第114話
本選初日は混沌のうちに幕を閉じた。
翌日、運営から届いたメールによると、不正が発覚した高崎は失格。
十六夜は、おとがめなしで2回戦進出ということだった。
同時に、この1件はセレブたちへの強烈な警告となり、その効果は規約違反者たちの棄権という形で現れた。もっとも、十六夜たちに関して言えば、優勝するまでに必要な対戦数に変わりはなく、次の試合の勝者と2回戦で当たる予定となっていた。
それだけに、監視役として会場入りした十六夜たちも、緊張の面持ちで2回戦の対戦者たちが現れるのを待っていた。
そして試合開始20分前、先に会場入りしたのは、沙門真理という13歳の少女だった。
プロフィ-ルを見る限り、沙門はとてもここまで勝ち上がれるとは思えない、ごく普通の中学生でしかなかった。しかし本人を見た瞬間、七星の疑問は一気に氷解した。そう、小柄な体をマントで包み、右手にはステッキ、頭にトンガリ帽子を被った沙門の姿は、まさに中二病患者以外の何者でもなかったのだった。
よし、全力でスルーしよう。
それが七星の結論だった。
そして沙門に数分遅れ、対戦者の陽光も会場入りした。
陽は七星たちと同世代の女子高生で、短髪にTシャツ、デニムの半ズボンというボ-イッシュスタイルながら、一応こちらは常識のある一般人のようだった。
ともあれ、どちらも本人のみの入場で、サポートはなし。セットゲームも、両者ともに団体競技は存在せず、陽においてはスポ-ツ競技自体ゼロだった。
そしてセットゲーム確認後、第2試合は予定通りに開始された。
序盤、一早くキングの守りを固めた陽は、小手調べに連珠戦を仕掛けた。
この勝負を沙門も受けて立つことにしたが、すぐには対戦を始めなかった。
「ちょっと待っててほしいのです」
沙門はそう言うと、床に1枚の布を広げた。その布には魔法陣が描かれていて、沙門はその魔法陣の前に立つと両手で印を組んだ。
「オン、アボギャ、ベイロシャナウ、マカボダラマニ」
沙門の呪文は厳かに続いたが、魔女スタイルでのお経は違和感だらけだった。
そこは「エロイムエッサイム」でいーだろ。せっかく持ってきた杖、使わねーのかよ。など、沙門の儀式にはツッコミどころ満載だったが、ここも七星はスルーした。
「我が召喚に応じよ。いでよ、西島晴雄の霊!」
最後に、沙門は勢いよく右手を上げた。
誰だよ!?
七星は思わずツッコミを入れかけたが、寸前で堪えた。
そして呪文の完成とともに、全員の視線が魔法陣に集中した。しかし床の魔法陣に変化はなく、魔法陣の上にそれらしい幽霊が現れることもなかったのだが……。
「よく来てくれたのです、西島さん」
沙門は、まるで誰かが現れたかのように、魔法陣に向かってペコリと頭を下げた。
「なんや、魔法少女かと思たら、イタコやったんか」
幸が正直な感想を口にした。
「よけーなことを言うな」
七星は幸をたしなめたが、すでに手遅れだった。
「失礼なのです! 悪の手先ども! マリーは、れっきとした魔法少女なのです!」
沙門は七星たちにステッキを突きつけた。
「悪? 手先?」
とっさのことに、七星は思わず反応してしまった。
「惚けても無駄なのです。マリーは昨日の試合を見ていたのです。あの、人を人とも思わぬ非道な行ない。あれこそまさに、邪悪な魔女である何よりの証拠なのです!」
沙門は憤然と言い放った。
静火の行為が極悪非道なものであったのは事実なだけに、七星には返す言葉がなかった。
「やはり、マリーの目に狂いはなかったのです。不老不死が優勝賞品だと知ったときから、この大会は怪しいと思っていたのです」
沙門はドヤ顔で胸を張った。
「いや、それは誰でもそーだから」
「そこでマリーは悪の陰謀を打ち砕くため、この大会に参加したのです!」
「わかった、わかった。わかったから、早く試合を再開してくれ」
この本戦では、予選にあったセットゲーム勝負に応じるか否かの段階での時間制限は撤廃されていた。その理由を、てっきり七星は、本戦は予選と違って時間に余裕があるからだとばかり思っていたのだが、どうやら本当の理由は違ったようだった。
あのクソキモオタ、こいつに好き放題やらせたくて、あんなルール変更しやがったんだな。
七星は内心で毒づいた。そして、この七星の推察は正鵠を射ていた。
「わかればいいのです」
沙門は満足すると、対戦席へと引き返した。
「お待たせしたのです」
沙門は陽に頭を下げた。
「気にしなくていいよ」
陽は笑顔で応えた。
「でも面白いね、君。今までの対戦者には、いなかったタイプだよ」
陽の言葉を聞いて、沙門は膨れっ面となった。
「マリーは面白くないのです。魔法少女は見世物ではないのです」
「ごめん、ごめん。そういう意味じゃないんだ」
陽は苦笑した。
「そういう意味でなければ、どういう意味だというのです?」
沙門は不愉快そうに聞き返した。
「興味深いって意味だよ」
「同じことなのです。あなたも他の人たちと同じなのです。マリーのことを嘘つきだと思っているのです」
「思ってないよ。だって、ボクも君と同じだからね」
「あなたにも幽霊が見えるのですか?」
「いや、ボクが見える、というか聞こえるのは聖霊の声だよ」
「せいれい? 精霊というと、あれですか? 炎や風といった、あの精霊ですか?」
「どうだろうね。ボクとしては「父と子と聖霊の御名において」のほうの聖霊だと思ってるんだけど、声が聞こえるだけで姿を見たことはないから、はっきりとは言えないんだよ」
「声だけなのです?」
「そう、声だけ」
陽は屈託なく笑った。その顔にも声にも、嘘をついている気配はなかった。
「でも、ボクには確かに聞こえるんだ。だから、君のこともバカにする気はないんだよ」
「なるほど、よくわかったのです。つまりこの戦いは、魔法少女と聖霊使いの戦いということなのですね。ならば、なおさら負けられないのです」
沙門は鼻息を荒げた。それを言うなら、聖霊使いと死霊使いだろ。
七星はそう思ったが、面倒臭いので黙っていた。
そして、ようやくのことで始まった連珠戦は、沙門が幽霊の力を借りて奮戦するも、聖霊の力には1歩及ばなかった。
「なかなかやるのです。でも、次はこちらのターンなのです」
沙門はお返しとばかりに、ポーンで陽のポーンを奪いにいった。沙門が仕掛けたゲームはハサミ将棋であり、この勝負を陽も受けた。
「ご苦労様でした、西島さん。また、よろしくお願いするのです」
沙門は西島晴雄の霊をあの世に送り還すと、今度は木村努という霊を召喚した。沙門いわく「今度はハサミ将棋に強い幽霊」であるらしかった。
そして沙門にとっては、リベンジマッチとなる2戦目が始まった。
しかし結果は、やはり陽の勝ちだった。
「く、まさか聖霊さんの力が、これほどまでとは」
沙門は顔をしかめた。
「これは、どうやらこちらも本気を出さねばならないようなのです」
沙門は七星を見た。
「上級霊の召喚は、マリーのマテリアルパワーを著しく消耗するので、できれば次の試合までとっておきたかったのですが、こうなっては仕方ないのです」
陽が3戦目の囲碁を仕掛けたところで、沙門はより高位の召喚術を行なった。その儀式は、周囲の目には前回と変わりなかったが、儀式を終えた沙門の口から出たタメ息は今までになく大きなものだった。
「ずいぶんと、お疲れのようだね」
「それだけ凄い召喚なのです」
沙門は額の汗を拭った。
「じゃあ、ここからが本番というわけだね」
「そうやって余裕でいられるのも、今のうちなのです」
沙門は自信満々の顔で対戦席に着いた。そして彼女はその宣言通り、囲碁戦で見事勝利を納めたのだった。
「へえ、凄いね。本当に、今までの霊とは違うんだ」
「だから、そう言ったのです」
沙門は鼻高々で胸を張った。
「ここから一気に挽回するのです」
「できるかな?」
「できるのです。なぜなら、あなたには弱点があるからなのです」
「ボクに弱点?」
「そうなのです。今、武藤さんが教えてくれたのです。一見、同じに見えるマリ-とあなたの力には、実は決定的な違いがあると」
「へえ、なんだい、それは?」
「すぐに見せてあげるのです」
沙門は、次の1手でビリヤード(ナインボール)戦を仕掛け、一同は左隅に用意されたビリヤ-ド台へと移動した。
そして、そこで沙門は例によって召喚の儀式を行なった。
「では、後は任せるのです、今泉さん」
沙門は目を閉じた。そして数秒して再び目を開けると、陽とのビリヤード対決に臨んだ。
対戦形式は5ゲームを先取したプレイヤーの勝利とし、勝負は沙門の先攻で始まった。
「久しぶりだな、この感じ。さて、勘が鈍ってなければいいが」
沙門は今までにない男口調で言うと、最初の1打を行なった。そして、その1打で2番と6番をポケットに沈めると、その後も常に主導権を握り続け、5-1の大差で陽に勝利したのだった。
「久々に楽しかったよ、お嬢ちゃん」
勝負を終えた沙門は、また目を閉じた。そして次に目を開いたときには、元の沙門に戻っていた。
「わかったです? これが、マリーとあなたの決定的な違いなのです!」
沙門は、ビシッ! と陽を指さした。
「あなたは聖霊のアドバイスを受けられるだけですが、マリーは召喚した人たちを憑依させることで、その人の持つ技術も自分のものとできるのです。それがマリーとあなたの、決定的な違いなのです!」
「なるほどね。確かに君の言う通りだ」
陽は苦笑った。
「でも、だからと言って、この勝負が君の勝ちと決まったわけじゃないよ」
「負け惜しみはみっともないのです」
「負け惜しみじゃないさ。今までは、ボクも本気じゃなかったからね」
「本気じゃない?」
「君と同じさ。本気を出すと、消耗が激しくてね」
「……では見せてもらうのです。その本気の力とやらを」
2人は戦いの場を対戦席に戻すと、その後一進一退の攻防を繰り広げた。そして激戦の末、
「チェックメイト」
魔法少女対聖霊使い。その異色対決を制したのは、聖霊使いだった。
「いい勝負だったね」
陽は沙門に微笑みかけた。
「……負けては、意味がないのです」
沙門の目に、悔し涙がにじんだ。
他人がなんと言おうと、自分には霊が見えるのだ。そして魔法少女として悪を退治することは、そんな力を持って生まれてきた自分が、悩んだ末に導き出した答えだった。それなのに……。
「こんなところで負けてしまったマリーは、魔法少女失格なのです」
沙門は、ガックリと膝を折った。
「そんなことはないさ。君は十分がんばったよ。それに、まだあきらめるのは早いんじゃないかな」
「どういう意味なのです? 敗者復活戦でもあるのですか?」
「いやあ、さすがにそこまでの御都合主義はないんじゃないかな」
「じゃあ、なんだというのです? はっきり言うのです。マリーは、はっきりしない人は嫌いなのです」
「手厳しいな」
陽は苦笑した。
「じゃあ、はっきり言うよ。マリー君、君、ボクのサポート役として、一緒に戦わないかい?」
陽の申し出に、沙門は目を瞬かせた。
「……そんなこと、できるのです?」
「できるさ。ルールのどこにも参加選手のサポート役への転身を禁止する項目はないし、ここの運営にも事前に確認をとって、OKをもらってあるからね」
「では、マリーはまだ戦えるのですか?」
沙門の顔に、再び希望の光が差し込んだ。
「そういうことさ」
陽は沙門にウインクした。
「この大会を牛耳る悪の黒幕を倒すために、君の力を貸してくれるかい?」
「もちろんなのです!」
沙門は目を輝かせた。
「ありがとう。そして、これからよろしくね。魔法少女マリー君」
陽は沙門に右手を差し出した。
「こちらこそ、よろしくなのです」
沙門は陽の手を力強く握った。強敵の前に、1度は敗北を喫した魔法少女マリー。しかし彼女は不死鳥のごとく、死地から奇跡の復活を果たしたのだった。
「ついに、このときが来たのです」
沙門の目は正義に燃えていた。
「覚悟しておくのです、この悪党ども!」
沙門はビシッ! と、七星を指さした。
「魔法少女マリーは、決して悪を許さないのです! あなたたちの野望は、この魔法少女マリ-が必ずや阻止してみせるのです!」
沙門はそう言い放つと、マントをひるがえして会場を去っていった。
「それじゃ、ボクもこれで失礼するよ。次の君たちとの試合、ボクも楽しみにしているよ。七星終夜君」
天草は七星にウインクすると、沙門を追って会場を後にしたのだった。
その後ろ姿を見送りながら、七星は確信していた。
あの2人を相手にする次の試合は、間違いなく、今だかつてない、疲れる試合になるであろうことを。
そしてホテルに戻った十六夜チームは、十六夜の部屋で作戦会議を開いていた。
「いやー、おもろい試合やったなあ。魔法少女マリー、最高やで」
幸は脳天気に笑った。
「あの小娘の戯言はともかく、あの2人の腕が上級レベルなのは確かですの。その2人を相手に、どう戦うつもりなんですの?」
龍華にとっても、次の試合は七星の資質を見極める、いい試金石だった。
「そうだな。とりあえず、セットゲームは前回と同じでいくつもりだ。それと……」
七星は十六夜を見た。
「十六夜、おまえ、この大会が終わったら、お嬢様と再戦しろ」
七星の突然の変節に、十六夜は元より、それを望んでいたはずの龍華も戸惑いを隠せなかった。
「いきなり、どうしたんですの? これまで散々邪魔してきたくせに」
「まー、なんつーか、次の試合のための予防措置みたいなもんだ」
「予防措置?」
龍華たちは小首を傾げた。
「どうやら、あの男女は心理戦に持ち込んで、相手を手玉に取るのが得意みたいだからな。で、その手口で今のところ1番つけ込まれる可能性が高いのは、十六夜とのリベンジマッチを望んでるお嬢様なんだよ」
七星は龍華を指さした。
「自分のチームに入れば、十六夜さんは嫌でも君と再戦せざるを得なくなる。そー言われて勧誘されたら、お嬢様の心も揺れるだろ? 元々、十六夜のサポート役を引き受けたのも、十六夜と再戦するためなんだからな」
「…………」
「だから、その手を使わせないために先手を打っておくんだよ。この大会が終われば十六夜と再戦できるとなれば、お嬢様に応じる理由はなくなるからな」
「おお、七星君お得意の予知能力やな」
「こんなもん、予知でもなんでもねー。ただの状況判断だ」
「いやー、それでも十分凄いし。さすが、うちが伴侶に見込んだ男や。惚れ直したわ」
そう言ってから、幸は小首を傾げた。
「でも、そんなんありなん? 戦う相手のメンバー引き抜いて、弱体化させるような真似」
「別にルール違反じゃねーし。サポート役の登録システムがあるわけじゃなし、基本誰がどのチームに入って試合しよーが自由だからな。要するに、すべては思いつきだけでこんな大会開きやがった、あのキモオタ親父が悪いってことだ」
七星は改めて十六夜を見た。
「つーわけで十六夜、お嬢様と今ここで約束しろ。おまえのことだから、いつかはお嬢様と対戦してやるつもりでいたんだろーし、遅いか早いかの違いだけだろ。この先一生一緒にいるわけでもなし、ここまで協力してもらった借りを返すと思えば抵抗もね-だろ」
「……うん、そうだね」
十六夜は龍華と向き合った。
「龍華さん、わたし、この大会が終わったら、あなたともう1度チェスで勝負します」
「……確かにお聞きしましたの」
龍華は神妙な面持ちでうなずいた。
「もっとも、そんな約束などなくとも、このわたくしが裏切りなどという醜い真似、するわけありませんの」
龍華は七星を横目に、フンと鼻を鳴らした。
「あと、可能性があるとしたら幸だが」
「うち? うちなら大丈夫や。裏切る理由なんて、なんにもないし」
「1億やるって言われてもか?」
「いち」
幸は絶句した。
「今、思いっきり考えたろ」
「な、何言うてんねん。そんなわけないやろ。うちはダーリン一筋なんや。金になんて目はくらまんで」
「まーいーけど。ああ、それと次の試合だけどな。もしかしたら、あいつら2人じゃなく、もっと大人数でくるかもしれねーけど、あわてねーよーにな」
「え? そうなん?」
幸は素直に驚き、龍華はうさん臭そうに眉をひそめた。
「また、それもお得意の予知ですの?」
「これも状況からの判断だよ。対戦相手の魔法少女モドキですら、手駒として取り込もうとしたあの男女が、人数無制限の大会に他の手駒を連れて来てね-とは思えねーってことだ」
「けど、さっきの試合では1人やったやん。他に仲間がおるんやったら、なんで一緒に来えへんかったん?」
「そりゃ、人数ウジャウジャ連れてきたら、魔法少女モドキを警戒させるからだろ。自分は1人なのに大人数連れて来たら、あのモドキのことだから、それだけで男女を悪と認定しただろーからな。あの男女もその危険がわかってたから、あえて1人で相手したんだろ。で、そのうえで自分も聖霊使いだとか適当なことぬかして、モドキに親近感を持たせたうえで、自分の手駒になるように話を持っていったと。要するに、最初から最後まで、あの魔法少女モドキは、男女の掌の上で転がされてたってわけだ」
「それって、さすがに考え過ぎなんちゃう?」
「かもな。だが用心するに越したことはねー。もっとも、用心したところで何が変わるわけでもねーんだが、おまえらが次の試合も向こーが少人数だと思い込んでると、変に浮き足立つ可能性があるんで、言っといたほーがいーと思っただけだ」
七星は、そこで一息ついた。
「本当なら、今の話は寝返りを含めて黙っておいて、十六夜を鍛えるのに利用したかったんだがな。今回は下手に動揺させたら、マジで負けかねねーから仕方ねー」
七星の言葉は善意から出たものだったが、回りの反応は冷ややかだった。
「……七星君、前から思とったんやけど」
幸は七星に白眼を向けた。
「なんだよ?」
「七星君、メイド長のこと散々ドS言うてるけど、ホンマのとこ、七星君のほうがよっぽどドSなんちゃうか?」
「は? オレのどこがドSだってんだ? いいか、オレは十六夜のことを考えて、あえて心を鬼にしているのであって、決して十六夜が嫌がる顔や苦しむ姿を見て、悦に浸ってるわけじゃねーんだよ」
「なんか、メイド長も同じようなこと言うとった気がするけど」
「だから一緒にするなっての」
七星は立ち上がった。
「とにかく、作戦会議はこれで終了だ。後は、いつも通り試合までレベルアップに励むしかねー。相手の思惑がどうであれ、勝つためには実力であいつらを上回るしかねーんだからな」
七星はそう言うと、足早に部屋から出ていった。
「逃げよった」
「逃げましたの」
「…………」
三者三様、思うところはそれぞれだったが、負けられないという思いは全員同じだった。
そして2日のインターバルを挟んだ後、十六夜チームは準決勝進出をかけて陽チームと相対することとなったのだった。




