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第47話

 永遠長による、ブレバン邸襲来から5日。

 土門たちは王都での医療活動を続けていた。


 あの日以後、心配されたブレバンの残党やアンセム王からの報復もなく、医師ギルドも表面上は沈黙を保っていた。

 風の噂によると、あの事件の後、白銀の戦士が街中の施療院に現れ、ブレバンの手下の引き渡しを要求したらしかった。そして、ある施療院で目的の人物を見つけた白銀の戦士は、その男を連れて姿を消したのだという。


 そして、この出来事は医師ギルドのメンバーを戦慄させることになった。


 土門の排除を依頼したブレバンは行方不明となり、土門を欲していた国王は何者かの襲撃を受けた。のみならず、一連の事件の犯人と思われる白銀の戦士は、ブレバンの残党を執拗に追いかけ、その残党は現在も行方不明のままとなっている。


 永遠長自身には、まったくそんな気はなかったのだが、彼の一連の行動は医師ギルドのメンバーに、


「もし、また土門たちに手を出せば、次はおまえたちが消えることになる」


 という、強烈な警告を与えることになったのだった。


 他人の命は、いくらでも切り捨てられる医師たちも、かかっているのが自分の命となれば話が違ってくる。目先の金のために自分の命を賭けられる医師など、医師ギルドにはいなかったのだった。


 また、本当に永遠長の警告を受けたアンセム王も、あれ以後土門たちに対しては不干渉を貫いていた。というよりも、あの事件の直後にアーリア帝国が宣戦布告してきたため、土門にかまっている場合ではなくなった、というのが実際のところだった。


 そして侵攻してきたアーリア帝国に応戦すべく、アンセム王が2万の兵を率いて王都を出陣して今日で3日。


「やっぱり、ボクたちもついて行ったほうが、よかったのかな」


 禿と夕食を取りながら、土門は少し後悔していた。


 土門自身の考えは、今も変わってはいない。しかし今回の戦争は、侵攻してきたアーリア帝国を迎え撃つための防衛戦。自国を守るための戦いなら、協力すべきだったんじゃないだろうか。

 アンセム王を見送った日から、ずっとその思いに囚われていたのだった。


「何言ってるのよ。なんで私たちが、あんな奴らのために指一本だろうと動かしてやんなきゃなんないのよ。そんな義理が、どこにあるっていうの?」


 禿は情け容赦なく一蹴した。


 そもそも禿は永遠長の助言通り、早々に王都からトンズラするつもりでいたのだ。それを、土門が「自分たちを頼ってくれる患者さんたちを見捨てて、自分だけ逃げるわけにはいかない」と言い張るので、仕方なく付き合っているのだった。


「もしラザレーム軍が負けたら、この街から逃げればいいだけでしょ。私たちが、この国のために命懸けなきゃなんない理由なんて、どこにもないんだもの」

「ま、まあ、そうなんだけど……」

「そうよ。今の私たちなら、どこの国でも生きていけるし、下手に肩入れしてアーリア帝国に敵認定されちゃったら、それこそ普通の生活さえままならなくなっちゃうもの」


 禿の言っていることは正論であり、土門は返す言葉がなかった。


 しかし国王軍の敗北は、イコールこの王都に住む人々がアーリア帝国の支配下に置かれるということだった。

 根無し草の自分たちと違い、この国に住む人間は、おいそれと移住することはできない。ほんの1ヵ月足らずとはいえ、この街で暮らし、心を通わせた人たちが不幸になるところを、土門は見たくなかったのだった。


 しかし、そんな土門の思いも虚しく、アムサロ王率いるラザレーム王国軍はアーリア帝国に大敗を喫することになる。

 そして、時を同じくして決行されたアーリア帝国による王都襲撃によって、土門たちの運命は再び大きく動き出すことになるのだった。



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