと、転生する分、新しい能力が貰える。それでは、強くなり過ぎて世界のバランスが崩れてしまうからのぅ……」
「え、じゃあ。神様はその禁忌の《転生》スキルを僕に与えたって事ですよね。それってまずいんじゃ……」
「ほほ。自分の心配より神様の心配か。大丈夫じゃよ。お主は《不幸体質》という異常なスキルを持っておるから特例措置として1日だけ《転生》スキルを使う事が神達の間で許可されたのじゃ」
神様でも《不幸体質》は異常なスキルで困惑する程の物なのか……。それで、僕は1日生き延びたからもう《転生》の能力は使えないと……。
「そうじゃ。じゃから代わりに《空間収納》の能力を授けておいた」
お、おぉ?!!!
「ありがとうございます、神様!」
僕は欲しかった能力を手に入れることが出来て舞い上がっていた。
だって、物をわざわざ持ち歩かなくて済むし、レベルアップすればきっと沢山の物を運べるはずだ。
「それだけ知っとれば、説明は不要じゃな。他になにか気になっている事はないかの?」
気になっている事……。セル村はどうして人が少ないのか。どうして石壁がなく、木の柵が作りかけなのか。どうして、どうして――と考えれば考える程、疑問は湧いて出てくる。
が、それよりもこの世界に来て、いや転移した後から疑問に思っていた事を聞いてみる事にする。
「何で、僕はこの世界の言葉が分かるんですか?」
「なんじゃ、そんな事でいいのか? それならめっちゃ簡単じゃぞ? お主の脳をちょちょいとイジって、この世界の言語を分かるようにしたんじゃ。勿論、文字を読んだり書いたりすることも出来るぞ? それと、お主の日本での知識でも分かりやすいように無意識に翻訳される様にもしといたのじゃ。
というか、それが転移や転生させる時の決まりじゃからの。……おっと、休憩時間の終わりが来てしまったようじゃ。ほんじゃ、頑張って生き残るんじゃぞー」
神様は、一方的に言語が分かることについて説明した後に、なんとも緩い声援を送ってそこで、声が聞こえなくなった。
……ほ、……ホントにめちゃくちゃ簡単な方法だった……。いや、まぁ神様にしか出来ないだろうけど、結構簡単な説明だった。
聞いて損したと思ったが、直ぐにポジティブ思考に切り替える。
神様達にも決まりがあるという事が分かった。という事は禁忌に触れなければ、いざと言う時神様は助けてくれるかもしれないという可能性があるということだ。
まぁ、あくまで可能性なので、まずは自分で生き残るために強くならなければならない。
それに、もう《転生》の能力を使う事は出来ない。次に死んだら本当に終わり。神様達にとっても異常な能力《不幸体質》。
1年生き残れずに死んでしまったら、何かしら助けはあるのかもしれないが、もしかしたら使えない無能な僕は捨てられるかもしれない。他の人を転移させたら早い話だからね。
そしたら、僕のせいで無駄に転移に巻き込まれる人が出てきてしまう。
――そんな結末は絶対に嫌だ。例え僕に来世があったとしても、ずっと後悔する事になるだろう。
そんな不幸な未来を歩まないためにも、僕が強くなるしかない。
僕は絶対に呪いのスキル、《不幸体質》をも凌駕する強さを手に入れる! いや――手に入れて見せる!!!!
そう強く決意し、僕は次の日から血の滲む様な修行の日々送っていった。
ルビを振るのって結構大変だなと気付いた今日この頃……。




