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第136話

 天国が腕の中から消え去ると、永遠長は立ち上がった。すると、


「流輝君」


 背後から声がした。そして振り返った永遠長の目に映ったのは、たった今消滅したはずの天国の姿だった。


「これで、タイムパラドックスは回避したってことで、いいのよね?」


 天国は心配そうに言った。


「理論上は、そのはずだ」


 永遠長の答えを聞き、


「よかった」


 天国は胸をなでおろした。


「もし私のせいでビッグバンが起こったらって、ずっと心配だったから」


 それを回避するために、天国はこの2年、永遠長に会いたい気持ちを押し殺して来たのだった。


 永遠長と再会した今日このとき、天国はモスで消滅した。


 だが天国が消える寸前、永遠長は最後の賭けに出ていたのだった。


 すなわち「回帰」によるタイムループを。


 そして永遠長の狙い通り、2年分の記憶が上書きされて過去に戻った天国は、無事交通事故を回避することができたのだった。


 しかし、そのままではタイムパラドックスが発生してしまう。そこで永遠長は天国を過去に送り返す際、それを回避する方法を「共感」を使って瞬時に伝えていたのだった。前の歴史通りに自分との関わりを断ったうえで、病院で意識を取り戻して以後のことを、殺人を除いて忠実に実行するように、と。


 そして永遠長の指示を実行した天国は、今日晴れて永遠長の前に現れたのだった。


「でも、それもおしまい。というわけで、今日から流輝君の家に泊めてもらうから、よろしく」


 天国は爽やかに微笑み、


「なに?」


 永遠長は重々しい渋面を作った。


「そんな真似して、親が黙っているわけなかろう」


 高1の女子が男と同棲することを許す。そんな親など、いるはずがなかった。


「それなら大丈夫。お父さんの了解は、ちゃんと取ったから」


 天国は、あっけらかんと答えた。


「話せば長くなるんだけど、あの後お父さん再婚してね。その再婚相手に私と同年代の男の子がいたんだけど、その子が私に手を出そうとしたの。で、返り討ちにしたら、お義母さんがキレちゃって。ウチの子が、そんなことするはずないって。もっとも、その後一部始終を録画した動画を見せたら、黙っちゃったけれど」


 天国はペロリと舌を出した。


「で、被害者である私が、今回の件を不問にしてあげる代わりに東京に行くって言ったら、二つ返事でOK。とゆーか、むしろ追い出された、みたいな? なので、私は誰はばかることなく、流輝君のところに嫁ぎに来たのでありました。めでたし、めでたし」


 天国は、これまでの経緯をそう締めくくった後、


「あ、それと朝霞さんのお義父さんのことだけど」


 朝霞の義父に自分なりの対処をしたことを説明した。


 永遠長が朝霞の義父を殺したのは、あの地下駐車場で娘に手を出したから。そこで天国は、あの駐車場で娘に手を出さないように「共感」のクオリティで義父の精神を操作したのだった。


 そして、あの場での義父の殺害を阻止した天国は、その後もう1度「共感」を使って、朝霞の義父を廃車工場へと誘導。そこで車ごとプレスする寸前まで追い込むことで妻と離婚し、2度と義娘に手を出さないことを約束させたのだった。そして永遠長を尋問した多賀という刑事にも、同じ方法で2度と冤罪を生むような真似はしないと約束させた。


「ただ沢渡って娘だけは、歴史の根幹に関わることだから、極秘裏にってわけにはいかなかったけど」


 そこで天国は、沢渡の自殺方法を飛び降り自殺から、首吊り自殺に変更。その首吊り自殺も、首を吊った直後に母親に発見されるように仕組んだのだった。


「何を考えてるんだ、おまえは。そんな真似をして、もしタイムパラドックスが起こっていたら、どうするつもりだったんだ」


 永遠長の眼光が天国を射抜くが、


「何って、だって元々そのためにタイムリープしたんだし」


 天国は悪びれることなく答えた。


「沢渡と刑事はそうだ。だが朝霞の義父を助ける理由など、おまえにはないだろうが」

「人を助けるのに、理由が必要?」

「余計なことを。ああいう手合いは、殺れるときに殺っておくのが鉄則だというのに」

「そんな鉄則ないから。それに、今回のことで流輝君も少しは懲りたんじゃない? 安直に人を殺すと、後々面倒なことになるって」

「…………」

「まあ、今回の場合、朝霞さんに借りを返すために、早急に手を打つ必要があったから、仕方ないと言えば仕方ないんだろうけど。私が戻って来たからには、これから流輝君に人殺しはさせないから、そのつもりでいて」


 天国は、永遠長に人差し指を突きつけた。


「それは俺が決めることだ。言ったはずだ。おまえが俺と行動するのは自由だが、そのことで俺が自分の行動を変えることは絶対にないと」

「私の言ったこと、ちゃんと聞いてた? 流輝君の意志に関係なく、私がさせないって言ったつもりなんだけど」


 不敵に言い返す天国に、


「やってみるがいい。できるものならな」


 永遠長も負けじと言い放つ。


 ともあれ、こうして1度は自然消滅した「ウィズ」は、2年の月日を経て完全復活したのだった。


 

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