第19話
大会初日「ロ-ド・リベリオン」の面々は、全員1回戦を勝ち上がることができた。
これはクジ運に恵まれたこともあったが、秋代の勝利に関しては、永遠長のアドバイスが大きかった。
「あたしの闘い方の、どこが悪いってのよ?」
魔神を倒すための訓練中、永遠長にダメ出しを食らった秋代は食ってかかった。
「おまえはクオリティのことを意識し過ぎている。だから、ちょっと窮地に陥ると、安易に付与に頼ろうとする。が、何を付与するか、すぐには思いつかないため動きが鈍る。まさに悪循環だ」
永遠長に図星を突かれ、秋代は言葉に詰まった。
「なまじ、なんでもできるせいで、何をしていいかわからなくなっているんだろうが、そんな考えで闘って勝てるわけがない」
「じゃあ、どうしろってのよ?」
「そんなことは自分で考えろ」
永遠長は容赦なく突き放した。
「ただ、おまえが1番に考えているのは、魔神を倒す倒さない以前に、木葉と一緒に地球に帰ることだろう。ならば、おまえのすべきことは状況を冷静に分析し、木葉が無茶をしないように最適なサポ-トをすることだ。今この状況で、木葉が実力を出しきるにはどうすればいいか。それを考えれば、自ずとすべきことは見えてくるはずだ」
「…………」
「とはいえ、これから先1対1で戦う場面が来ないとも限らない。それ用と言うのなら、自分の理想とする闘い方を確立することだ。具体的には必勝パタ-ンだな。そしてそれができたら、さらにそのパタ-ンを増やしていく」
「……必勝パタ-ン。要するに得意技ってことね」
「そういうことだ。今のおまえは、なんでもかんでもしようとし過ぎている。元々魔法戦士になったのも、どんな状況でも応用が利くからだと言っていたが、それは剣や魔法が一定以上のレベルに達していればの話。今のおまえは、ただの器用貧乏でしかない」
「ぐ……」
「クオリティを本当に使いこなしたいなら、まず戦闘中に使う能力を限定しろ。最低限必要なものとしては、防御用の壁。回避用の飛翔及び転移。攻撃用の炎や風、雷といった精霊力の付与だ。まずこの3つを、いつでも出せるように反復練習して頭と体に叩き込め」
そう永遠長にアドバイスされた秋代は、付与する能力を防御用の「結界」移動用の「転移」攻撃用の「火炎」に限定して訓練を続けた。結果、その努力が実を結び、秋代は1回戦を勝ち上がることができたのだった。
そして迎えた2回戦。秋代にとって、この1戦は決勝よりも重要な意味を持つカードであった。
というのも、対戦相手が「ノブレス・オブリージュ」の1人、宝生だったからである。
ここで負けたら、あのクソ忌々しい尾瀬に、また何を言われるかわかったものではない。いや、それ以前に尾瀬の息がかかった者に負けるということ自体が、もはや秋代にはありえなかったのだった。
絶対勝つ!
必勝の思いを胸に、秋代は2回戦の舞台に臨んだ。そして、それは相手も同じだった。ただ、試合とはいえ、女に手を上げるのは宝生の本意ではなかった。
「降参するなら今のうちだ。女を痛めつけるのは、俺の本意ではない」
それは宝生の心からの忠告だったが、
「お心遣いどうも。と言いたいところだけど、そーゆーのを小さな親切大きなお世話ってーのよ」
秋代は一蹴した。
「そもそもが、腕試しに来てんのに、棄権したら来た意味がないでしょうが」
秋代はフンと鼻を鳴らした。
「てーか、そーゆーセリフはね、マジで命かけた戦いで言うべきセリフよ。て言っても、どーせ遊びで異世界に来てるあんたたちは、命懸けの戦いなんてしたことないんでしょうけどね」
「……そうか。ならば、せめて1撃で終わりにしてやる」
「やってみれば? できるもんならね」
秋代と宝生が睨み合うなか、
「始め!」
審判が試合開始を告げた。
「フン!」
宝生の気合いとともに、彼の全身がダイヤモンド化した。
「ほんと、戦士系はそればっかね」
最硬の強度を誇るダイヤモンドソルジャーは、戦士系の中ではジャイアントソルジャーと並ぶ人気ジョブであり、この大会では8割がダイヤモンドソルジャーで占められていた。
「オオ!」
ダイヤモンド化を完成させた宝生は、最硬の拳で秋代へと殴りかかった。その1撃を、
「転移付与」
秋代は宝生の背後に転移して回避すると、
「火炎付与」
宝生の背中に火をつけた。
「な!?」
ダイヤモンド唯一の弱点をつかれた宝生は、
「うおおおおお!」
燃え上がる炎を消そうと、地面を転げ回った。そして、なんとか鎮火には成功したものの、そのときには満身創痍。もはや戦闘が続けられる状態ではなかった。
「勝者、アキシロ」
審判が秋代の勝利を告げ、
「ザマーミロっての!」
秋代はセコンドとして観戦していた尾瀬に中指を突きつけると、
「あー、スッキリした」
晴れ晴れとした顔で退場した。そして、その後も2回戦は続いたが、小鳥遊、土門、禿の3名は、ともにジャイアントソルジャーに敗れてしまった。3人のクオリティ自体は、十分ジャイアントソルジャーと渡り合えるものであったのだが、ジャイアントソルジャーを撃退するにはレベルが不足していたのだった。もっとも木葉だけは、
「ふぬりゃ!」
自身のクオリティを存分に発揮してジャイアントソルジャーを殴り倒し、
「カオスブレイド!」
永遠長もジャイアントソルジャーを斬り伏せ、危なげなく勝ち上がっていた。
そして始まった3回戦では、尾瀬一派に勝利したことで気が抜けた秋代は、
超能力を駆使するサイコウォーリアーに敗北。残る木葉と永遠長は、順当に3回戦も勝ち上がった。
そして続く4回戦。木葉の対戦相手は尾瀬1派の最後の1人、小山内だった。秋代にとっては絶対に負けられない天下分け目の決戦であり、それは小山内も同じだった。強豪ギルドとして名を馳せる「ノブレス・オブリージュ」が、たとえ新人戦とは言え、同じギルド、それもポッと出のギルドに3連敗を喫しては面目丸潰れ。尾瀬と並び称される永遠長には勝てないとしても、せめて同じ新人である木葉にぐらい勝たなければ、帰って仲間に合わせる顔がないのだった。そして、その想いは
「頼むぞ、小山内」
「このまま3たて食らったら、高峰パイセンやフカミンパイセンの特訓が待ってるっスから」
宝生と赤木も同じだった。
「任せておきたまえ。そもそも君たちは戦法が直線的過ぎたのだよ。実力未知数の相手に真っ向から挑むなど、倒してくださいと言っているようなものじゃないか」
敵を知り己を知らば百戦危うからず、は兵法の基本。それを外したことが赤木たちの敗北を招いたのだった。そして次に対戦する木葉のことを、小山内はコレまでの戦いから分析していた。
木葉は完全なパワータイプ。攻撃力は高いが、防御は手薄で隙も多い。
そして、このタイプの攻略法として、もっとも有効なのは、まずは相手の攻撃をいなして相手の攻撃疲れを待ち、相手の動きが鈍ってきたところで隙を突いて反転攻勢に転ずることだった。
「人は無限には動けないのだからね」
小山内はそう言い残すと、木葉との決戦の舞台へと向かった。これに対して木葉は、
そう言うたら、こいつのことで春夏がなんか言うちょったけど、なんじゃったかの? まあええ、戦りあったら、わかることじゃ。
相変わらず何も考えていなかった。そして、
「始め!」
審判の合図とともに、
「ぬおりゃ!」
いつものように小山内へと突撃をかけた。
「ふぬりゃ!」
木葉は小山内へと剣を振り払い、その一撃を小山内は盾で防ぎにかかる。が、木葉の攻撃力は小山内の想定以上であり、
「な!?」
小山内は盾ごと吹き飛ばされてしまった。
「く……」
それでも、なんとか体勢を維持した小山内に、
「おりゃりゃりゃりゃりゃりゃあ!」
木葉が容赦なく追撃をかける。だが、これは小山内の想定内だった。
人は無限には動けない。攻撃が激しければ激しいほど、スタミナも失っていく。後は、木葉の動きが鈍るのを待つだけ。
小山内はそう考え、木葉の猛攻を耐え忍んでいた。しかし、
「りゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃ!」
いつまで待っても木葉の攻撃が止むことがなく、剣撃が衰える気配もなかった。むしろ、盾を持つ小山内の手のほうが痺れ、まともに盾を握れなくなってきていた。
この脳筋が。
小山内は吐き捨てたが、それで事態が変わるわけでもない。
このままでは負ける。
小山内がそう思った矢先、
「むお!」
木葉が大きく剣を振り上げた。
今だ!
木葉の攻撃が大振りになったところで、
「もらった!」
小山内は木葉の胴へと剣を突き出した。しかし木葉は、
「ふぬりゃ!」
無理矢理胴体をねじって小山内の剣先をかわすと、
「ぬありゃ!」
そのまま小山内の頭へと剣を振り下ろした。
「が!」
仮面を被っていたため致命傷にこそならなかったものの、頭部に激しい衝撃を受け、なおかつ地面に叩きつけられた小山内は脳震盪を起こし、そのまな意識を失ってしまった。
「勝者、キバ」
動かない小山内を見て、審判が木葉の勝利を告げる。
「いよっしゃああ!」
木葉の勝利に秋代が右腕を振り上げ、
「ザマアみくされ! ドクソチビ!」
再び尾瀬を口撃する。その無礼極まる態度に、
「あの女……」
轟n怒りは爆発しかけたが、
「放っておきなさい」
尾瀬は軽く受け流すと、小山内を連れて試合場を後にした。
そして小山内に勝利した木葉は、その後も勝ち進み、同じく順当に勝ち上がってきた永遠長と準決勝で相対することになった。
「楽しみじゃ。おんしとは、1度思いっきり戦り合ってみたいと思っとったんじゃ」
木葉は剣を構えた。それに対し、永遠長は剣先を下げ、ほぼ棒立ちのままだった。
「始め!」
審判の合図とともに、
「行くぞ、永遠!」
木葉は永遠長に突っ込んだ。
「行け-! 正宗! 永遠長の奴をブッ飛ばせ-!」
秋代の声援が飛ぶなか、
「とありゃあ!」
木葉は永遠長めがけ、突きを叩き込んだ。が、永遠長はその突きを左にかわすと、そのまま木葉の腹に右の掌底を叩き込んだ。
「なんの!」
木葉はその衝撃に耐えきると、永遠長の胴へと剣を薙ぎ払った。
その剣閃を永遠長がバックステップでかわす。
「逃がさんぞ、永遠!」
木葉は突きの連打で永遠長を追撃する。
傍目には、圧倒的に木葉有利の展開だった。しかし2人を知る秋代たちの目には、まったく逆に映っていた。
「あのバカ。あれだけ言われたのに」
秋代は手で顔を覆った。その直後、
「あ……」
攻撃に集中しすぎた木葉は、永遠長に足下を蹴り払われてしまった。そして倒れた木葉の鼻先に、永遠長の剣が突きつけられる。
「それまで!」
審判が永遠長の勝利を宣告し、大会2日目は終了したのだった。
「あんたねえ、ちょっとは学習しなさいよ。何回同じ負け方したら気が済むのよ」
試合後、秋代の木葉への小言が始まった。これも、いつものことだった。そして、そんな秋代の説教に木葉が聞く耳を持たないことも。
「惜しかったのう。もう少しスピ-ドがあれば、永遠がかわす前にわしの攻撃が当たっちょったのにのう」
それでも木葉は、この試合で確かな手応えを掴んでいた。
「この調子で行けば、おんしに勝つ日もそう遠くないぜよ。覚悟しとくんじゃな、永遠!」
木葉は闘志剥き出しで、永遠長に宣言した。
短所を改善するより長所を伸ばす。
それが木葉の上達法なのだった。
「たく」
秋代は頭をかいた。
そして大会最終日。
永遠長は準決勝と決勝を、相手を寄せ付けない強さで圧倒し、見事に優勝を果たしたのだった。
「ま、腕試しとしては、まずまずの結果を出せたことだし、結果オ-ライってことで、よしとしときましょ」
大会での目的も達成し、秋代たちが会場を引き上げようとしたとき、
「優勝おめでとうございます、ボッチ-トさん」
尾瀬が再び顔を見せた。
「なに、またあんた? ほんと、どこにでもわいて出るわね」
秋代は露骨に眉をひそめた。
「この無礼者が」
「おやめなさい、轟さん。今日は祝辞を述べに来たのですから、多少の戯言は聞き流してあげましょう」
「は、明理様が、そうおっしゃるのであれば」
轟は引き下がった。
「それに、そんな口も、もうすぐ利けなくなるでしょうし」
尾瀬は意味ありげに微笑した。
「どういう意味よ?」
「あら? やはりまだご存じないようですわね。ワ-ルドナイツのこと」
「ワ-ルドナイツ?」
「ええ、彼らが、あなたがたを粛正するために動いているという噂ですわ」
「あいつらが? やっぱ、この前のこと根に持ってやがったのね」
秋代は舌打ちした。
「それが、いつのことかは存じませんが、あの騎士団の団長は、そんな個人レベルのいさかいで兵を動かすような小人ではありませんわ」
「違うっての? じゃあ、なんでよ? あたしら、そんな会ったこともない連中に粛正されるようなことした覚えないわよ?」
「覚えがない? まあ、惚けて。知られていないとでも思っておりますの? ディサースでの、あなたがたの悪行を」
「悪行?」
「なんでも商人の屋敷に夜襲をかけて、屋敷を乗っ取ったばかりか、女性を手に掛けたそうじゃありませんの」
「女性? て、もしかして、あの魔女のこと? それだったら、あれは、そもそも」
「他にも、モスで罪のない現地人を大勢傷つけ、あまつさえ命まで奪ったとか」
「は?」
そんな話は秋代も初耳だった。
「今、アーリア帝国が他国に攻め込まれているのも、それが原因という話ですし」
「え?」
尾瀬の話に、土門と禿の顔色が変わる。
「そ、それは本当ですか?」
土門は尾瀬に詰め寄った。
「ええ、今頃、隣国のフーセーと戦の真っ最中のはずですわ」
「……ハリクさん」
土門と禿の脳裏に、モスで知り合った人物の顔が浮かんだ。その一方で、
「あんた、そんなことしたの?」
秋代は永遠長に真偽の程を確かめていた。実際、この男ならそのくらいのことはやりかねなかった。
「そんな真似をした覚えはない」
「あなたの仕業ではないと、そうおっしゃるの?」
尾瀬は永遠長に問い直した。
「だから、そう言っている。俺の言うことが信用できないなら、最初から聞くな」
「確かに、その通りですわね。失言でした。撤回いたしますわ」
尾瀬は頭を下げた。
「どうやら、あなたがたにも色々と事情がおありのようですけれど、わたくしに言えることは、ただ1つ。あなたを、わたくしのギルドに参加させなくて正解だったということですわ。あなたのようなトラブルメ-カ-をメンバ-に入れていたら、こちらまでとばっちりを受けるところでしたもの」
尾瀬は含み笑った。
「……あんた、さてはそれが言いたくて、わざわざ来たのね。こいつにフラレたこと、ずっと根に持って。ホント、背丈が小さきゃ器も小さいわね」
秋代は鼻で笑い飛ばした。
「貴様……」
轟は思わず剣に手をかけた。
「はいはい、気が済んだら、さっさと帰んなさい。こっちは、いつまでもお子ちゃまの相手してるほど暇じゃないって-の」
秋代は「しっしっ」と、尾瀬たちを右手で追い払った。
「言われなくとも、そのつもりですわ。これ以上ここにいて、ワ-ルドナイツの方に関係者扱いされても迷惑ですし」
尾瀬は最後に永遠長を見た。
「せいぜい、気をつけることですわ。あなたが、どんな規約違反を侵そうと、わたくしには関わりのないこと。ですが世の中には、そう思わない者も確実に存在するのですから。それが本当の正義感からくるものか、ただストレスを解消したいだけの偽善かは存じませんが。では、ごきげんよう」
尾瀬は、うやうやしく一礼すると、永遠長たちの前から去っていった。
「2度と来るなっての」
秋代は尾瀬の背中へと悪態を叩き込んだ。
「けど、どういうことかしら? てか、なんで魔女殺しで文句言われなくちゃなんないのよ? 被害者よ、あたしたち」
秋代には、さっぱり訳がわからなかった。
「もしかして、あの人の言ってた「罪のない一般人」て、あの大迷宮に来てたアーリア兵のことなんじゃ」
土門が、つぶやいた。
「なに? 心当たりがあるの?」
「いえ、ただ永遠長さんが皇帝と戦ったとき、皇帝は手勢を引き連れて来てたんです。それを永遠長さんが叩き潰して、それで大混乱になって。だから、もしあの人が言っているのが、あのときのことだとしたら、理由はともかく、受け取りようによっては永遠長さんが現地人を襲ったと捉えられないこともないんじゃないかと」
実際のところは、完全に正当防衛なのだが、悪意のある者にとっては、そんなことはどうでもいいことなのだった。
「ああ、あれか。確かに、それなら可能性はあるな」
永遠長は、あっさり認めた。
「それなら心当たり大ありなんじゃない」
秋代は、あきれ顔でツッコんだ。
「あいつが「罪のない現地人」というからだ。元々先に仕掛けてきたのは、あいつらの方なのだからな。俺は降り掛かった火の粉を払い除けたに過ぎない」
永遠長は涼しい顔で言い切り、
「あんたねえ」
秋代は眉間を押さえた。
「あの、それじゃボクたちは、これで失礼します。モスのことが、ちょっと気になるので」
先ほど尾瀬の話を聞いてから、土門はアーリア帝国と隣国の戦が、ずっと気になっていたのだった。
「それに、もしあの人の言ってたことが大迷宮でのことなら、気になりますから少し調べてみたいんです」
あの女神の大迷宮の1件からは、すでに2ヶ月近くが経っている。それが今になって事実が歪曲されたうえで騒がれだしたことに、土門は何かしらの裏を感じたのだった。
もしかしたら、あの男が裏で糸を引いているのかもしれない。
そう思うと、じっとしていられなかった。
「そういうことなら、あたしたちも」
「いえ、もし本当にモスが隣国と戦争になっているんだとしたら、無関係のあなた方を巻き込むわけにはいきませんから。それに下手をしたら、もっと大惨事になる可能性もありますし」
土門は永遠長を一瞥した。下手に永遠長が同行して、誰かが永遠長を刺激したら、さらなる大惨事が生まれかねないのだった。
「……そうね。そういうことなら、あなたたちに任せるわ」
土門の態度から、秋代もそのことを察した。確かに、この状況で永遠長をモスに行かせたら、どんな事態を引き起こすか。
秋代には目に見えるようだった。
「それじゃ、ボクたち行きます」
土門と禿は異世界ナビを取り出すと、モスへと転移していった。
「それじゃ、モスの件は土門君たちに任せるとして、問題はワ-ルドナイツのほうね」
秋代は腕組みした。
「1番確実なのは、ほとぼりが冷めるまで異世界に行かないことだけど、自粛しろと言ったところで、絶対言うこときかない奴らが、ここにいるしね」
秋代は永遠長と木葉を交互に見やった。
「ま、とりあえず今まで通りにして様子を見るしかないわね」
その秋代の結論に誰も異論はなく、とりあえずその日は解散となった。
しかしワ-ルドナイツによる正義の執行は、このときすでに秒読み段階に入っていたのだった。
 




