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第3戦 石垣島旅行


 翌朝朝ご飯を食べている時、いきなり雨が降ってきた。


 昨日の朝の天気予報では曇りだったが、今見ると雨に予報が変わっていた。

 止みそうにない雨とすっかり元気がない妹……。


「帰ろうか?」


「……うん」

 

 俺達は残念ながら、悪天候で無理にどこかへ行くよりも帰った方が良いと判断し、そのまま帰宅する事にした。


 車の中では終始無言の妹……、俺が何を言っても生返事しかしない。

 一体俺は何をしたんだ? 確か酔っ払って……妹に抱きついた……ま、まさか……。


 そのままベットに? いや、そんなわけない……酔って出来るわけない。


 でも、キスくらいしちゃったかも……。


 ああああ、日頃から酒なんて飲んで無いから酔ったらどうなるかもわからない……。

 いや、でも……。

 静まり返る車の中……走行音と雨粒がガラスに当たる音だけが響く。


「あ、あの……俺……さ、ひょっとして……負けた?」



「……え?」

 恐る恐る妹に勝ち負けを聞いてみる。

 そう、怖くて直接は……聞けないけど……勝ち負けの確認ならって、もし負けだと言われたら、それはそれで厳しいんだけど……。


「…………」

 黙り込む妹……うーーわ、マジか、マジなのか? 俺……やっちゃったのか?


「別に……覚えてないってのが悔しいだけ……別に変な事はしてない……よ、少ししか」

 少しってなんだああ、少ししてるんかい俺?!


「いや、なんかしたなら……謝る、ごめん」

 ハンドルを持ったまま、前を見ながら頭を下げる。


「……違うよ……お兄ちゃんの……バカ」


「え?」

 雨音がうるさくて小さな声だと聞こえづらい。


「──何でもない……あーーあ、海入りたかったなあ……」

 助手席から外を眺めながら妹がポツリとそう呟く。

 ワイパーが忙しくフロントガラスの雨粒をかき分ける。

 昨日通った道は波と通行止めが怖いので、今日は東名高速経由で帰る事にした。


「……家族旅行、行けば良かったのに」

 毎年恒例お盆の家族旅行、去年は北海道で、今年は確か沖縄?

 ただ俺は今年二十歳なったのを機会に、初めて行かないと両親に伝えた。

 いや、ひょっとしてさあ、誰かと行く可能性も0じゃないかもと……。


「お兄ちゃんだって行かないじゃない」


「ああ、まあ、そろそろ家族旅って年でもないし……ね」


「……私も今年はいいやっ言っちゃった、お父さんとお母さん二人で水入らず、イチャイチャしてきなって……」


「そか……まあ、たまにはいいかもしれないな」

 いつまでも恋人の様に仲の良い両親、俺たちがいると色々と……って何を考えてるんだ俺は……。


「石垣かあ、せっかく買ったのに……水着勿体ないなあ、行けば良かったなあ~~」

 妹の水着姿……ちょっと興味が……って、夕べは裸を見ておいてって見てないから、結局見れて無いから。


「え 石垣なの? 沖縄って言ってなかった?」


「沖縄は何度か行ってるから今年は石垣だって」


「……マジか」

 石垣は行った事ないから、行きたかった……かも……。

 沖縄よりも断然に海が綺麗とか……。


「あーーお兄ちゃん行きたかったって顔してる!」


「そんな事……少しは


「あーーあ」


「……今度……プールでも行こうか?」


「プールねえ……」


「嫌ならいいよ」


「嫌なんて言って無いでしょ? ああ、もそんな言い方して……昨日のお兄ちゃんの言葉録音しておけば良かった!」


 妹はそういうと俺の腕をツネった。


「いてええ、いてててて、あ、危ない! 危ないってば!」

  言葉? 言葉ってなんだ? 俺は何を言ったんだ?

 結局妹は俺が何をしたのか? 何を言ったのか? 最後まで教えてくれなかった……。

 こうして俺達の初めての旅行は呆気なく幕を閉じた……かと思っていたら……。


◈◈◈


「うはあああ、飛行機飛行機!」


「ええ? 自動預け機? ここに入れれば良いの? えっと手荷物って何個まで?」


「うわああおっきい! 飛行機飛行機~~」


「あれ? チケットってどうやって画面に出すんだ? あれ? あれ?」


「うははは、スッチーだよ、お兄ちゃん美人のスッチーが一杯」


「座席はどこだ? 手荷物ってここにいれるの?」


 数日後、俺達は羽田空港に来ていた。

 今回両親が急遽行けなくなったとの事で、俺達が代わりに行く事になってしまった。

 いつもは両親に連れられてボケーっとしてでも現地に着くのだが、今回能天気な妹を連れて俺が引率する事に……。

 二人きりで石垣旅行……今度は酒には気を付けよう……えっと……オリオ●ビールが旨いんだっけ?


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