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第7話

 盗難品を回収し、佐藤たちを衛兵に引き渡した後も、


「うーん。うーん。どうすればええんじゃ」


 木葉は悩み続けていた。


 秋代と小鳥遊のアイテム探しが終わるまでに決めればいい。


 そう思い、ここまで問題を先送りにしてきた木葉だっだが、2人のアイテム探しが終わった今、いよいよ現実と向き合わなくてはならなくなってしまったのだった。


「そんな深く考えることじゃないでしょうが」


 アムサロの食堂でシチューを平らげたところで、秋代が言った。


「どれにしたところで、一長一短あるんだから、いつもの調子でパパッと決めちゃいなさいよ」

「なに言うとるんじゃ。どのドラゴンにするかで、わしの運命は決まるんじゃぞ。そんな簡単に決められるか」

「何言ってんのよ。あんた、ドラゴンウォーリアーにするとき、火が出せるってのが決め手だったんでしょ。だったら、ファイアードラゴン1択じゃない。何を迷うことがあんのよ?」

「むう、そうなんじゃが……」


 木葉も、少し前までは九分九厘そのつもりでいた。それに、ファイアーバードを召喚武装した永遠長は、強くてカッコよかった。自分も、あんな風になりたい、と思う。だが、いざとなると、


「雷もええし、氷もええ。土と水、はイマイチじゃが、風もカッコええし、永遠長みたいな闇や光系も捨てがたい」


 次々と目移りしてしまうのだった。


「うおおおお! わしはどうすればええんじゃああ!」


 木葉は頭を抱えた。


「一生悩んでなさいな」


 秋代は冷めた目で突き放した。そのとき、


「あれ?」


 異世界ナビを見ていた小鳥遊が眉をしかめた。


「どうしたの? 小鳥遊さん?」

「私たちのポイントが、385になってる」

「え?」


 小鳥遊に言われ、秋代も自分の異世界ナビでポイント数を確認してみた。すると、確かに小鳥遊たちの獲得魔石数が385個になっていた。


「どういうこと?」

「見て。その代わり、佐藤君たちのポイント数がゼロになってる」

「え?」


 見ると、本当に佐藤チームのポイント数はゼロになっていた。


「これって……」

「うん。佐藤君たちのポイントが、私たちのものになってるってことだと思う」


 それは秋代たちも同じことで、秋代たちのチームのポイント数も同じだけ増えていた。


「それって、あいつら捕まえて役人に引き渡したから?」


 それしか考えられなかったが、


「でもあいつら、あのとき魔石なんて持ってなかったわよ?」


 当然のことながら、その在処を聞き出した覚えもなければ奪った覚えもなかった。


「きっと、アジトに置いてきてたんじゃないかな」

「で、そのまま捕まっちゃったから、自動的にあたしたちの物になったってこと?」

「たぶん……」

「まずいんじゃないの、それ?」


 他のチームを襲って、魔石を奪って勝ち上がろうとしている。他のチームにそう思われたら、それこそ危険分子として抹殺対象になりかねない。この極限状態に置かれた状況で誤解だと言っても、おそらく誰も聞く耳を持たないだろう。


「ならば、こちらも予定を変更するとしよう」


 永遠長が言った。


「変更するって、どうするわけ? まさかとは思うけど、こっちから出向いて皆殺しにするってんじゃないでしょうね? 殺られる前に殺るみたいな」


 秋代は眉をひそめた。永遠長なら本当に言いかねないから、シャレにならないのだった。


「誰が、そんなことを言った。そもそも、その気なら最初に殺っている」


 永遠長は秋代の心配を一蹴した。


「じゃあ、どうすんのよ?」

「とりあえず、おまえたちは今まで通り、ダンジョンでレベリングしていろ。そこそこレベルも上がったことだし、もう俺がフォローしなくとも、そうそう死にはしないだろう」

「あんたはどうすんのよ?」

「魔石を集める」

「魔石を?」


 永遠長の真意を掴みかねて、秋代と小鳥遊は顔を見合わせた。


「この状況で、他のチームが最下位チームを狙うとすれば、その大義名分は「このまま奴らをのさばらせておけば、優勝するために自分たちも襲われかねない」というものだろう」

「そうね」

「ならば、もし最下位チームが優勝できるだけの魔石を手に入れれば、他のチームがこのチームを襲う正当性は失われることになる」

「た、確かにそのとおりだけど、できるの? 今から他のチームより魔石を集めるなんて」


 秋代には、とても可能とは思えなかった。


「できるかどうか、やってみるまでだ。それに、できなければできないで、もし他のチームが襲ってくれば、返り討ちにすればいいだけの話だ。こちらには、そもそも非はないのだからな。それと木葉」


 永遠長は木葉を見た。


「秋代の言う通り、なんのドラゴンにするかなど思い悩むだけ時間の無駄だ。しょせんノーマルジョブは、通過点に過ぎないのだからな」

「どういう意味じゃ?」

「ジョブシステムの項目を読んで」


 ないに決まっているので、永遠長は話を先に進めた。


「ジョブには、ジョブシステムで一般公開されているジョブと、非公開のジョブが存在する」


 このうち公開されているジョブはノーマル、非公開のものはシークレットと呼ばれており、当然非公開のシークレットのほうが強力なジョブとなっているのだった。


「そしてシークレットジョブの情報は、石板として世界各地に点在し、強力なシークレットジョブほど秘境の奥地や難易度の高いダンジョンなど、常人が到達しがたい場所に隠されている可能性が高い」


 そこで、シークレットジョブを欲するプレイヤーたちは、まずノーマルジョブで地力をつけてから、高難度エリアへと向かうのだった。


「要するに、ノーマルジョブはシークレットジョブをゲットするための通過点に過ぎないということだ。特に、おまえが選んだドラゴンウォーリアーの場合、そのシークレットとして地水火風と光、5大ドラゴンの力を使えるシークレットが発見されている。そして、もしおまえがそのシークレットを手に入れた場合、自動的に5大ドラゴンの力が手に入ることになる。つまり、今あれこれ思い悩むだけ無駄ということだ」

「おお! そんなジョブがあるんか!?」


 木葉の目が、期待と希望に彩られる。


「で、そのジョブはどこに行けば手に入るんじゃ!?」

「だから、それは自分で見つけなきゃなんないって、今永遠長が言ったでしょうが」


 秋代が冷ややかにツッコむ。


「そういうことだ。それにシークレットとなるためには、石板を見つけ出した上で、千単位のアイテムを集める必要がある。どこにあるかもわからない石板と、千を超える要求アイテムを、後2週間で見つけるのは、ほぼ不可能だし非効率的だ」


 そんな暇があるのなら、ダンジョンで1つでもレベルを上げたほうが、よほど現実的というものだった。


「それでも、おまえがどうしてもシークレットを探したいと言うなら止めはしない。地の果てまでも、勝手に探しに行くがいい」


 そう話を打ち切ると、永遠長は席を立った。そして同じく食事を済ませた小鳥遊たちを元の野営地へと送り届けると、どこかへ転移していった。

 そしてダンジョンでのレベリングを続けること2時間。永遠長のことが気になった秋代たちは、魔石の獲得数を確認してみた。すると、


「え!?」


 永遠長、小鳥遊チームのポイント数は1000を超えていた。


「どうなってんの、これ?」


 秋代たちは戸惑いつつ、その後も何度かポイント数を確認した。すると、その都度1300、1700と増え続け、夕方には4000を超えていた。

 そして夕刻となって永遠長が戻ってきたところで、


「あんた、一体どうやったわけ?」


 秋代は溜まりに溜まっていた疑問をぶつけた。


「連結の力を使った。ただ、それだけの話だ」

「それだけで、わかんないから聞いてんのよ」

「ここに召喚されたとき、あの女が言っていただろう。この魔石は、元は1つの石を魔神が細かく分解したものだと」

「そうだっけ?」

「そうだ。そして元は1つであったものならば、その分解された魔石には、繋がりがあるということになる。そして繋がっているのであれば、俺の持っている魔石に連結の力を使えば、他の魔石の位置もわかるのではないか? と考えた。そして試してみたらできた。ただ、それだけの話だ」

「つまり不死鳥の羽を見つけたときと、同じ要領で見つけたってことだね」


 小鳥遊が永遠長の説明を補足し、


「ああ、そういうこと」


 秋代もようやく納得した。


「で、明日もこの調子で魔石集めを続けるわけ?」

「いや、今日で終わりだ」

「ふーん。まあ、いいけど。でも、どうせ集めるなら後5000個ぐらい集めて、どこも逆転できないぐらいブッチぎっちゃえばいいのに」


 そうすれば、ぶっちゃけた話、小鳥遊と永遠長の命は確実に保証されるのだった。


「それでは面白くない」


 永遠長は憮然と言った。


「面白くない?」

「そうだ。現在、元1位チームのポイント数は3500。2位が3300、3位が2600となっている。本来であれば、どのチームも、これからの努力しだいで挽回できない数ではない。だが、ここで突然4000を超えるチームが現れたことで、連中は選択を迫られることになる。このまま魔石を集め続けて1位を狙うか。それとも他のチームを襲って、魔石を奪うかを」


 ここで、もし永遠長が全チームのポイント数を加算しても勝てないほどのポイントを稼いでしまうと、他のチームが生き残るためには、永遠長のチームを襲う選択肢しかなくなってしまう。だが4000であれば、他のチームを狙ってもポイント数で上回ることができる。


「……それを試すために、わざと4000個にしたってわけ?」

「そういうことだ。果たして、この状況で連中がどう動くか。実に見ものだ」


 永遠長の声は、心なしか弾んでいた。


「……わかっちゃいたけど、あんたホント性格悪いわね」

「俺は、他の連中と同じように魔石を集めた。ただ、それだけの話だ。それに対して、誰がどう動くかは、そいつ自身の問題に過ぎない。俺が唆したわけでも命令したわけでもないことで、文句を言われる筋合いはない」


 永遠長は悪びれることなく言い捨てた。


「そんなことよりも、なんのドラゴンにするか決めたのか?」


 永遠長は木葉を見た。


「おう。ファイアードラゴンにな。どうせ後で全部使えるようになるんじゃろ? なら、いの1番は、やっぱファイアードラゴンじゃからのう」

「そうか」


 永遠長は腰袋に手を入れると、色違いの5枚の鱗を取り出した。


「あんた、全種類買ってきたわけ?」

「これ以上、無駄な時間を使っている暇はないからな」


 木葉が、まだグズグズしているようなら、くじ引きで選ばせようと思っていたのだった。

 そして夕食が済んだところで、小鳥遊たち3人はクラスアップ作業に取り掛かった。


「で、実際のところ、クラスアップってどうするわけ?」


 秋代は不死鳥の羽をいじりながら、小首を傾げた。


「異世界ナビの「ジョブシステム」のページに、クラスアップの項目があっただろう。そこをタップすると、次に基本となるジョブが表示されるから「魔法戦士」を選ぶんだ。そうすると、次に最上級職となるラストジョブが表示されるから、そこをタップする」

「これね」


 秋代たちは、永遠長の指示通りに、それぞれ秋代は「フェニックスウォーリアー」小鳥遊は「グランドウォーリアー」木葉は「ファイアードラゴンウォーリアー」を押した。すると画面に、


「クラスアップに必要な素材をスキャンしてください」


 と表示された。


「したら、スキャンて出たんだけど?」

「そうしたら、リモコンの要領で、ナビの先端をアイテムに向けて、表示されているスキャンボタンを押せ」

「こう?」


 秋代たちは、スキャンボタンを押した。すると、ナビの先端から照射された光が、3人の持つアイテムをスキャンし始めた。そして本物であると確認されると、アイテムは消失してしまった。


「そうしたら、最後にクラスアップを開始するかを聞いてくるから、イエスのボタンを押せ。それでクラスアップは完了する」

「これね」


 3人は「イエス」をタップした。すると、3人の体から目映い光が放たれた。そして数秒して光が消えた後、異世界ナビの画面には「クラスアップは完了しました」と表示されていた。


「これで終わり? 別に、どこも変わった感じないんだけど?」


 秋代は、自分の体を観察したが、これといった変化は見られなかった。


「それは、今までのセカンドやサードジョブでも同じだっただろう」

「そういえばそうね」

「だが、確実にクラスアップしている。疑うなら、ナビでステータス画面を見てみろ」

「どれどれ……」


 秋代たちは言われた通り、自分のステータスを確認してみた。すると、確かにジョブが、秋代は「フェニックスウォーリアー」木葉は「ファイアードラゴンウォーリアー」小鳥遊は「アストラルウォーリアー」に変更されていた。そして、それに伴い、秋代には「復活」と「自己再生」木葉には「飛行能力」と「火炎放射能力」小鳥遊には「重力操作」の特殊能力が追記されていた。

 もっとも、何より木葉の目を引いたのは、


「おお!」


 クラスアップしたことで必殺技とも言える「ドラゴンバスター」というジョブスキルが増えていたことだった。そして、それは後の2人も同様で、小鳥遊には重力弾をぶつける「グラビティキャノン」が。秋代には爆風相手を吹き飛ばす「オメガバースト」というジョブスキルが追加されていた。


「よっしゃああ! 必殺技ゲットじゃああ!」


 木葉が喜びに打ち震えた。永遠長のカオスブレイドを見てから、自分もあんな必殺技が欲しいと、ずっと思っていたのだった。


「よっしゃああ! さっそく試し撃ちじゃあ!」


 木葉は秋代が止める間もなく、


「ドラゴンバスター!」


 その場で右手を突き出した。しかし、放たれたのは拳大の赤熱弾だった。


「なんじゃ? これが必殺技なんか?」


 木葉は失望に肩を落とした。


「レベル1はそんなものだ。強力な技が使いたいなら、さっさとレベルアップするんだな」


 永遠長は淡々と言った。


「よっしゃああ! そういうことなら、今からもう1度レベリングじゃあ!」


 ダンジョンへと駆け出す木葉を、


「待てい!」


 秋代が後ろ襟を掴んで引き止める。


「なにするんじゃ、春夏!?」

「それは、こっちのセリフよ。こんなところで、いきなり大技出そうとするわ。1人でダンジョンに突っ込もうとするわ。もうちょっと、後先考えて行動しろってのよ」


 秋代は木葉に説教した。無駄だと、十二分に承知した上で。


「何言うとるんじゃ!? せっかく必殺技が使えるようになったんじゃぞ!? 早く永遠長みたいに、思い切りぶっ放せるようになりたいじゃろうが!」

「あんただけよ」


 秋代は冷めた目でツッコんだ。


「とにかく、あんたは体力バカだから大丈夫だろうけど、あたしも小鳥遊さんも今日は疲れてんの」

「じゃあ、おまえらだけ休んどればええじゃろ」

「それで、もしあんたに万が一のことがあったらどうすんのよ。あんたのバカのトバッチリ食らって死ぬなんて、まっぴらごめんだっての」

「むう」

「わかったら、今日はもう寝なさいな」

「しかしじゃな」

「これ以上ゴチャゴチャ言うと、石化するわよ」


 秋代から本気の意思を感じ取った木葉は、その後おとなしく眠りについた。


 もっとも、これで全ての問題が解決したわけではなく、小鳥遊の懸念通り、ポイント数の変動をきっかけに、チーム戦はその様相を変化させることになる。


 最初に動いたのは、4位チームだった。


 現在4位チームのポイント数は、1620と、3位に1000ポイント以上の差を開けられていた。

 後1週間で、この差を覆すことは、実質不可能に近かった。しかし、だからと言って、このままムザムザ死を待つわけにもいかない。


 最下位チームと7位チームのポイント数が変動したのは、そんなときだった。


 魔石を集めることだけが、生き残る方法ではない。


 そのことには、どのチームも気づいていた。気づいた上で、人の道に反する行為として、どのチームもギリギリのところで踏み止まっていたのだった。

 だが、その暗黙の了解を最下位チームは破った。その事実は、4位チームに、自分たちの行動を正当化させるに、十分過ぎる大義名分を与えることになったのだった。


 そして、4位チームが真っ先に取った行動は、5位チームとのコンタクトだった。


「オレたちで合同チームを作って、あいつらを潰す?」


 4位チームの島から出された提案に、5位チームのメンバーは顔を見合わせた。


「ああ、4位から6位までのチームが手を組んで、7位チームを潰すんだ」


 それが島の作戦だった。


「先に手を出したのは、あいつらなんだ。だったら、やり返されても文句は言えねえはずだろ?」

「でもよ」

「だからってなあ」


 5位チームの桑田と八尾は、気乗りしない顔を見合わせた。


「じゃあ、このまま、あいつらのこと、ほっとくってのか? あいつら、もしかしたら今日にでも、おまえらのことも狙って来るかもしれねえんだぞ? 次は6位。その次は5位。そして4位。そうやって1チームずつ潰していけば、ポイントなんて稼がないでも、生き残れるんだからな」


 島の脅しに、


「まさか、いくらなんでも、そこまで……」


 5位チームは眉をひそめた。しかし、誰も完全には島の憶測を否定できなかった。


「このまま黙って殺られるなんて、冗談じゃねえ!」


 島は吐き捨てた。


「だったら殺られる前に殺ってやる! それがオレたちの結論だ」


 島は拳を握りしめた。


「だが、オレたちだけじゃ勝てる保証がない。あいつらだって、自信があるから上位潰しを始めたんだろうからな」


 島は5位チームを見回した。


「そこでオレたちで手を組んで、あいつらを潰そうって、これはそういう作戦なんだよ。たとえ、あいつらがどんなに強くなってようが、こっちは15人。いっせいにかかれば、負けるわけがねえ」

「そりゃあ、そうかもしれねえけど……」


 5位チームは、なお消極的だった。いくら今はライバルとはいえ、クラスメイトを手に掛けるのは、やはり抵抗があった。


「やっぱ、いくらなんでも人殺しはなあ」

「何、言ってやがる。このままじゃ、どうせ1位以外は、全員殺されちまうんだぞ。今さら、そんなこと気にしても、しょうがねえだろ。殺るか殺られるか。オレたちに残された道は、その2つに1つしかねえんだよ!」

「そ、そりゃ、そうかもしれねえけどよ……」


 煮えきらない5位チームの態度に、島は舌打ちした。


「殺すのが気に入らねえってんなら、別に殺す必要まではねえよ。要は、あいつらにヤキ入れて、タイムリミットまで、どっかに閉じ込めとけばいいんだ。あいつらが、2度とオレたちに手を出せないようにな」

「あ、ああ、それなら別にやってもいいかも」


 4位チームから前向きな考えを引き出したところで、島は本題を切り出した。


「そして、ここからが肝心だが、あいつらを片付けた後、オレたちで狙うんだ」

「狙うって、何をだよ?」

「決まってんだろ。上位3チームをだよ。要するに、最下位チームがやったことを、今度はオレたち3チームがやるんだよ。そして上位3チームを潰した後で、改めてオレたち3チームで、どこが生き残るか再勝負するんだ」


 島の提案に、4位チームの面々は鼻白んだ。


「ま、待てよ。それだと結局、どっか1チームしか生き残れねえじゃねえか」

「当たり前だろ。これは最初から、そういう勝負なんだからよ」


 島は顔色ひとつ変えずに言い切った。


「そして上位3チームと絶望的に引き離されてるオレたちは、このままじゃ絶対に生き残れねえ」


 ここからの逆転は、どう考えても不可能なのだ。だったら、


「上位3チームを潰して、そのうえでオレたちの中で生き残るチームを決める。そうすれば、本当なら全滅するはずの3チームのうち、1チームは確実に生き残ることができるんだ。全員の死亡が確定してる今の状況より、そっちのほうが、よっぽどマシだと思わねえか?」


 島の、その甘い誘惑が決め手となり、


「わかった。その提案、乗るよ」


 5位チームは島の提案を受け入れた。そして5位チームとの合意を取り付けた島は、同様に6位チームの了承を得ることにも成功する。


 こうして4位チームの主導によって、合同3チームによる元最下位の掃討作戦が開始されることになったのだった。

 



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