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石垣島旅行その3


「きゃああああああああ、凄い凄いいいいいいいい」


「おお、すげえ……」

 ホテルに到着するとチェックインを済ませ部屋に入った。

 部屋に入ると窓の外にはホテルの真っ青なプール、そしてその先には、見たことない程に真っ青な海が見えた。


 石垣島トップクラスのホテルから見る景色に俺達は感動してしまう。


「ずるいよねえ、いつもならもっと安いホテルにしてんのに」


「まあ、4人分と思えばって事なんじゃ?」

 広々とした部屋に大きなベットが2つ、今回は勿論ツインルームだ。


「お兄ちゃんベットなんて見つめて……ダブルじゃなくて残念? なんなら一緒に寝る?」


「ば!」


「あははは、さあ、海に行こう!」


「今から泳ぐの?」

 午後の飛行機、沖縄経由で到着したのは夕方前。


「ううん、もう夕方だし、泳ぐのは明日にするよ、とりあえず夕御飯まで散歩しよ」


「……あ、うん」

 そう言われ……俺はなんだか本当に恋人と旅に来ている気分になってしまう。 一応今の関係はまだ仮想恋人なんだけど……でも……。


 あいつと、はじめて付き合った時こんな思いにはならなかった。

 あいつと何度か出掛けたりもした。

 日帰りだったけど、遠出もした。


 でも……全然楽しめなかった……。

 あの時は、終始無言が続いた、話をしても盛り上がらない……でも……俺なりに一生懸命努力したつもりだった。


 妹とも、別に会話をずっと続けているわけじゃない、黙っている時間だってある。

 でも、妹となら……そんな時間も楽しいって思えてしまう。


 ヤバい……この状況はヤバい、ヤバすぎる……。


 妹は俺の手を握ると、俺をグイっと引っ張り部屋から出る。


「何ボーッとしてるの? 暗くなっちゃうよ、お兄ちゃん!」


 黒髪をたなびかせ、スカート翻し妹が俺の手を引く。

 柔らかい妹の手の感触が、少し汗ばんだ手の感触が俺をドキドキさせる。


 ヤバい……俺……今……本気で……妹の事を……。



 海岸に出ると、夕日が見えた。

 青い海、赤い夕日、緑の木々、何色もの色が光が重なって見える。


「──綺麗だねえ……」

 砂浜に立ち二人で夕日を眺めている。

 キラキラと光る海……俺は海から妹に視線を移す……。


 妹の顔が夕日で赤く染まっている。

 そして、海と同様に、いや、それ以上にキラキラと輝いて見えた。


「ああ、凄く……綺麗だよ」

 俺は妹を見ながらそう言った。

 綺麗だ……俺の妹がこんなに綺麗だったなんて……。


「──座ろっかお兄ちゃん」


「あ、ああ」

 手を繋いだまま二人並んで砂浜に腰を降ろし海を眺める。

 少しずつ沈む夕日をじっと見つめている。

 何も喋らずに、何も語らずに……ただただ夕日を見つめているだけ。

 手を繋いだまま、じっと……。


 繋いでいる妹の手から、楽しさが伝わってくる。

 何も言わなくても、妹の思いが、感情が伝わってくる。

 その感情に安心し、そして俺も一緒に楽しむ。

 楽しいと妹に伝える様に手を握る。

 妹も私も楽しいよ……と言っている様に手を握り返して来る。


 日が沈んで行く、水平線の向こうに、赤い光を放ちながら、青い海に沈んで行く。

 俺達はそれを黙って見ていた。

 日が沈み暗くなるまで、じっと見つめていた。



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